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限りなく水色に近い緋色【Revise Edition】  作者: 尾岡れき
第2章「使い捨てられる廃材たち」
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16「覚悟ある?」


 ゆかりとの通信を切った後も、爽の心配は尽きない。さすがは実験室の戦闘特化型素材、ゆかりにも位置情報はマーカーしているのだが、自転車移動のスピードが早い。赤信号で自転車を止めた際にスマートフォンで追跡マーカーの位置情報を再度検索するが、廃材・羽島と距離を少しずつ縮めつつあった。問題は自分たちがどの段階で追いつけるか。場合によっては公共交通機関に乗り換えてもいい。スピード決戦のカーチェイスではなく、【彼】をどの状態で屈服させるか、そこにかかっている。だが然程の問題ではないと思っている。ただ爽の中で別の迷いがあった。


 このまま実験室に関わることに、だ。


 ひなたは【実験室】という組織について理解が無いに等しい。勿論、爽自身も全貌を把握している訳じゃない。ただ【あの人】を通しての予備知識があるだけだ。そして、あの人による『庇護』があるから干渉を受けなかったに過ぎない。遺伝子研究特化型サンプルでありながら――支援型という条件も監視を緩和されていた理由だと思うが――何より【あの人】の存在感と影響力に大きく助けられている事を実感する。 だからこそ――ひなたがどう選択するか、ではなく爽自身がどう選択するか。


 失いたくないモノ、手放したくないモノ、後悔、現状認識、精査分析を繰り返そうと努力するが、現状の情報が少なすぎる。






『覚悟ある?』


 あの人は悪戯めかした笑顔で囁くが、こういう時の目はいつも笑ってない。


 ――ある。爽はそう答える。


『爽君が彼女を探す事は、言ってみたら実験室に向けて存在を示す事と何ら変わらない。つまり、 ココにいると挙手するようなモノ。覚悟とはそういう事。重ねて聞くけど、その覚悟はあるの?』


 無策では、無計画では、ただの感情では事態を打開できない。それだけ爽が求めた少女の存在は大きく、影響力は計り知れない。


『まぁ、爽君の決意は前から聞いていたし、今更ではあるんだけどね』


 あの人はそう笑う。


『がんばれ、男の子』


 あの人から剣呑な表情は消えて、そう笑う。


 覚悟――。爽は反芻する。情報が足りない。できるなら実験室とは距離を置きたい。ひなたを普通の女の子として幸せにしてあげたい。それが押し付けのエゴであったとしても。

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