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限りなく水色に近い緋色【Revise Edition】  作者: 尾岡れき
第2章「使い捨てられる廃材たち」
51/68

48「お前が憎んだ世界を妾が焼こう」


 それは不思議な感覚だった。


 ユルサナイという感情はニエタギル、抑えきれないイカリの感情に類似していて。それなのに、ひなたはたゆたうように漂う。


 ずっとひなたの中にいて眠っていた誰かと、すれ違った。触れるように、その髪をそっと撫でるように。


 唇を裂くように、その誰かは破顔した。歓喜を隠すことなく、あふれんばかりに零して。


 ――あとは、まかせておせ。

 そう誰かは囁いた。


 その言葉すらも、ひなたの鼓膜にはボンヤリとしか届かない。

 ぱちん、と火種が弾けて。


 暖炉の炎のように、橙の淡い灯りがひなたを暖める。その視界全てを染めて。埋め尽くして。

 ひなたは目を細めて、小さくアクビをした。

 眠い、本当にねむい。


 ――た、ひな――ひ――先輩――ひな――お姉ちゃ――ひな――。


 ブツギレの声がなお、眠りを誘う。ぱちぱちと燃える炎は、甘美なまでに優しくて。


 マカセテオケ。


 そう囁いた声は、ひなたに届かない。

 炎が弾ける。


 ――水色、お前が憎んだ世界を妾が焼こう。

 ひなたに良く似た、そしてひなたが絶対出さないであろう哄笑をあげながら、炎はなお歓喜に舞う。

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