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限りなく水色に近い緋色【Revise Edition】  作者: 尾岡れき
第2章「使い捨てられる廃材たち」
21/68

18「緋色」


 微睡みの中、緋色は意識を水色に向けた。


 水色の軟弱な意志など興味はなかったが、この短い時間で「水色の特性」について「水色」が認識を始めた。その事実に、緋色に歓喜が沸き起こる。


 生きる事に渇望の無かった水色が、力を求め始めている。


 緋色にとっては、対峙するに値もしない下等種、実験サンプルの失敗作だが、余計な感情が邪魔をして灰にする事もできない水色。


 緋色は思う。


(意志薄弱な)


 この世は生存競争だ。強い種が残る。弱い種は絶滅するだけだ。脆弱なニンゲンがいくら保護を叫んだところで、絶滅危惧種がこの大地からいなくなるのは、味生存競争ルールから見ても当然も事なのだ。むしろ弱いものを保護しようとするから、生態系が乱れる。それが力ある緋色には不愉快でならない。あまりに病的だから、腐食の進行が早くなる。力のないニンゲンが平等を叫ぶ。その努力も無く、醜態の生き様を晒しながら。実験室という存在がその良い例ではないか。


 まぁ、好きにするがいい。


 微睡みに身を任せて、緋色は呟く。

 水色は手を差し伸べたいと言う。


 強欲で溢れた実験動物に対して、助けてあげたい、と言う。

 なんて甘い。


 肉食動物が食ってしまった草食動物の情念に涙を流すようなものだ。あれ程美味い美味いと食べた後で。


 真実を知り、水色は絶望をするだろう。だが、それも経験だ。水色には経験が足りなさすぎる。



 緋色が自由に目覚めるその時の為に。


 微睡みの中に緋色の冷たく、小さな笑みが消えていった。


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