プロローグ
20話くらいで終われたらいいなと思っております。最近執筆から離れていたのでリハビリがてらにテンプレ王道ファンタジーをばと。
ちなみにゴブリンが主役です。チートはないです。よろしくお願いします。
「⋯⋯よし、魔界ニンジンは今日もいい色してるな!」
採れたての魔界ニンジンを目の前に掲げ、1人満足げに頷く。人族の血液を連想させるこの独特な色は、魔界ニンジンの特徴だ。この色がどす黒ければどす黒いほど、魔素がギュギュッと凝縮されていて美味いのだ。
ひとしきり畑の魔界ニンジンを収穫し終わったところで、俺は地面に座って空を眺める。いつ見ても暗雲で隙間無く埋め尽くされた魔界の空は、この時間帯だとほんのりと赤みがかかっていてすごく綺麗だ。
そんな美しい空に、ザザザっと突然ノイズが走る。しかし、このノイズについては事前に連絡があったので驚くことはない。そもそも、魔界ニンジンの収穫作業を一旦止めたのは、これを見るためだ。
『あー、あー。えー、魔界のみんなさん、聞こえているかな~? みんなさんがだぁい好きな、魔王さんですよ~』
独特なイントネーションで呼びかけてきたその声に、一斉に歓声が巻き起こる。魔界の空をスクリーンにして表示されるのは、美少女とも美少年とも呼べる中性的な容姿の人物。腰元まで伸ばした水色の髪を揺らしながら、にこやかに笑みを浮かべて手を振るその人こそ、俺たち魔族を統べる王、魔王様だ。
『えーっとね。今日こうして魔力を無駄遣いして、魔界全域に魔王さん生放送をお届けしているのには理由があるわけなんです。実は⋯⋯先日病で亡くなった『”疾”のヴィスケ・ヴァイシュ』に代わる新たな四天王の1人を、今ここで決めちゃおうと思いま~す』
魔王様の突然の発表に、さっきとは違う種類のざわめきが魔界全体に広がる。俺も、手に持った魔界ニンジンを思わず落とすくらいにはビックリした。すぐに拾い上げたけれど。
『四天王』。それは、魔王軍の中で魔王様に次ぐ実力を持った魔族4人の総称だ。『”力”のグレア・デストロイ』、『”智”のマリー・ゴールド』、『”技”のパフェット・スパイダー』、『”疾”のヴィスケ・ヴァイシュ』。魔界に住む魔族でこの4人の名前を知らない者は存在しないだろう。
そして、さっき魔王様が言ったように、その四天王の1人、ヴィスケ様が病で亡くなった。そろそろ新しい四天王が発表されるんじゃないかとは噂されていたけれど、こんな形で発表するとは魔王様もなかなか変わったことをする。これで、新たに四天王に選ばれた人は一瞬にして魔界中にその名を知られるわけだ。
「新しい四天王は大変だろうな~。ま、俺には縁のない話だけれど」
1人呟きながら採れたての魔界ニンジンをポリポリと囓る。うん、美味い。魔界ニンジンを育てるスキルには自信がある俺だが、そんなスキルで四天王に選ばれるわけがないので既に他人事気分だ。
それに俺、魔族の中でも底辺のゴブリン族だし。力は並以下で魔力はろくに無い、繁殖力だけはピカイチ。そんなゴブリンが、四天王になんてなれるわけがない。
『よーし、それじゃあ早速新しい四天王を発表しちゃうよ。新しい四天王は⋯⋯!』
魔王様はそこでわざとらしくためを入れる。うーん、美しい魔王様の顔面が空中にドアップで映るのは目の保養になるんだけれど、ちゃっちゃと発表してくれないかな。早く畑仕事に戻りたいのですよ。
そんな思いを込めて空中の魔王様を見つめたその時、魔王様が急にニヤッと口角を上げたので思わずドキッとした。あり得ないことだが、俺の思考に反応したかのように思えたからだ。
⋯⋯後々思い返せば、本当に魔王様は俺の思考に反応したのかもしれない。兎に角、俺は魔王様が発表したその新しい四天王の名前を聞き、今度は落とした魔界ニンジンを拾うのも忘れるくらい驚くことになったのだった。
『はい、良い感じにためたところで改めて発表しますよ。新しい四天王は、ゴブリン族の『シルバ』だよ~。はい皆新しい四天王に拍手~。ぱちぱちぱち~。あ、あと四天王に選ばれたシルバ君は後で魔王城まで来てね。それじゃあ諸君、また次の放送で!!』
そう言って、魔王様の放送は始まった時と同じく唐突に終わった。しかし、その後に起こったざわめきは放送前の比ではない。当たり前だろう。ゴブリン族が四天王に選ばれるなんて前代未聞だ。
⋯⋯ていうか、シルバって俺だし。え、夢じゃないよねこれ。てか早速魔王城への呼び出し食らったよね!?
全く理解が追いつかない。ゴブリンの小さな脳味噌でこの事態を理解しろという方が酷な話だ。しかし、そんな俺でも1つだけ理解出来ることがある。
それは、俺は魔族史上最も弱い四天王になるだろうということだ。




