牢獄
私はもつれた髪をかき上げた。
小さな木箱ほどの空間に押し込められてちゃんと横になることもできない。私の傍らにあるのは一枚の布団眠くなればそれにくるまって眠る以外何もすることがない。
宿で勒婦人に家族にあてた手紙を預けた後、私と愛亜は役人に引き渡された。
そして私は愛亜と引き離され牢につながれた。何事か問いただされたけれど私にこたえられることなど何もなく。私から話を聞きだすことはあきらめたそう言ってそのまま牢につながれた。
粗末な寝台と寝具があるだけの牢は薄暗く嫌なにおいがした。
今まで来ていた衣類は引きはがされ、灰色の埃臭い一重の着物を着せられて顔を洗うことも許されない。
食事は食べられたものではなく限界まで辛くなるまで待たなければ喉を通らなかった。
あれからどれくらいたったのだろう。
せめてもの救いは清秋の言葉だった。
「あの方の元部下があの方を救いに行ったらしいと」
風花さんはもともとあの方のもとで戦った一人なのだとか。
それゆえそのことを知ることができた、そのささやかな幸運をかみしめた。
そして、私は牢を出され強制送還されることになった。
強制送還とは国に無理やりにでも帰らされることだと初めて知った。
船に乗せられる直前私は愛亜の顔を見ることになった。
私と同じように灰色の着物姿でとぼとぼと歩いていた。
愛亜の頬がそげたように細くなっているのに気が付いた。きっと私の頬も同じようにそげてしまっているのだろう。
愛亜は私に気が付くと小さく目を伏せて頭を下げた。
声をかけようとしたけれどいかつい兵士に止められた。
船の中は牢よりもひどかった。身体を伸ばして寝ることもできない狭苦しい箱の中。牢は小さな天窓があったけれどここはそれすらない。
せめて愛亜と話ができれば。そう思ったけれど身元引受人に引き渡すまで私に一切の自由は与えられないのだとこの場所に放り込んだ兵士は言った。
来るときは小さいけれどそれなりに奇麗な部屋で過ごすことができたのに、そしてその将来が楽しみで仕方がなかった。
ああ、どうか助けが間に合いますように。あの方をどうか助けてください。
最後に見たあの方の姿を瞼の裏に思い描く。
薄暗いこの木箱の中が真っ暗になった時夜になった、その程度の時間しかわからない。食事はパサついた小麦をこねて焼いたようなものが一日一度、少量届けられるだけ。
そうね、あの方はもっと苦しい思いをしているのですもの、私はこんなところで泣いてなんかいられない。
そうだ愛亜はあの風花さんと仲良くなったのですもの、あの方の情報を仕入れることができるはずよ。
私はただあの方が無事救い出されるのを祈った。




