少年との邂逅
何とか私達は崩れかけた廃屋の中に隠れることができた。
「本当はお前らなんか助けたくなかったんだからな」
少年はいかにもいやそうに私達を見る。
少年の着ているものはそこそここざっぱりしているがやはり質素で、どのような立場なのかはっきりしない。
そろそろ夜も深まりつつある時間帯に私の故郷ならこんな少年を外に出さないのだけれど。
「本当にお前らなんか助けたくないけど、あんな奴らにあの人の嫁候補がどうにかされたらあの人の名前に傷がつくからな」
この少年はあの方のことを言っているのだろうか。
「本当ならお前なんかあの人の嫁になれるはずなかったんだからな」
そう言って少年は私を睨みつける。
「ちょっとお待ち、坊や、名前は?」
愛亜が少年の言葉をさえぎって仁王立ちした。
「言っておくけどこの人は美鈿お嬢様という名前があるの。坊やにお前呼ばわりされる筋合いはないの」
「うるさいな、どうせあの女の身代わりのくせに」
あの女、あの方の思い人のことだろうか。
「あの女とは?」
「商人の妻になるくらいなら貴族の妾になった女だよ、もともと貴族って言っても名ばかりの落ちぶれ貴族だったくせに」
その女はあの方を捨てたのか、なのに今でも愛されているのはその女だというの。
あの方を知って以来、私は嫉妬という気持ちを覚えた。
こんなにも胸を焼く思いを私は今まで知らなかった。
「あの人がどんなすごい人だかお前ら知らないだろう」
「それはそうと名前は何、あたしの名前は愛亜、そっちは」
「清秋だよ、だけど気楽に呼ぶんじゃねえぞ、お前らなんかに呼ばれたくないね」
清秋はそう言って歯をむき出した。
「それであの方がすごい方っていったい何故?」
「ふーん、知らないんだ」
清秋は人を馬鹿にしていると私にすらわかる態度をとる。だけど、清秋の知るあの方を私も知りたい。
「この国で内乱があったことは知っているよな、そして、この街で反乱軍が街の住民を大勢焼き殺す事件があったんだ」
私はこの街のあちこちに焼け落ちた家が何件もあったのを思い出した。
あれはその惨劇の跡だったのだろうか。
「その反乱軍を街の人を指揮してやっつけた人がいるんだ」
「もしかしてそれがあの方?」
私は思わずその時のあの方の雄姿を思い胸が熱くなった。
「ああ、見事その指導者は敵の総大将を叩き殺したそうだ」
「それ、君は見てないの?」
愛亜が尋ねる。
「見てないけど、街中の噂だったんだ」
「ふうん」
愛亜は軽く首をかしげた。
「だけど、反乱軍はもともと正規軍、それが民間人にあっさり殺されたなんて国の沽券にかかわると言われて、その反乱軍をやっつけた人たちは迫害されて、首謀者は町の人にかくまわれているって話だけど、ちゃんと調べたんだ」
「なるほど」
愛亜はそう呟く。
ああなんてことかしら、可哀そうなあの方、街を救うためにしたことで国に迫害されるなんて。




