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最後の想い -1-



 Ⅰ



「お風呂、入る?」


「入ろうかな」


 王城から宿に戻るとユザミが出迎えてくれた。背中の服の中に隠している書類は隙を見てバッグの中にしまい、風呂に入るかどうかを問う質問に頷く。


「ユザミはもう入った?」


 二十一時にアシュテルゼン王に面会して、宿に帰ってくるまで大体二十五分。時刻は二十一時半ほどで、ユザミはこの時間には風呂を済ませているはず。


 が、ユザミの服装は僕が用事があるからと言って王城に向かう前と変わらない。入っていないと思うけど、念のために聞く。


「リトの後に入ろうかと思って」


「わざわざ待ってなくても良かったのに」


 ユザミと一緒に過ごしていて思ったのは、僕を優先的に考えてくれていること。


 外食でユザミが頼んだ料理が先に届いた時、僕の料理が届くまで口を付けなかった。部屋の扉を開けて一歩引き、僕を先に部屋に入るよう促してくれる。風呂も先に入ったことはない。


「いいから! 先に入って!」


「わっ、わかったよ」


 背中を押されてバッグの前。ユザミが離れていくのを確認して、僕は書類が見えないように着替えを取り出す。


 ユザミはベッドで寝転がっている。それを尻目に、僕は脱衣所に向かった。


「……いつ言おうかな」


 着替えを棚の上に置き、浴室に入ってシャワーを出して、脱衣所で服を脱ぐ。


 遺族方の住所を手にするまではユザミと交流を深め、手にしたらすぐに動こうと考えていた。


 十四人の遺族から赦しを得るのに一週間という期間は短すぎる。一日でも無駄にできないし、明日から動くべきだ。


 となると、ユザミに内容は伝えず、明日から何日も部屋を空けることを伝えなければならない。


「いつ、より……なんて言うかの方が問題だ」


 ユザミは鈍感ではない。寧ろ察しが良い方だし、何日も部屋を空けることがあれば何かする為に動いている、と考えるだろう。


 その何かが自身のことかどうかなんて、分からないはずがない。何日も部屋を空けるような、それっぽい理由も思い浮かぶはずがない。


 僕は溜息を吐いて浴室に入る。


「どうするか決めないと」


 大きい風呂椅子に座ってシャワーを浴びながら考える。


 何日も部屋を空けなければならないのにも理由がある。


 遺族方に赦しを乞うのに無傷でいられる保証はない。殴られてもおかしくないし、最悪——。


 それはいい。問題なのは怪我を負った場合、ユザミや他の皆に見られることだ。


「絶対に止められる。新しい宿を確保しないといけないし、お金は……ミーシャに借りるしかない、か」


 部屋を一週間ほど空けることになれば、ユザミは心配すると思う。もしかしたら尾行されるかもしれないけど、それはミーシャの精霊にでも頼めばいい。


 ミーシャ頼りだけど……今回ばかりは仕方ない。僕一人の力じゃどうしようもない。


 後は、ただ遺族方から赦しを得るだけ。



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