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第四話 朽ちた孤児院

予約投稿してるのですが、二話目にてブックマーク登録や評価してくれた方々ありがとうございます。

励みになりました!

 孤児院の外観は、イギリス・ヴィクトリア朝の後期に設計されたもので、ゴシック様式を基調とした中世ヨーロッパの伝統が薫る建築デザインだが、壁には蔓が生い茂り、窓は割れていて内側から板がはられている状態だった。

 ゲームではプレイヤーの蘇生ポイントと設定されており、このような荒れ果てたものではなかった。


(神の像が置かれた教会をこんな状態にしておくなんて… 住民の信仰心どうなっているの!?)


 ムカムカする感情を抱かせるが、こんな気持ちで神様にあってはダメだ。落ちつけわたし、スーハースーハー、ヒッヒッフー、よし落ちついた、いざ神の御姿を見に孤児院の中へ。


「どうされましたか?」

 中に入るなり声を掛けてきたのは、継ぎ接ぎだらけの修道服を着た小柄だが均整のとれた体つきで、すらりとした背格好で茶眼のシスター。


「神様へお祈りを捧げにきました。神の像はどこでしょうか?」

「まぁまぁ、お祈りですか。神の像はこちらですよ」

 案内されながら回りを見渡せば、孤児院の中は隅々まで掃除が行き届いてキレイに清められていた。


「着きましたよ」


 目の前には、色とりどりのステンドグラスから差し込む光を背負った神の像は神々しく、貫頭衣姿で背中から一対の翼を生やしている女性像は笑みを浮かべているみたいだった。


 わたしは、神の像に跪ひざまずいて祈る体勢で神様へ感謝していることを伝える。


「神様、わたしの願いを叶えてくださり、ありがとうございます」

「まぁ、祈りが叶かなったのですか。喜ばしいことですね」

「はい、とてもできないようなことを叶えてくれました」

「そうですか。よかったですわね」

 わたしは心の中で再度、神様へ感謝を述べてから、立ち上がりシスターへ質問をなげかけた。


「…気になることがあるのですが、聞いてもよろしいですか?」

「なんでしょう?」

「…中は綺麗なのに、壁の蔓や、窓が修繕されていないのはどうしてですか?」

「神父様が亡くなってからは次の神父が召命されず、寄付も減りまして…子供たちへ食べさせていくのがやっとなのです」


 ああ、なんてことでしょう!現在も寄付している住民がいるとしても孤児院を維持できないなんて…

 わたしができることをしなくては!神様へ気持ちだけではなく行動でも示さなくては!

 よし、行動だ!


「わたしが蔓を取り払い、窓を修繕させていただいても良いですか?」

「…お気持ちはうれしいのですが…子供じゃ危ないですし大変ですよ」

「平気です。神の像がある孤児院を、そのままにはできませんから!」

 そういうなりわたしは外へ出る。


 建物を前にわたしは思い描く《建物を侵食している蔓だけを刈り取る真空の刃》、魔法が発動すると、壁に沿って真空波が生まれ、刈り取られた蔓がたまる。


 壁を調べてみれば風化してボロボロな石材を見て、わたしは思い描く《本来あるべき姿に戻れ。表面は磨かれ光沢ある姿へ》、魔法が発動すると、淡い光が建物を包みこみ治まれば光沢を帯びて輝いていた


(うん、神の像がある場所がくすんでいたらダメだよね!)


 わたしは、刈り取った蔓をストレージに収納しつつ、割れていた窓を修繕して回る。窓ガラスには、以前作った強化ガラス製の温室ハウスの残りを使用した。

 30分もしないうちに修繕作業を終えていた。わたしは宿屋を探しに帰ろうと思っていたところ、後ろからシスターの声が聞こえてきた。


「まぁまぁまぁ!こんなに光輝く壁の教会は今まで見たことないわ」

 振り返れば、目を見開いて驚いているシスター。


「えっと…修繕してみましたが問題ありましたか?」

「とんでもない!問題なんてありませんわ。さしたるお礼もできませんが、せめてお茶でも…」

 転生してから何も飲んで居なかったわたしは承諾してお茶をごちそうになる。


「今日はありがとうございました」

「いえ、神様への感謝の気持ちを行動でも示したかっただけですので…」

「そうですか…わたしも神へ感謝をしなくてはいけないですね…あっ、申し遅れましたが、シスターのマリアと申します」

「わたしの名前は、サキです。ところで、寄付が減ったとのことでしたが食費とかは大丈夫なのですか?」

 わたしは心配した。出された紅茶の味は薄く、ちゃんとした食事をとれているのか気になったのだ。


「子供たちが畑を耕しているので、なんとか…」

 マリアはそう言うけれど、絶対に足りてないのだろうな… 神の像を置いている教会を一人で守り続けているシスター。

 お金を渡すのは簡単だけど、わたしが街から出ていったあとはどうなる?元に戻っちゃうよね…


 そんなことを考えていたら、いきなり怒鳴り声が外から聞こえてきたと同時に、パリーンという音と共に、石が投げ込まれた。


「なかから出てこいやぁ。これ以上、窓を割られたくなければ早く出てこい!」


 ……窓を割った…神の像を置いてある教会に石を投げいれた…神様を冒涜した…


 プチッ


 わたしは神様を冒涜した者を下すべく外に出た。

 途中、背中越しにシスターが何か言っている気がしたが、聞きとれない。


「ガキが出てきても意味はねぇんだよ!シスターはどこだよ!!!」

 でっぷりした体格の男と厳つい男の2人が、出てきたわたしに訝しんでいた。

 わたしは男たちを睨みながら言い放つ。


「わたしは神の信者です! 教会の窓へ石を投げ込んだあなたは、神を冒涜していますね!!」

「はぁ?俺らが買いとった土地でガキどもが勝手に畑を耕しやがるから迷惑料を徴収しに来たんだよ」

「そうですか。土地の権利書を提示してもらえますか?」

「いいぜ。ほらよ」

 顔の前に突きだされた権利書の内容を確認する。


 [現権利者:ダリア][旧権利者:パーク][旧権利者が亡くなり権利権は失効][仲介人:ダングルフ]

 領主の印も捺印されていた。


「ダングルフとは冒険者ギルド長のことですか?」

「ガキがよく知っているな。土地仲介人は違法性を無くすために権力を持った立場の者がするんだよ」

「そうなのですか…わかりました。冒険者ギルドへ向かいましょう」

「はぁ!?いく必要なんかないだろうが」

「ありますよ。わたしが権利を買い取りますので」

 わたしは威圧するために、男たちの目の前に白熱した火球を生み出す。そのまま当てたかったが、根本的な解決にはならないと気持ちを抑える。



 わたしは、火球をみるなり大人しくなった男たちを引き連れて、冒険者ギルドにやってきた。


「ギルド長に話があるのだけど居ますか?」

 わたしの怒りが顔に表れてたのか、受付嬢は慌ただしく階段を駆け上り、ギルド長を呼びに向かう。

 息を切らしながらもすぐに戻ってきた受付嬢からギルド長の部屋まで案内された。


「そんな顔して、行き成りどうしたんじゃ?むっ、後ろの男たちが関係するのか?」

「関係ありますね。この男たちが所有する土地の権利書を買い取りに来ました」

「買い取るって何があった?経緯がわからんぞ」

 わたしは経緯を説明した。

 この男たちの所有する土地で孤児院の子供たちが畑を耕したことにより、迷惑料を徴収しに孤児院へ来たことを、そして神の像を置いている孤児院の窓を石で割ったことを。


「はぁ、おまえさんが怒っている理由がわかったのじゃ。よいじゃろう、権利は金貨5枚だ。」

 わたしはダングルフへ金貨7枚渡す。


「2枚多いのじゃ」

「えぇ、権利書を売ってくれて、もう関わりたくない男たちへの謝礼ですので、渡してください」

「ふむ、権利書を作るのでそのまま部屋の中で待っておるんじゃよ」

 ダングルフは部屋から出ていき一時間ほど経過すると戻ってきた。


「これが新しい権利書じゃ、領主の印もされておる」

 わたしは、権利書の内容を確認する。


 [現権利者:サキ][旧権利者:ダリア][現権利者が買いとり旧権利者の権利権は失効][仲介人:ダングルフ]

 領主の印も捺印されていることを確認し、ストレージへしまう。


「迅速な対応、助かりました」

「おまえさんの絡みならしょうがない事じゃ。」

「あと、孤児院への破壊行為を行った罪深い2名を連れて来たので処罰してください。」

「「あ?なんだって…」」

 言い切るまえにストレージから小刀2本取り出したわたしは、瞬時に男たちの首元へ突きつけた。


「わたしは処罰受ける覚悟で貴方たちを切り捨てても…」

「まて!待つのじゃ!!こちらで処罰するから、武器を納めてくれ!!!」

 ダングルフは切迫した声を上げてサキを制止する。わたしが武器を収納すると、男たちは崩れ落ちた。


「わかりました。神を冒涜した罪深き者たちへの処罰をお願いしますね」

「お前さんの手はわずわらせないのじゃ」



 こうして冒険者ギルドから出たわたしは、そのまま報告を兼ねて孤児院へ向かう。

 割られた窓を直さなくっちゃ!

読んでいただきありがとうございます。

ブクマ、評価をいただけるとすごくうれしいです。


次回、孤児院の子供たちが登場します。

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