行動の裏
Ⅲ
バタン、と扉の閉まる音。
人智帝国ブリテン王城の客室に残されたアシュテルゼンは小さく溜息を吐き、天井を仰いだ。
息を吐いたのは他でもない、さっきまで部屋にいたリト・アーネルに対して。それは落胆や軽蔑の溜息ではなく、彼の身を案じてのものだった。
アシュテルゼンは大量猟奇殺人犯であるユザミの処刑を望んでいる。しかし、それは自身の願いではなく民を思ってのこと。
彼は大量猟奇殺人を起こしたユザミやそれを救おうとしているリトに怒りを抱いていなかった。
「スキル、か」
思いを馳せる。それは遠い過去の話。それは彼が国王になるために生きることを決定付ける出来事だ。
ある日、ある時、ある女性に恋をした。彼女は世界中から忌み嫌われていたのに、命を救ってもらったことがあった。
忌み嫌われていた理由はスキルの内容だった。近くにいると害を及ぼしてしまう能力で、どうしてもそれを抑えることができなかった。
戦争の災禍に巻き込まれ、命を落としかけた時、彼女に助けられ——共に生きることを誓った。しかし戦争の災禍から逃れることはできず、彼女だけが命を落とした。
「……状況は違えど、昔の私を重ねてしまったな」
懐かしい記憶を思い出しながら、アシュテルゼンは小さく微笑んだ。
ふとノックの音が鳴り響き、アシュテルゼンは姿勢を正し、立ち上がる。
アシュテルゼンは部屋をノックした人物を知っている。それは連絡があったからであり、アシュテルゼンが立ち上がって迎えるほどの人物。
「どうぞ」
アシュテルゼンの丁寧な迎える言葉の後、部屋の扉が開かれる。
真っ先に見えたのは赤色の髪の人物。彼女が部屋に入ると、後を追うように三人が足を踏み入れる。
「失礼するわ」
堂々と部屋に足を踏み入れたのは——世界最強と名高い、生命国宝の四人だった。




