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限りなく水色に近い緋色【Revise Edition】  作者: 尾岡れき
第2章「使い捨てられる廃材たち」
32/68

29「それはそれで一興か」


 緋色は遺伝子情報の海の中で微睡ながら、片目を開ける。


(ふぅん)


  宿主(水色)に変化がある事を感じていたが、ここにきてソレは顕著になった。あれほど緋色の能力を拒絶していたのに、だ。水色はあえて緋色の能力を選ぼうとしている。それは遺伝子情報の相性、そして過去に調整されてきたサンプルとしての能力の差に他ならない。


 何より、水色は力を欲している。


 だが水色は理解しているのだろうか? 緋色の力を強く願う事は、緋色を表に出すことになる、ということを。


 あれほど忌み嫌った、壊すだけのチカラ。それを水色は肯定する事になるのだ。


(それはそれで一興か――)


 目を閉じる。何故か瞼の裏側に散らつくのは、水色の【デバッガー】たる少年で。緋色が水色を干渉するように、水色もまた緋色を干渉しているのかもしれない。


(忌々しい――)


 緋色は思う。自身を調整と言う名のもと、手懐けようとする愚かなニンゲン達。それは【でばっがー】であっても【じっけんしつ】であっても変わらない。純粋に焼き尽くしてやろう、と本能が囁く。


 だが、と思う。完全に宿主を制圧できていない今、緋色が表に出た所で、実験室の言う所の『おーばーどらいぶ』になってからでは遅い。あの時は運が良かったが、今度『おーばーどらいぶ』をしたら、この躰は保てない。だからこそ、忌々しいが【でばっがー】の存在は、緋色にとっても生命維持上、必要不可欠だし実験室の『けんきゅうしゃ』もまた必要なのだ。


 時間がまだ足りない。

 遺伝子情報を改変し、蓄積し、経験する時間が。


(だから――)


 今は宿主にチカラを貸そう。試験を繰り返し精度を向上させた上で、緋色は目覚める。その過程の一つと考えればやぶさかではない。

 緋色は微睡みながら、宿主に向けて手を差し伸べた――――。

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