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朝と夜と  作者: 絵の具箱
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2. 梅干し(1)

天気予報では、今日は朝から雨だったはずなのにカーテンを開けてみると、嘘みたいに晴天だった。

青空、雲ひとつない空。


起きて早々、レオに餌をねだられる。レオは体が大きいから、私はぐいぐい押されてうまく立っていられない。


「わかったから。はい、ハウス。」


レオは賢いほうではないけど、聞きわけはいいと思う。とりわけ、餌があると絶対的に服従の姿勢になる。

それに今のところ、散歩は困らない程度に歩けるし、オスワリもフセもマテもできる。

レオとはレオが2か月の時から一緒で(知人が子犬が生まれたのはいいものの全部の面倒をみきれないと言っているところを、私が引き取った)

今は5歳なので、だいぶ長い間一緒に過ごしている相棒でもある。


しっぽをぶんぶん振ったまま、よだれをたらす相棒に餌をあげた後、今度は自分の朝食と昼の弁当を作る。

というのも、今日の隆司とのデートは大きくて広い公園でまったりしようというのがコンセプトであり、


「お弁当はよろしく。おにぎりはいつもの具でねー。」


ときっぱり、言われてしまったから、必然的に作らなくてはいけないのだ。



隆司の好きな具は梅干しであり、私たちにとって梅干しは恋のキューピットである。


隆司と初めて会ったのは、ピンチヒッターで呼ばれた合コンである。私は大きな失恋をした後だったし、恋なんてする余裕もなく、隆司のこともそこにいた他の男にも興味なんかまったくなかった。ただ、お酒が飲めればよかった。周りから見たら、痛々しい女だっただろう。楽しそうに話も出来ない飲んでばっかりの女。

各々、気が合った同士で連絡先を交換していたが、私はお金を払ってそそくさとタクシーを呼んで帰った。


次の日、さほど話したことがない友人(顔さえもろくに思い出せない)から電話があった。


「昨日はありがとねー。本当に助かった!美優ってあんまり合コンとか来ないじゃん?なんか無理やりだったかなぁとか思ってさ。」


「大丈夫。むしろ、飲んでばっかりいてごめんねー。」

髪をもてあそびながら適当に答える。そろそろ美容院にでも行こうか。


「それでね、昨日の合コンにきてた男の一人が、美優と会いたいんだって。ほら、昨日美優すぐに帰っちゃったでしょ?だから、連絡もできないって私に頼んできて。どうかな?」

どうかな?も何も、昨日どんな人がいたかさえあまり覚えていないいていうのに、そんな面倒なことはない。


「うーん。やめとく。あんまりタイプな人いなかったし。」


「えー。そんなこと言わないでー。一回くらい会ってあげてくれない?」

そんなことを言うならなんでどうかな?などと聞いたのだろうと美優はうんざりした。これだから・・・と思う。


「どうしても?」


「できれば、お願い。その男しつこくて私困ってるの。」

困ってるのは私のほうだと言ってやりたい。


「・・・わかった。で、誰?」


「んと、隆司君!あの背が高くてさー、わりとさわやかな感じの。」


すぐに頭に浮かばなかった。20秒くらい考えてから、やっとおぼろげな記憶がでてきてくれた。

愛想がよくて、飲んでばっかりの私とは大違いだと思ったような気がする。


「あぁ。彼ね。」


「じゃ、決まり。隆司君には私から美優の連絡先教えとくから、あとはよろしくね。」



電話を切ってから、女友達の身勝手さにいらいらした。

しかし、承諾してしまったのも自分自身であり、いらいらしてもしょうがないのでレオをなでながら、気を落ち着かせた。


「本当に困るよねー。」


顔をあげたレオはご飯なの?という目をしていた。


「ごめん、ご飯じゃないよ。」

笑いながら、頭にキスをする。犬くさいレオのにおいは好きだが、自分の美容室の前にレオを洗ってあげようと思った。



立ち上がった瞬間、携帯の着信音が鳴った。

溜息をつきながら、携帯を取りに行く。


画面をみて美優はつぶやいた。


「せっかちな男って大嫌い。」








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