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第七話 農地開拓するよ

 起きてから、昨日着ていた衣類を生活魔法で洗濯、乾燥し、割られた窓を直してから食堂に着くなり、カミアが口を開く。


「おそいよー。はやく、ごはん食べようよー」

「待たしてごめんね」


 お腹をすかせてスプーンを握る、カミアに催促されながら着席し、食事前に捧げる祈りの言葉をする。


「天上におられる神のいつくしみに、御心に感謝と祈りを捧げ、この食事を頂きます」


 朝食は、ライ麦パンと昨日と同じスープだった。

 わたしは食事を終えて考えていた。


 料理は同じで、麦粥がないことから麦も不足しているってことだから、やっぱり畑で食材を増やす必要はあるよね。と、考えていたらマリアから声がかかる。


「本日は冒険者ギルドへ行かれるのですか?」


 お金にも困ってないし、欲しい素材もないので、食材確保するほうが急務だ。

 食事改善して品数を増やすことも大事だけど、自分は美味しい料理を食べたい。


「いえ、子供たちと畑にいきたいと思います」


 美味しい料理を食べるために、ストレージの作物の種や苗木のストックを使って食材を育てるのだ。

 品種改良している種や苗なので、街で売っている食材より美味しい自信はあるよ。


「そうですか、子供たちにも伝えているのですが森に近いですので、気を付けてくださいね」

「わかりました。魔物が出てきたら子供たちを守りますね」


 どうやら森に近く魔物の危険性があるようだが、自分は冒険者ランクSなので、もし出てきても子供たちを守れるよ。


「いえ…そういうわけではないのですが…」

「あっ…心配してくれて、ありがとう」


 嬉しかった。冒険者ランクSなので子供たちの護衛を頼まれたのだと思ったけど、心配してくれていたことに。


◇◆◇◆


 わたしの買った土地は、600坪あるけど半分以上、森に侵食されていた。

 子供たちの耕している畑は庭先の家庭菜園ほどの広さで、細長く直線状に土を盛り上げた畝は作られてなく、雑草処理に追い付いていない。


 けれど、小さい子供が手作業のみで畑を維持できるだけでも凄いことだよね。


 男の子たちは畑にまく為の水を汲みに行き、女の子たちは畑の雑草を抜いている。

 わたしは別行動して食卓を豊かにするべく、魔法を駆使して開墾を始める。


 まずは、森から何とかしないとね。


 わたしは思い描く《土は柔らかく、木々が浮き根や枝を刈る真空の刃》魔法が発動すると、大地に根を張っていた木々は次々と浮き上がり、根と枝は風で斬り落とされる。


 原木を歩きながらストレージへ収納し終えたら、わたしは思い描く《空気と交わり、破裂、粉砕》魔法が発動すれば、根と枝は、粉砕機にかけられたように、こなごなとなる。


 見晴らしが良くなったところで、わたしは思い描く《台地はひっくり返り、流動した土が造形を作り上げる》魔法が発動すると、大地の表面がねじれるように掘り返され、土は動きだし等間隔で深さ30㎝、高さ20㎝、幅は40㎝、の畝を形作る。

 本来は、土を掘り返して敵を埋め、防壁を作り上げるものだ。


 こうして日が昇りきらないあいだに、雑草がない肥沃な農地はできあがり、周囲には土の香りが強くただよっている。


「いいね、いいね、順調だね!」


 ふふーん♪と、鼻歌交じりでストレージから取り出したのは、幅は3畝分、高さ60㎝の車輪が付いており一定間隔で穴が空いている樹脂製のパイプだ。

 これは自作した種落とし機。パイプ内に種を入れておくと、リヤカーのように引くだけで棟の真ん中に種を落せる。


 種落とし機を使うことで、短時間で小麦6畝、大麦6畝分の種がまき終え、胡椒の苗木は手作業で3畝に植え、害虫除けの魔石を動力にした魔道具も設置した。


 わたしは、残りの畝を見ながら今後の予定を考える。


 雲は高くないし、落葉樹の葉は緑色で紅葉してないから季節は春だよね。

 だとしたら、春に種を蒔く、トマト、空芯菜、枝豆、しし唐、オクラ、茄子、トウモロコシ、レタス、カブ、大根、人参、さつま芋…、果実がなる木も植樹したいよねぇ。


 うーん。作物が沢山なのはいいけど、一人じゃ管理や収穫が大変だよね?

 あっ、子供たちに手伝ってもらえばいいか!

 と、サキが考えていると。


「森がなくなってる…」「畑ができあがってる…」

「「サキお姉さんは、大魔法使い!?」」

「あの木はなに?」「知らない木?」


 ……双子は同時に喋るから、被らない時は聞きとりにくいのよね。


 振り返れば、目を見開いて驚いているマリとリアの姿があった。


「わたしの国だとこれくらいの魔法は普通だよ?あとね、あの木は胡椒っていう香辛料が取れるんだよ!」

「「サキお姉さんの国は、魔法使いの国?」」

「ううん、普通の国だよ」

「「……」」

「そうだ、皆に手伝って欲しいことがあるのだけど、聞いてくれるかな?」

「「わかった!皆を呼んでくる!」」


少し待てば子供たちが集まってきた。

双子同様、ゲルトとレオンは驚いていたが、カミアは「サキお姉ちゃんだもんね」と、受け入れていた。


……この国には、魔法使いが本当に少ないのだろうなぁ…。


わたしは子供たちへ、美味しい料理を食べられるように、作物の種蒔きや果樹の苗木植えを手伝って欲しいことを伝えれば、「美味しい料理!」で、騒ぎながらもお手伝いしてくれることになった。


ゲルトとレオンに種落とし機を貸して、1畝ごとに一種類の種を蒔くようにお願いして、わたしは、双子とカミアたちと果樹の苗木を植えながら一日を終えた。

読んでいただきありがとうございます。

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