第八話 どうしてこうなった?
予約投稿時間を間違えてしまいました…。
すみません。
農地を作ってから数日後、サキは部屋にこもってあるものを作成していた。
別に街で買えるものなので、わざわざ作成する必要はないのだが、そこはサキの拘りであった。
「いつまでも、穴あきの服を着ているのは、よくないもんね」
作成しているのは、マリアと子供たちの修道服。
街を探索した際に、服屋で農作業用に数着ほど買ったけど、孤児院に住んでいることからオリジナルの衣類を作ろうと思い立ったのだ。
部屋の中に響き渡るミシン音。
この世界にはミシンは存在しないのだが、ストレージにはゲーム時代に購入した魔石を動力にした魔道具を持っている。
生地と糸は普段着として使っても痛みにくく、汚れがついても叩くだけで落とせる魔糸製。
丈夫故に加工がしづらいが、アダマンチウム製の裁縫道具を所有しているので問題ない。
縫い終われば、純白の光沢を帯びるローブと膝まで届く茶色のスカプラリオができあがる。
サキは、自分がデザインした修道服を見ながらつぶやく。
「無地だと味気ないよね…染料で模様を描くかな……そうだ!」
何かを思いついたサキがストレージから取り出すのは、魔石を練り込んだ金色と銀色の魔糸。
「魔防具にもなるように刺繍しようっと」
職人魔法には『刺繍』もあるが、刺繍を施すだけで魔法付与はできないため、刺繍ができるユーザの稼ぎ口にもなっていた。
サキは祖母から刺繍も習っており、魔法効果を思い描きながら、袖や裾の先に刺繍を施して魔法付与していた。
ちくちくちくちく……。
……全員分だと流石に時間が掛かるよね。
ちくちくちくちく……。
刺繍を施すのに、数日要したが、『温度調整』、『物理防御』、『魔法防御』、『属性耐性』、を魔法付与された修道服が完成した。
◇◆◇◆
翌日は雨が強く降っており、朝食後の子供たちは修道院の中で過ごしていた。
わたしは朝食を終えてから部屋に戻り、昨晩完成した修道服に着替えて、皆が集まっている食堂へ向かっていた。
……喜んでくれるかな。喜んでくれたら嬉しいな。
わたしは、不安を感じつつも食堂に入った。
「わあ、その服どうしたの?」
「「神様が着ている服みたい!」」
サキの回りでカミラと双子のマリとリアが、まじまじと見ていた。
興味を持ったゲルトとレオンも近づいてくる。
「すごぉー。刺繍もあって貴族様みたいだ」
「この刺繍、凄く細かいぞ」
……これなら皆、喜んでくれそう。
「皆が畑でがんばっている間に作ったの。皆の分もあるんだよ」
わたしは嬉しそうに笑って、ストレージから修道服を取り出して、各自に手渡ししていく。
受け取った子供たちは、大喜びしてサキへお礼を述べれば、駆け足で食堂から出て行った。
……子供たちの笑顔が見られただけでも、頑張った甲斐があったよ。
そんなことを考えていたら、食器を洗い終えたマリアが食堂に戻ってきた。
「マリアさん、わたしが作った修道服なのですが、着てくれますか?」
「……」
わたしが着ている服と手渡した修道服と見比べながら黙りこんでしまった。
……あれ?子供たちは喜んでくれたけど、やっぱり修道服にはルールがあるのかな?
「…マリアさん?もしかして修道服には、決まりが存在するのですか?」
「あっ。いえ、決まりは設けられておりませんが…」
マリアはその場に跪き、両手を胸の前で組み述べる。
「サキさんには、修道院を修繕してもらいました。そして、亡きパーク神父の土地を買い取って頂いただけではなく、様々な作物を恵んで下さりました。尚且つ修道服まで下さるのですね」
崇めるような表情でそう言いながら、マリアはわたしの手を取って、甲に額を付けた。好きでやったことに、感謝をとおり越して崇められるのは、わたしはものすごく困惑する。
「マリアさん、好きでやってることなので、お気になさらず…」
「……」
……マリアさんは首を横に振るだけだ。わたしは子供たちだけでも稼げる方法を考えているのに、実現したら…どうなっちゃうの?想像できないよ。
この現状をどうしようと考えているうちに、着替え終わった子供たちが戻ってきた。
お揃いの服を着た子供たちは、目の前の状況を見てキョトンする。
……だよね、そうなるよね。
状況を説明しようとしたら、マリアが遮り、わたしに述べた内容を子供たちに話せば、子供たちまで跪き、両手を胸の前で組まれた。
……どうしてこうなった?
読んでいただきありがとうございます。