1〜5
1.錆
友人宅で夕飯をご馳走になる時、必ず私の茶碗にだけ小さな錆びが混じっているのだとあの子は言う。
2.足
夜コンビニに行くと背後から足音がするのだと言う。「腕には自信があるから大丈夫だ」と豪胆に笑っていたが、翌日「足が一本増えているようだ。どうやら向こうは足に自信があるらしい」と少し途方に暮れていた。
3.鱗
トイレから出た後に「人の目から鱗が取れる瞬間を初めてみた」と興奮気味にまくし立ててきた。よく話を聞いてみると薄く透明なものがポロッと取れるのを見たのだという。まさかと思いコンタクトレンズのことを話すと案の定知らなかったようで、感心したように「時代というものはすごいねぇ。でもあんなものを5枚もいれるだなんて、僕はちょっと怖いなぁ」と笑った。おいちょっと待て。
4.扉
この病院の地下室で迷ったことがあると言う。人に道を尋ねようと扉を開けるとおじいさんが出てきた。声をかけてもにこにこと微笑むばかりで答えてくれない。諦めて隣室の扉を開けると全く同じ顔のおじいさんがいた。双子のおじいさんは見たことがないがあんまり似ているのでびっくりしてしまった。こちらのおじいさんも声をかけても答えてくれないので、その部屋の向かい側の扉を開くと今度は椅子に座って眠り込んでいるおばあさんがいた。あまりにも気持ちよさそうに寝ていたのでそっと扉を閉めたが、もしかしてとその隣室の扉を開くと、おばあさんにそっくりな、ひどく無表情なおばあさんがいた。おばあさんに迷ったことを伝えるともごもごと帰る道を教えてくれた。お向かい同士で双子のおじいさんとおばあさんがいるなんて、すごい偶然だよね!と滅多にない経験を自慢げに話しているのが可愛いが、この病院の地下室は霊安室と倉庫だけで病室は無いことをいつ切り出そうか迷う。
5.猫
街灯の光の下に2匹の猫の影が寄り添いあっているという。最近小さな影が5匹増えててんてこ舞いのようだそうだ。




