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第四十二話 ダンジョンの終着点

 扉を開けて中に入れば、「ご……ご主人さまぁぁぁぁ」と、そう叫びながら、艶やかな金髪をなびかせながら走ってくる女性。

 サキに抱きつけば、細長い耳を動かしている。


「ご主人様!! 鎧がじゃまで軟肌を堪能できませんのっ!!」


 良く分からないことを言いだした女性をわたしは知っている。しかし、理解できないことがあった。


「……なぜ、サクラがここに居るの?」


 大和連邦国の宰相を務めていたハイエルフのサクラ。そして、サキのフェローでNPCだ。


「なぜって、酷いですのっ。行方不明になられた、ご主人様を探していたんですのっ!!」

「ダンジョンの中で?」

「それは、あたしもわからないですのっ。」

「えっ?」


 サクラに聞けば、1年ほど前にわたしが行方不明になってから、世界中を探しまわっていたらしい。いくら探しても手掛かりすら見つからず、途方に暮れている時に強い光を浴びて意識を失い、目覚めたらダンジョンにたらしい。


「――それで、ご主人様の魔力を感じましたのっ。すぐさま駆けつけようと扉を開けてみれば、ダンジョンらしき所でしたのっ。行き違いにならないように、はやる気持ちを抑えながら留まっていたのですのっ」

「そうだったのね」

「ご褒美に、ご主人様の軟肌を堪能させてくださいのっ!!」


 …ご褒美?意味が分からないよ。


 サクラはこんな性格じゃなかった。仕事のできるクールな女性で、ゲームでは、農地に入り浸りすれば国家運営もするようにと、小言を言われていた。それに、可愛らしいピンク色のワンピースじゃなくて、宰相時はスーツを着ていた。


 サクラが余りにも懇願するので鎧を脱げば、鼻息を荒くしてわたしの胸に顔を埋めてくる。その仕草にゾワワッと、鳥肌が立つ。


「も…もう十分でしょ?」


 サクラはわたしの胸に顔を埋めたままイヤイヤと、顔を振るが強制的に引きはがす。


「あぅ……」


 サクラは物足りない顔をするが、確認しておきたい事がある。


「サクラに確認して欲しいことがあるのだけど」

「何ですのっ?」

「マップは表示できる? それと、エリア名は表示される?」

「今確認してみますのっ」


 サクラは何もない所を見つめている。それは、マップは他人からは見えないためだ。


「おかしいですのっ!? マーカーは表示するのに、エリア名だけじゃなく地形も表示されませんのっ!!」

「やっぱり、サクラもそうなのね」

「ご主人さまも!?」


 わたしは、サクラへこれまでの事を話した。

 ゲーム世界の分身として使用していたアバターであること。それから、前世で死亡したと思ったら、アバターの姿でこの世界に居たこと。そして、Another world onlineの世界、アヴェターラに似て非なる世界であると。


「分身を利用していたご主人様が本物となって……。アヴェターラに似て非なる世界でも、ストレージの中身はそのままだったと……」


 サクラが首を傾げながら口にすれば、わたしは頷く。


「何となくわかりましたのっ」


 サクラはそう言って、わたしに抱きついてくる。


「い…行き成り何ですか!?」

「ヴェヘヘ…。分身じゃなくて本物ですのっ」


 気持ち悪い笑い方をしたサクラを引き離して質問をする。


「えーと。ここは、死霊系の魔物が生息するダンジョンでね。ここまで来る間に、魔物が居なかったのだけど、何か知っている」

「先ほど話したとおり、目覚めたばかりなのであたしは分かりませんのっ」


 わたしは首を傾げては、思考する。

 サクラじゃなければ、教会騎士団を全滅させた魔物はどこに消えたのだろうかと。そして、わたしの全力攻撃を防いだ障壁を張った者は誰なんだどうと。


「ご主人様。何を考えていますのっ?」

「えっとね。このダンジョンを攻略しにきた教会騎士団が全滅したらしいのだけど、亡骸が無かったのと。ダンジョン攻略の指名依頼を受けたわたしが、ダンジョンごと破壊出来るほどの、全力攻撃しても障壁が張られたのよ」


 今いる部屋もただ広いだけであり、障壁を張るような魔道具もない。


「ダンジョンごと破壊しようとしたのですのっ!?」

「だって、死霊系の魔物が生息するダンジョンは臭いんだもん」

「だもんって…ご主人様は横着しすぎですのっ」


 サクラは呆れた顔でわたしを見る。


「うー。でも、そんなことがあったのに、障壁を張るような魔道具も無いんだよ?」

「確かに不思議ですのっ。でも、このダンジョンは神聖な魔力で満たされているので害意は感じられませんのっ」


 わたしには神聖な魔力を感じられないが、魔力感知に優れるハイエルフのサクラが言うならそうなのだろうと納得する。


「じゃぁ、魔物も居ないし、指名依頼を達成した事にして街へ帰ろうか」

「お供しますのっ」


 わたしはサクラと一緒に街へ帰宅すべく歩き出した。

読んでいただきありがとうございます。

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