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第五話 泊めてください

 孤児院が見えてくると、マリアの傍らには子供たちがいた。そして、わたしの姿を見つけたマリアが今にも泣き出しそうな顔して掛け足で向かってきた。


「危ないじゃない!子供なのだから危険なことは止めなさい!!」


 わたしはチート転生特典を受け。前世では成人女性だったが、マリアを見れば心底心配さしているということが伝わってくる。

 ぺこりと頭を下げて謝った。


「心配させてごめんなさい。でも、わたしは冒険者だよ?」

 マリアは、なにも言わずにサキをギュッと抱きしめる。


「お姉ちゃん…ごめんなさい……わたしたちのせいで…」

 マリアに抱きしめられたままのわたしが顔だけ向けると、申し訳なさそうに今にも泣きそうな顔な子供たち。


「わたしに謝るようなことでもしたの?」

「…パーク神父様の畑を耕したの。でも…神父様が亡くなって……別の人の物だって知っていたの…」

 ああ、神父様がパークさんだったのか、前から食べるために畑を持っていたのね。

 寄付金も少なく、生きていくためには、子供たちも作物を作らないとダメだったのか…


「謝らなくてもいいよ。それに土地の権利者は、わたしだから一緒に耕そうね!」

 ストレージから取り出した権利書を子供たちへ見せようとすると、マリアからの抱擁から解放された。

 子供たちは歓喜の声を上げているなか、権利書を見たマリアは納得のいかない表情で質問してくる。


「た…確かに領主様の印もあります…でも!お金はどうしたの!?」

「冒険者として稼いだお金を払いましたよ?」

 ストレージから取り出した虹色の魔板を見せるが…

「冒険者と言ってもEランクで稼げる金額じゃないわ」

 なるほど、わたしの容姿が子供だから街の雑用できるランクと誤解しているのね。ならば、と、ストレージからギルド長から貰った手紙を取り出してマリアへ手渡した。


「……この手紙はなに?」

 マリアは手紙を読みながら驚きの声を途中で上げながら読んでいる。読み終えた手紙を返らされ、わたしが魔板と共に収納すればマリアが口を開く。


「驚きましたが…サキさんが冒険者ギルド長も認める、ランクSの冒険者なのですね。でも、サキさんへ渡せるお金もなければ、差し上げられるお礼もありませんの…」


 んー。お金は冒険者時代に狩った魔物の素材や、作成したアイテムを売ったのが残っているしなぁ…。土地の権利書も怒りに任せたままの成り行きだし。むむむ…どうしよう?

 あっ、宿屋を探していたのだ。修道院に空き部屋があったら借りられるかな?


「…あの。宿屋を探していたので、街に滞在中は修道院に泊めてもらえますか?」

「大丈夫ですが、親御さんはどうされますか?」

 門番の衛兵さんと同じ流れになるかな?

「親はわたしが幼い時に亡くなっているので、わたし一人です」

「そうでしたか、その御歳で辛い試練を受けられたのですね。是非、泊まってください。」

 マリアは憂いの表情をしながらも、サキを歓迎すると、子供たちの中から声が掛かる。


「おねぇちゃん、泊まるの?」

「うん。街にいる間はお世話になるから仲良くしてね!」

 にっこりと微笑みながら返事をすれば、にぱっと、笑顔を見せ、わたしの手を引きながら、孤児院の中に向かう。



 わたしは、孤児院の中に入り部屋に案内された。

 案内された部屋は6畳ほどで、窓際にベッドと思われる木製のフレームがあるだけだった。

 布団を用意すると言われたけど、自前があると断りストレージから、にゅっと布団を取り出して設置した。


 布団の素材は、耐久性が優れる魔物産で、布は魔絹製で敷布団の中身は魔羊毛、掛布団は魔水鳥で、ふかふかの、ふわふわなのだ。


 子供たちは布団を取り出したときに驚きの声をあげたが、設置するなり手で触れればおねだりが始まる。が、手元に布団の中に詰める素材がなくて作れないと謝る。


 なんどもストレージから物を出し入れしていたが、布団を出したときには驚いた顔で見られた。当たり前に使っていたけど、ストレージって珍しいのかな?



 子供たちが落ちつくと、わたしは食堂へ案内されて、子供たちの紹介を受けていた。


 孤児院に入る時に手を握られた子の名前がカミア、7歳。レディシュ色の軽いウェーブがかかった髪を肩まで伸ばした、灰眼、花が咲いたような笑顔をする女の子。


 カミアの隣にいる双子の姉妹の左がマリ、右がリア、9歳。茶色のストレート髪を背中まで伸ばした、マリが緑眼、リアが灰眼、孤児院の最年長でお姉さん立場。

 マリアの子供かと思ったけど、パーク神父が生前に引き取った子でシスターの名から名付けられたらしい。


 食堂で走り回っている男の子たちが、ゲルトとレオン。

 2人とも8歳。茶色の短髪の茶眼、自称、孤児院の女の子たちを守る騎士らしい。

 あっ、走り回っているからマリアに叱られている。


「もう、食堂で走り回ってはダメよ。あと、入浴の準備はできたから夕飯までに入ってきなさい」

「「「「「はーい」」」」」

 元気よく返事する子供たちだったが…


「お姉ちゃんも、一緒に、入ろうー?」

「「わたし達と緒に、洗いっこしようね!」」

 カミアがわたしの背中に抱きつき、双子のマリとリアに両手を握られて浴場へ案内される。ゲルトとレオンは後ろをついてくる。

 女の子たちを見ながら可愛いなーと、思っていたが…着けば脱衣所は1つだけ。


(えーっ混浴なの!?ちょぉぉぉっと待って、マズイよ!見た目子供でも流石に恥ずかしいよぉ…)



 わたしは、女の子たちに体を固定されたまま脱衣所に連行される。

 見た目は子供、精神は大人、その名はサキ…

読んでいただきありがとうございます。

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