表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限りなく水色に近い緋色【Revise Edition】  作者: 尾岡れき
第2章「使い捨てられる廃材たち」
68/68

65「なんて壊しがいがあるんだろう」


 街中の喧騒というのが、ここまで不快だとは思わなかった。何をそんなに喋ることがあるのか、不特定多数が会話を繰り返す。それはもはや騒音と言って差し支えなく、鼓膜を遠慮なく突き刺してくる。


「なにを勝手なことをしているんだ?」


 ヤツは感情を沸騰させんばかりに唾を撒き散らかす。知ったことか。指図されるいわれはない。


「わかってるのか? 今、事を起こすのがマズイことを!」


 実験室にとって、俺は特化型サンプル以上の情報ハザード対象だと、同じことを飽きもせずにヤツは説明を繰り返す。それで? だからどうしたと言う?


「それで、じゃない! 貴様がどの特化型サンプルよりも性能が高いことは認めるが、国家権力が後ろ盾にある実験室にはかなわない! だから、もう少し待てと言っているのだ!」


 実験室がどう企もうが、ヤツがどう画策しようが興味はない。だが、あの特化型サンプルには大いに興味をそそられる。


「忌々しい【限りなく水色に近い緋色】は、どこまでも私の邪魔をする――」


 怨念ごと吐き出すようだが。そんな研究者を見やりながら、嘲笑すら浮かばない。結局はお前が研究者として不完全なだけだろ? あの特化型がお前の研究や理論より強いだけ。ただそれだけのことじゃないか?


(まぁ、いい)


 ヤツは道具として利用価値がある。だから、勝手に喋らせておく。

 と、足を止める。

 あれは、なんだ?


「あぁ、野球場だ。お前には縁の無い場所だ。あの廃材(スクラップ・チップス)が引退試合をするらしいぞ。能天気な話だな」


 鼻で嘲笑い、ヤツは歩みを早める。

 ふぅんと、見やる。

 笑顔で人々は【やきゅうじょう】とやらに列をなしていく。


 【やきゅう】とやらに、これだけの人が集まるらしい。どういう場所なのか、より興味をそそられた。

 こんなにも外の世界はたくさんの人で溢れて、明るくて鮮やかで眩しくて。自分が拘束されていた、窮屈で狭い場所とはかけ離れすぎて――。

 

 

 

 


 

  

   

    

     

      

       

        

         

           

 

 

 

 

 なんて

 壊しがいが、

 あるんだろう。

 













 

 

 

 

 

 彼はあの特化型サンプル――宗方ひなたとの再会を夢見て、ニンマリと笑みを零すのだった。

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ