表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛は泡沫  作者: karon
愛亜 突っ込みの章
26/28

故郷

 港で旦那様の姿を見た時すぐにあたしは頭を下げた。

 別にあたしの責任だとはこれっぽっちも思っていないが、お嬢様の惨状を見れば適当なところで怒りを発散する必要がある。それを避けるためだ。

 若旦那様が愛亜は悪くないととりなしてくれたため無罪放免となった。なったはずだ。

 どうして病人の枕もとで夫婦喧嘩が勃発しているんだろう。

 囚人として扱われた数日の過労であたしはその場で熱を出し寝込んでしまった。

 まともなものを食べさせてもらえなかったので栄養が足りず回復は大いに遅れている。

 そんな病人の枕もとで旦那様と奥様が喧嘩をしている。

「どうしてあんなふざけた縁談を美鈿に受けさせたのです」

 奥様の主張はこれに尽きる。実際問題婚礼寸前までいった縁談が壊れた場合必然的にお嬢様は傷物という扱いになる。

「いや、愛亜が美鈿があの男を好いていると言い出して」

 うわ、こっちに矛先を向けようとしてきた。

「お父さん愛亜はだから極力あの男を美鈿から引き離すようにと言っていましたよ、それなのに縁談をまとめたのはお父さんでしょう」

 ありがとう若旦那かばってくれてありがとう。

「当分は美鈿も寝付いているでしょう、これから考えるべきでしょう」

 本当に最初の縁談にしておけばこんなことにならなかったのに。奥様の思いはあたしも同じだった。

「それよりも死んだ陳の後釜を決めるべきでしょう」

 不幸にも佶家の夫婦に殺害された番頭さん。考えてみればこっちのほうが大ごとだ。

「まさかあの夫婦があんな真似をするとは」

 旦那様も苦い顔だ。少なくとも良識のある商人だと旦那様は信じて疑わなかったのだそうだ。向こうでは悪名高く商人の皮をかぶった犯罪者だとみなされていたようだが。

 とにかくあたしは数日寝込んだ後仕事に復帰した。

 お嬢様はある程度回復しているようだがただぼんやりと生きていた。

 不意にお嬢様が呟く。

「ねえ、あの方はどうしているかしらね」

「さあ、あちらのことはここに戻ってからはいっこうに聞きませんね」

「あの、愛亜、本当? 風花という人が仲間を見捨てないと言っていたのは」

「はい、本当です」

 それは本当、仲間は見捨てない、仲間はね。

 あたしは普段通りの生活を再び続けることになった。

 そして、旦那様のもとに遠縁の男が訪ねてきた。

 まだ若いが新規に支店を任されるらしい、なかなか有能だという話だ。

 庭で鼻を積んでいたお嬢様がその男と目が合った。

 お嬢様はぽろぽろと涙をこぼされていた。

「お嬢様、どうなさいました」

「あの方が帰ってきたわ、見たでしょう」

「お嬢様」

 いったい何を言っているんだ、とうとう気でも触れたのか?

「あの方、帰ってきてくれたのよ」

 いや本当に何を言っているんだ。さっきのあの男があの腐れ外道だというのか?

 もしかしてお嬢様あの男の顔を覚えていない?

 いや、そもそもあの男と顔を合わせたことは数えるほどしかない。お嬢様の恋心とは単なる妄想に過ぎなかったのでは。

 思わずあたしは頭を抱えた。

 どうすんのよこれ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ