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次章予告 「霊喰いの魔剣」

 ―――Bランクダンジョン「愚者の霊園」。


 未だに未踏だったこのダンジョンをこの日、踏破した者が現れた。

 Sランクパーティー「黒竜の吐息」。

 彼らの活躍により攻略の為されたこのダンジョンから帰還したのは―――「黒竜の吐息」のリーダーである男一人だけだった。

 仲間たちの亡骸を抱える彼がそのダンジョンから持ち帰ったのは、ボロボロの布に包まれた一本の剣だけであったが、男は顔を青くしながら叫んだ。



「―――みんなこの剣に喰われちまったッ!!!」



 精神的に病んでしまい、おかしな妄執に囚われているのでは?と疑ったギルドだったが、彼の言ったことは事実だった。

 調査のためにその剣に触れた一人の職員が、突然意識を失い、そのまま霊を抜き取られたかのように動かなくなり・・・やがて死亡が確認された。


 その死因は・・・衰弱死。


 その職員は持病も何も持っていないような健康体だったのにも関わらず、いきなりその様なありえない死に方をしたとなると、ギルドもようやく事態を重く捉え、その剣の鑑定を聖王国が抱える聖霊鍛冶と、司教へ依頼したが、返ってきた返答は―――



「この様な悍ましい剣、どこで拾ってきた!?」



 聖霊鍛冶の見立てによると、この剣にはとてつもなく邪悪な「ナニか」が封印されている魔剣であり、この剣に触れたものは剣の魔力にやられ、生きながらに霊を喰われてしまう、とのことだった。

 その魔剣はそのまま、司教へと渡され教会で解呪と封印を行い、厳重に保管することとなり、この件はこのまま幕を下ろすこととなった・・・筈だった。



 ・・・



 未だ破壊音が鳴り止まない聖都の地下奥深く。


 教会の地下に人工的に作られた「聖域」の中央で、息を切らし、震える手で眼前に存在する真っ黒な刀身をしたその禍々しい剣―――ギルドによって「霊喰いの魔剣」と名付けられたその剣に手を伸ばそうとしたが、その手は一向に剣へ伸ばされること無く、やがて男は伸ばしたその手で宙を掴んで、固めた拳で自身の膝を殴りつけた。



「・・・くそっ!」



 そうしている間にも、地上での戦いの余波でこの地下も崩れ始めており、彼に残された時間は少なかった。

 そんな状況にますます焦りを募らせる男は仕方なく、予め用意していた豪華な装飾の施された純白の布を取り出して、その布を目の前の剣へと被せた。

 純白の布に覆われたその剣を、男は一瞬躊躇しながらも引き抜いた。



「・・・大丈夫、か」



 これで上手くいくかどうかは未知数だったが、どうやら見込み通り成功したらしい。

 内心では冷や汗をかいていた男だったが、予想以上に上手く行ったことにほくそ笑みながら、静かにそして素早く聖域から脱出したのだった。



 ・・・



「―――っ!」



 世界の全てに色が無く、気分次第で幾重にも姿を変えるこの世界で、彼女は今日もその艶やかな黒髪を靡かせて、たった一人孤独に戦っていた。

 永い間この世界で戦い続けた彼女にとって、孤独とは恐れるものではなく唯一自分と共にあったモノだった。


 だが・・・ごく偶に思うのだ。


 自分の存在価値とは何なのか、と。

 そんな自問自答に対して答えが出せないのも、帰ってこないのは知っている。

 それでもそうせざるを得ないのは、心が孤独に押し殺されそうになるからだ。



 ―――寂しい。悲しい。どうして私は一人なんだ?



 どんどんと肥大化していく黒い感情は、少しずつ彼女を蝕んで確実に、そして着実に彼女を壊して行っていていた・・・そんな時だ。



「―――誰か助けてくださぁあああぁい!!!?」



 情けない叫び声を上げながら、彼は颯爽と・・・颯爽と?現れたのだった。



 ・・・



 全てを失った男と、孤独と戦う少女。


 二人の想いを胸に、レイはまた戦いの渦と飲み込まれていく。

 そして、やはりと言うべきなのか、彼はまた、世界を救うことになる。



 ―――ただし、それを担うのは焔を纏う深紅の騎士ではなく。



「―――前だって、どうにかなったんだ。今回だって、上手く行く。だろ?」


『・・・そう、だな。貴方と一緒なら、私はどこにだって行けると信じている。なら、私はその信頼に答えるだけだ』



 身を包んだ二刀を携える、闇に溶け込むような漆黒の重装甲を纏う機兵(ロボット)だった。


※ 予告ですので、非常に短いのはお許しください。

  そして、次回から第二章「(たましい)喰いの魔剣」編が始まります。

  できれば今日中に第二章の一話目を投稿したいと思っていますが、未定です。

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