就寝 -1-
Ⅰ
フェンデルさんとの話は数分で済んだ。アシュテルゼン王に手紙を出して日程を決めることになるけど、僕からの連絡は早急に伝えるよう言われているらしく、明日か明後日にでも面会の時間が設けられるはずとのこと。
返事が来たら僕に伝える、と話は終わった。つまり返事が来るまではユザミを知る時間だ。
僕は三〇一号室の前に戻ってきて、扉がドアストッパーで止められていることに気づく。
「ただいま」
僕は扉を開けて玄関に足を踏み入れる。中から返事はなかった。
「……ユザミ?」
反応がないことに違和感を覚えつつも、靴を脱いで廊下を抜け、部屋に入る。
ユザミの姿は無い。お手洗いか、と思って廊下へ戻って見てみると、お手洗いや脱衣所の明かりは点いていない。
そこで気づく。玄関にユザミの靴が無い。
「……どこに行ったんだろう」
部屋を出る話は聞いていないし、ユザミ一人で部屋を出るとセシア達とトラブルになる可能性がある。
そう思った僕は靴を履き、扉を開けた先。
「わっ、びっくりした」
タイミングよく戻ってきたのか、ユザミが立っていた。
「ミニゴーレムちゃんに手招きされたので、ミーシャさんの所に行ってました」
僕が用事を済ませる為に部屋を出たのを見計らっての行動。ミーシャはユザミを嫌悪している訳じゃなさそうだから酷いことは言わなさそうだけど、何を言ったのか気になる。
「一線は超えないで、と言われちゃった」
「……あはは」
なるほど。僕が手を出すことはしないと分かっているだろうけど念には念を入れて伝えたっていう感じかな。
この話を続けると気まずくなりそうだから話を変えよう。
「ユザミはもう寝る?」
玄関で靴を脱いで廊下を歩きながら話す。
「……リトは眠い?」
「うーん……寝てもいい時間だなとは思う」
「じゃあ一緒に寝よっか」
一緒、という単語があるだけで同じベッドで寝るという意味に聞こえてしまう。そんな考えを置いて、僕は頷いて返した。
「いつも寝てるのはそっちのベッド?」
「うん、こっち」
「じゃあ僕は右のベッドで寝るね」
ユザミが髪を手入れする小道具を広げていたのは左のベッドだからそうかなと思ったけど合っていた。
僕は右のベッドに腰を下ろすと、ユザミは小さく笑って僕を見ていた。
「な、なんで笑ってるの?」
笑う、というよりは微笑むという感じで、完全に僕の方を見て微笑んでいる。何もおかしいことはしてない……と思う。




