洞穴
かつんかつんかつん、小石が転がっていく。
ごつごつとした粗く削られた岩の上でいつしか石は転がるのをやめた。
再び岩が砕け小さな小石がはじけて転がっていく。
小さな灯しかない薄闇の中、男はつるはしを握っていた。
目の前には硬い岩盤、何のためともわからずただその岩盤につるはしを叩きつける。
男の足首には鎖がまかれていた。
嫌この場にいるすべての男たちの足に鎖が巻き付けられていた。
男の目には何も映っていない。目の前の岩盤以外何も見ていない。
男の隣でも黙々とつるはしを振る男達がいた。
男達はただ目の前の岩盤だけを見ていた。
ここに連れてこられた当初、男は死に物狂いで暴れた。
何度も逃げ出そうとしそのたびに鞭で打ち据えられた。おのれの不運を嘆き恨みの叫びをあげそしてまた殴り倒された。
あきらめて働きだし、金を持ち逃げした両親が捕まればこの場から解放される、そんな期待を抱いた。
泣いて暴れてあがいていたことすべてをあきらめてしまった。
当初はどうしてこうなったのかと思い悩んでいたが今はそれすらしていない。
そして男は絶望すらしていない。
男はつるはしを打ち下ろす。それしかできない生活をしているうちにそれ以外考えられないようになってしまった。
男はただつるはしをふるう。これから先人生のほとんどをこの場で過ごす。
小石が転がっていく。
次の話も最初のは嫁行列です。別に間違いではありません。
アルファポリス版では美鈿と愛亜の視点が交互に移り変わる設定でしたが、名牢番では美鈿は美鈿
愛亜は愛亜でまとめているためです。




