クランに入りました。
「まどか、ゲームしながら食事をするなんて。そんなにお母さんの作ったご飯が嫌いなの。お母さんの話聞いてるの。」
母が悲しそうな顔をする。
現実に戻されたというか、われながらはまり過ぎてしまっている。
申し訳ない。
「えっと、お話は何だっけ。中学校の頃のクラスにいた、三枝しのさんが、なんかすごい高校に行ってるとかだっけ。」
なんとなく上の空で聞いた話を返しておく。
三枝しのは、思い込みが激しく気の強い、私が苦手とするタイプの女の子だった。
一時期、三枝しのと私とあと一人の三人で、仲良しグループを作っていた時に、私はハブられ哀しい思いをしたことがある。あれ以来、三人で遊ぶという事に忌避感を抱くようになった。三人はヨクナイ。二人か四人じゃないと。
思考の罠にはまっていると、母にまた怒られた。
「斜め向かいのさなちゃんと同じところの高校よ。大学までエスカレーター式で、入学するのは難しいけれど入ってしまえば進学は楽なんですって。」
斜め向かいの家の長女さなお姉ちゃんは、去年大学を卒業して、大手のメーカーに就職した、高学歴のキャリアウーマン。もちろん美人。幼いころからとっても仲良くしてくれていて、あこがれています。さなお姉ちゃんのような人と結婚したい。私が男だったらね。
三枝しのは、そのさなおねえちゃんが通っていた高校に通っているというが、心の底から興味がない。彼女に関しては。いやな記憶しかない。
母の話は、三枝しのが歩きスマホをしていて、走っている自転車にぶつかりそうになったところを見たから、ながらスマホは非常に危険。まどかは絶対にしないように。もっとも三枝さんはあなたと違ってお勉強のアプリでしょうけれどね。
という、いつものお説教であった。
急いで夕食をとり終えたのち、自分の部屋のベッドの上でジーンとロクサーヌの翼オンラインをつける。
母に見つかったら、「またゲームなの!」と怒られそうだが、いまは20時からの時限イベントの最中とあってはつけざるを得ない。
病気だなとも思う。
始めたばかりのダンデライオンでも、そこそこイベントが回れるのはコラボ武器「アルテの翼」があるからだ。
それなりのダメージをあげているので、あからさまな寄生プレイとはみなされないだろうという邪な心が働いている。
私は目立たないように、イベントの野良パーティの中にそっと紛れ込む。
ごめんなさい、見逃してください。
いつか強くなったら、恩返ししますので。
ダンデライオンは基本野良でのスタンス。野良というのは、クランメンバーやフレンドといった知り合いとパーティを組んでゲームを攻略するのではなく、知らない人同士でパーティを組んだり、無所属で遊ぶゲーム用語。
ゲームの中でさえ自分から話しかけられない私は開き直って、「野良一筋」という一人クランを作ってボッチプレイに励んでいた。最近はチャット欄もずっと閉じっぱなしにしている。
DMの欄がちかちかと光って着信を告げている。
「今俺らバスタード、スペルキャスター、ローグ、ダークプリーストの4人パテなんだけどさ、君ナイト職でしょ、一緒にやんない。」
「楯職いれば、対アルテマの世界上級に行けると思うんだよね。」
「アルテの翼持ちとか裏山。」
見たところ男アバターが3人に女アバターが1人だ。
頭の悪い誘われ方だったけれど、
「我と組みたいというのか、ふっ、すいません大丈夫です。」
と、いまだ慣れない統一感のない我しゃべりで断る。
不格好な言葉にてっきり笑われるかと思ったが
「からの〰」
とノリよく繋げてきたので、パーティ申請を受諾してしまった。
ジーンとロクサーヌの翼オンラインを始めて1週間初めてパーティに入ってしまった。
全員今どきパリピのノリだったけれど、気持ちよくプレイできた。
28歳サラリーマン(という設定)であることを告げると少し丁寧な口調で接してくれるようになった。
おそらく年下なのだろう。
「お兄さんこのイベント相当やりこんでるでしょ、盾の使い方もだけれど、パリィのタイミングが神。」
「そうそう、光魔法をパリィとか始めてみた。ヤバイ。」
「見間違えたかもだけど、ボスの必中貫通攻撃もかわしてたような。」
「絶対に下がらないとかありえないというか、ノックバックもしてなかったよね。」
甘えの許されないソロで鍛えた技をほめてくれて気持ちよくなる。
「ふっ、我くらいになるとな。」
すかさずノッておいた。
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