怒涛の記憶
狭苦しくて薄暗い船底の中でつい最近までの怒涛の日々を思い出す。
宿屋で一泊、あれが最後のまともな生活だった。
朝食をもらいながら風花に佶家の顛末を教えてもらった。
なんでも国外との交易を隠れ蓑に犯罪者の国外逃亡幇助をやらかしていたらしい。これだけでも大問題なんだけど、さらに問題は今回逃がそうとした犯罪者の罪状が、皇帝の貴妃様ちなみに妊婦暗殺未遂犯。
その共犯に問われたらしい、あのくそ婆はおそらく刑場の露と消えるだろう。
むしろ斬首で済んだら御の字だと思う。暗殺実行犯は処刑されないらしい。処刑されずに檻の中で飲まず食わずで死ぬまで放置されるのだとか。
一思いに殺す気なしってことだな。
そして、お嬢様が手紙を見せてきた。
内容は勒の家の人に助けてもらいました。勒の人の頼み、新しい商売相手になってくださいというもの。
あたしとしては納得。あの老婦人はむしり取られて一番悔しがるであろうものを横取りすることにしたらしい。
そして、勒婦人が手紙を受け取りに来て、その背後の役人にあたしたちは連行された。
「正規の手続きを踏まないで国に帰れないから」
どうやら共犯者を疑われているらしい。罪状が罪状なので仕方がない。
お嬢様が泣くばっかりで全く役に立たなかったためあたしが全面的にしゃべるしかなかったが。とにかくこちらも被害者でだまされたと主張するしかなかった。
そして、いなくなった当家の使用人数名が遺体で発見されたという話で目玉が飛び出した。
花嫁道具を持ち出した際、口を封じられたらしい。
彼らには悪いけど、これであたしたちが被害者だという主張は通りやすくなった。
あの夫婦は国際手配されるらしいけれど、果たして捕まるのか。閃だけでなく嘉でも犯罪者として追われることになる。親も子供も見捨てて二人今頃どうしているのやら。
そして強制送還の船の用意ができる間。地下牢に放り込まれた。
藁を布で巻いただけの寝具と粥と野菜の漬物だけの食生活。数日なら死なないけれど、一年ぐらいいたら死にそうな場所だと思う。
時々人の足がのぞく天窓からの明かりが唯一の光源で、蝋燭や灯明などもちろんない。
だが、この船底の生活に比べたらまだましだった。
布一枚を板底に直接敷いてさらに粗末になった食生活。
あたしは閃に来るまでの船旅の日数を考えてみた。あの日数ここにとどまっていなければならないのか。
時間は本当にのろのろ流れていく。
だけど、国に戻ったとしてもひと悶着は避けられない。
ああ頭痛が。




