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就寝 -2-


「一緒のベッドって意味で言ったんだよ」


「………………え?」


「明かり、消すね」


 パチッという音の後に明かりが消える。目が暗闇に慣れておらず、見えていなくても足音で近づいてきているのが分かる。


「ゆ、ユザミ? どうして急に?」


「一緒に寝たい気分だから」


 ユザミが隣に腰を下ろした途端、心臓が跳ね上がる。


 一緒に寝たい気分って……いや、考えすぎだ。一線を超えないで、とミーシャに言われたならそれを破ることはしないと思う。


 なら単純に一緒のベッドで寝るということのはず。でもさっきは恥ずかしいからと言っていたのに。


「詰めて」


「あ、ま、まっ」


 体を押されるがままベッドの端に詰めると、ユザミはすぐに寝転がって布団を被る。


「……」


 恥ずかしい気持ちはきっとあるはずだ。それは口にしていたし、平気になるまで二日くらいかかると本人が言っていた。


 今、ユザミが羞恥心を抱いているとは思えない。積極的な性格をしているわけでもないし、ミーシャに会ってから考えが変わったのではないかと思ってしまう。


 きっとミーシャは何も言わない。でもミーシャの部屋にいるだろうイルフだったら、何か言っている可能性がある。


「……何か言われた?」


 そう聞くとユザミは閉じていた目を開けて小さく微笑んだ。


「何も言われてないよ。これは本当。ただ一緒に寝たいなって思ったの」


「……そっか」


 何も言われてないことを強調する後付け。何か言われた訳ではないことは分かったけど、一緒に寝たいと思わせる何かがあったのは確かだろう。


 一度聞いて、それを伝えてもらえないなら聞くべきではないか。


「……」


 深読みをしたせいで一緒に寝ることにどうこう言うタイミングを見失い、思わず黙ってしまう。


 一線を超えないで、とミーシャに言われたならそのつもりはないだろうし、もちろん僕にもない。それなら一緒に寝るだけだから……いい、のか?


「……おやすみなさい」


 そう呟いた後、なるべく距離を取るために壁に寄り、布団を被る。


「遠いね」


「っ!?」


 ふにっ、という柔らかい感触が背中に触れると共に、腰に手を回され、股の間に足を入れられる。


 首元にユザミの顔がある。鼻が首にあたっていて吐息がくすぐったい。距離に文句を言う声が妙に甘く感じた。


「ゆ、ユザミ……?」


 かなり壁に寄っていたせいで挟まれる形になり、身動きが取れない。逃げ場がないと脳が理解し、声をかけても反応はなかった。


「あ、あの」

「こっち向いて寝てくれるなら離れるよ」


「わ、分かった! 分かった、から」


 情欲を刺激する甘い声と触れる頬の肌触りに耐え切れず、了承を返すとユザミは離れた。


 僕はゆっくり振り返る。


「——っ」


 暗闇に目が慣れて、視界に映るユザミの姿。


 目を細めて僕を見据え、小さく微笑んでいる。シャツの首元がよれているのと腕が下にあることで胸が変形し、膨らみが手に取るように伝わってきて、甘い声と肌触りがなくとも変な気分にさせられる。


「おいで」


 甘いというより、エロい声。言い方もどことなく卑猥ひわいで、僕は顔を逸らした。


「……からかってる?」


「あ、バレた」


 やっぱり。普段のユザミの声ではないし、言い方も誘っている感じがしてもしかしたらと思ったけど、合っていたみたいだ。


 皆と一緒にいても思うけど、こういうからかい方はよくない。こっちは本当に緊張しているんだから。


「……おやすみ」


「拗ねないでよ、ごめんね。おやすみ、リト」


 小さく笑って言った後、目を瞑るユザミ。


 今、彼女はとても幸せそうに見える。初めて部屋を訪れた時やスキルについて知り、怯えていた時はこんな表情をするなんて想像がつかなかった。


 今まで酷い環境で暮らしていて、殺人衝動に怯えながら生きていた。そんな彼女がこうやって笑い、過ごしている。


 それだけで僕はこうして良かったと思える。後は、これからもこうしていけるように頑張るだけだ。

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