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ときにショウジョの謎は深まる
急いでいたとはいえ、座っていた少女をいきなり抱き抱えてきてしまった。
誘拐犯なのはどっちなんだろうか、これはしばらくあの町には帰れそうにないな…なんてことを考えていると、少女が話しかけてきた。
「あの…えっと……」
「あなたは?……」
俺は、咄嗟に何か嘘をついて誤魔化そうとも考えたが、少女の眼差しを前に、嘘をつくことが出来なかった。
「俺の名前は、始だ。路地裏に人がいるのは珍しかったから、少し覗いてみたら、君が男の人に誘拐されかけるのを見て、助けるためにここまで逃げて来たんだ。」
我ながら都合の良い言い訳だと思う。もし、自分が誘拐犯だと誤解されても、捕まるのは自分だから、自分だけ逃げればよかったはずだ。
しかし少女は、スミレのような可憐な笑顔を浮かべた。
少女「さっきはありがとう!!」
少女「あの時助けてくれなかったら、どこかに売り飛ばされてたよ」
始 「売りとばす……?」
そういえば、さっきの男が商売道具がどうとか言っていたことを思い出す。
少女の謎が深まってゆくのを示唆するかのように、
日はゆっくりと沈んでいった…