第四十九話 断固拒否します!
戦争が始まってから1ヶ月過ぎたが、戦地から離れているセラト街は平和だった。
わたしが経営している食事店の一角で、ダングルフ、マルクスたちとお茶をしていた。
「国から回復薬を差し出すようにと、要請がきたのじゃ」
「それでどうするのですか?」
「おまえさんとの約束もあるから断りたいのじゃが……」
ダングルフは歯切れが悪くしながら、マルクスを見つめる。
「我には次期国王の要請を拒否することはできぬ。それにしても其方が作製しておったのか」
「ええ。販売先を冒険者に限定していますけどね。それで、ダングルフさんが断ったらどうなるのですか?」
「どうなるも反逆罪にされるかもしれんな」
ダングルフは、要請に従えばわたしとの契約を破ることになり、従えなければ反逆者にされるかもと板挟みの状態で顔色を悪くする。
「バモカノさんでしたっけ次期国王? 戦争理由もアレですが、国民に理不尽な要求をしていたら国が滅びますよ?」
下らない理由で戦争を仕掛けるし、国民に対して理不尽な要求をしていたら他国へ逃げられるか盗賊となって国内の税収は下がり、治安も悪化するのが目に見えている。
「其方が言うことは分かるが、アレでも次期国王なのだ」
「そんな次期国王が治める国など戦争に負けて属領になるか、占領された方が民のためになるのでは」
マルクスまでアレ呼ばわりするほどの次期国王が治める国など早めに滅んだ良い気がした。
「戦争に負けたら街は略奪されるし、民は戦争奴隷になるぞ!」
「野蛮ですよね」
「ですよねって、孤児院の者たちも戦争奴隷にされるのだぞ!!」
「わたしが保護するのでそんなことにはなりませんよ」
孤児院に害する者は許さない。攻めてくる者を払いのけても良いし、飛空挺を作製してベリエ王国から離れても良いのだ。
「簡単に言うが、相手は軍勢だぞ?」
「その軍勢は冒険者ランクだと、どの程度なのですか」
「高くてもランクAだが軍勢だ。1人でどうにかある人数ではない」
なんの問題も無かった。その程度ならルマン大森林を消滅させた時のように大弓の一撃で殲滅可能だ。神話級の装備で身を固めたランクSの集団であってもサクラも居れば対処できる自身はある。だてに国家戦争をしていたわけではなのだ。
「一撃で消滅できますけど?」
「な…なんだと!? できるわけがない!!」
マルクスは目を剥けば、ダングルフが静かに口を開く。
「……可能じゃと思う。ルマン大森林を消滅させるだけの力を持っているのじゃ」
「バ…バカな!? それほどの力を保有していると言うのか!!」
「それだけではないのじゃ。消滅したルマン大森林を一夜にて再生もさせたのじゃ」
「……なんだと!?」
ルマン大森林を再生させたのはサクラが頑張っただけである。
「再生させたのはサクラですよ。わたしが再生させた場合は果樹園にしちゃいますから」
「おまえさんでも可能であることには変わりないのじゃ」
「サクラ嬢も冒険者ランクSなのか?」
「そうですよ。最も信用した冒険者仲間であり、宰相として頼りにしている部下でもあります」
長く付き合ってきた相棒である。再開してからの豹変ぶりには困惑するけどね。
「其方らが我が国に手を貸してくれれば、戦争はすぐ終わると思うのだが……」
「なんで、振られた腹いせの戦争に加担しないといけないのですか? 知りませんよ」
わたしとサクラが参戦したら、すぐ終わるだろう。しかし、わたしたちはベリエ王国の者ではない。
「それから回復薬ですが、中級は回収します。ダングルフさんが反逆者として扱われないように、マルクスさんが初級を持っていて下さいね」
話がそれてしまったが、このままだとダングルフさんが反逆者になってしまう。回復量の少ない初級は納品数も少なく推定在庫は20個もないだろう。半端な数では戦争では意味はないし、そもそも初級品だ。逆上されるかも知れないがマルクス頑張れ。
「……ダングルフよ、初級の在庫は何個あるのだ」
「……12個です……」
「其方よ、12個では我が責められてしまうぞ……」
「知りませんよ。数が足りないならご自身で作れば良いじゃないですか」
マルクスはなにか言おうとしても声にはならず、口をパクパクさせて、目を白黒させていた。
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