花嫁行列
シャンシャンシャン鈴の音が響く。
夜も更けたその街にその涼やかな音はひどく響いた。
この街は一度荒廃していた。そして今は復興の時期となる。
そのため無残な廃墟と新しい建物とが入り混じりどこか非現実間のない風景が存在していた。
その街を花嫁行列が進む。
花綱で覆われた豪勢な花嫁の輿。その帳の奥に花嫁の姿が透けて見える。
花嫁の輿につき従うのはそろいのお仕着せを着た一団だった。
そして、花嫁の輿のそばに一人だけ異なる濃紺の衣装を身に着けた若い女がいた。
しずしずと花嫁行列は進む。
その華やかさに人の目は集まるが感嘆の声はなかった。
ひそひそと囁きかわす声。そして花嫁行列を避けるようにそそくさとその場を離れる。大通から細い路地に足早に入っていく。
パンと扉を閉める音がやけに大きく響いた。
そんなことは行く先々で起こったが誰もそれには気づかないようだった。
行列の進む方向から徐々に周囲の建物が大きく立派になっていく。
ある程度の富裕層の住む場所なのだろう。
一部すすけたようになっている建物もあるが相応に立派な建物ばかりになっていった。
そしてその行く手にひときわ豪華な建物が見えた。
濃紺の甍に朱の柱、漆喰に塗られた壁にも様々な文様が施されている。
その建物の第一印象を問われれば、十人中十人が豪華絢爛と言われるような代物だった。
その建物の周囲に大勢の人間がひしめいていた。
来客のもと思われる馬車もいくつも見える。
その建物へと花嫁行列は向かっていく。
集まった者たちの真ん中に花婿とこの屋敷の女主である老婦人の姿も見えた。
だが、花嫁行列の反対方向から、武装した一団が足音高く進んできたのだ。
黒づくめの筋骨隆々とした男たちの一団は容赦なく花嫁を迎えようとした屋敷の住人に襲い掛かった。
それは戦闘ではなかった、一方的な蹂躙。
剣は抜かれてはいない、ただ棍を武器として使うだけだが、それでも荒事に慣れていない者達には恐怖だったのだろう。
悲鳴と怒号、そしてもろいものが壊れる甲高い音。
花嫁行列 一人だけ残った女が慌てて横倒しになった輿の中を覗き込む。中では豪華な花嫁衣装を着た娘が無様な格好で倒れている。
結い上げていたはずの髪は崩れ見るも哀れな格好だ。
何とか手を差し伸べて輿の中から花嫁を引っ張り出す。
その時花婿が縛り上げられ連行されるのが見えた。相当暴れた挙句叩きのめされたのか顔半分が丸くはれ上がっている。
思わず駆け寄ろうとした花嫁を傍らの女が抱き着いて止める。
花婿のみならず相当の数の者達が縄をかけられ数珠つなぎで連行されていく。
贅沢な衣装を着ていたがそれらもすべて着崩れ破れ哀れなありさまだ。
「どうして」
花嫁が呟くそして傍らの女の腕をつかんで泣き崩れた。
の従者たちも我先に逃げていく。投げ出された輿から甲高い女の悲鳴が響いた。
次から一人称になります。