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第三十六話 とある冒険者の実力 その2

 サキはストレージから弓矢を取り出して、フォレストウルフの頭に狙いをつけて矢を放っていく。


 ヒュン。ヒュヒュン。ビュン。


 ヘッドショットを受けた魔物はその場で崩れ落ちていく。

 フォレストウルフの殲滅を確認したところで傷だらけの、ニクラス、スヴェン、クラウスへ回復魔法を使う。


 わたしは思い描くは《細胞分裂を促し、肉体は癒される》魔法が発動すれば、眩い光が男たちの体を包み込み、光が消えれば傷跡は綺麗に消えている。


 傷が癒えた男たちの表情は暗く、落ち込んでいたが、サキは腕を組んで「群れ相手の戦闘には慣れていなかったのですか?」と、口にしてから戦闘の感想を述べる。


「二クラスさん、敵を引きつけてから丸くなるだけではなくて、攻撃にも参加して下さい。それから、スヴェンさん、目の前だけではなく回りにも注意しなければ囲まれて死角から攻撃を受けますよ。そして、クラウスさん、矢に限りがあるのなら弓の腕をもう少し上げましょう。それに、ダンジョンに挑むなら接近戦も鍛えましょう」


 感想を聞かされた男たちは深く項垂れる。


「それにくわえて、今の装備だと死霊系の魔物が生息するダンジョン攻略は出来ませんよ」


 わたしがそう言うなり、男たちは勢いよく顔を上げた。


「……死霊系の魔物には物理攻撃が効かないことは知っていますよね?」

「「「えっ!?」」」


 どうやら知らなかったらしいので、死霊系の魔物について説明する。


「死霊系の魔物の中には霊体も存在します。また、生息すると疑われているリッチも霊体です。それから、霊体には物理攻撃は効きません。だから、今の装備ではダメージを与えることができません。ダメージを与えるには、聖属性の魔法を使うか、武器に聖属性の魔法付与する必要があります。」


 クラウスが「それでは、俺たちでは、ダンジョン攻略は出来ないのですね」と言ったが、わたしは頭を横に振り否定する。


「あなたたちは、魔物の氾濫時に最後まで最前線で戦った実績があります。それから、武器に聖属性の、魔法付与すればダメージを与えることができます。そして、戦闘技術をダンジョン攻略まで特訓すれば良いのですよ」


 魔物の氾濫時では、騎士団よりも実力を持っていた冒険者たちだ。彼らが通用しないようでは、ダンジョン攻略することは難しいであろう。


「でもよ。魔法付与された武器なんて売っていないぜ」

「魔法付与された武器なんて、国宝級クラスだしな」

「残念ながら、俺たちの中では魔法を使える者はいません」


 わたしは、ダンジョン攻略を諦めた表情する男たちに溜息を吐いてから口を開く。


「魔法については、しょうがないですけど。魔法付与した武器が無ければ作製すれば良いじゃない」

「「「簡単に作製できるものじゃない!」」」


 男たちは、大声を上げて否定する。

 わたしは辺りに転がるフォレストウルフの死骸を指差しながら答える。


「そこに、材料が転がっているじゃないですか? 特別にわたしが作製しますよ」


 それを聞いた男たちは大喜びするが、クラウスが質問してくる。


「ですが、魔法付与していただく代金を持ち合わせていません……」


 わたしは黙考する。

 元々、お金を貰おうとは考えていなかった。魔法付与に必要な素材は目の前に転がっているからだ。それに、わたし抜きでダンジョン攻略が出来る者が欲しいのだ。しかし、無報酬で受けて作製依頼が舞い込むことは避けたい。


「わたしが提示する条件を呑むなら、特別に作製しますよ」

「「「どんな条件で!?」」」

「1つ目、わたしが魔法付与したことを他人に話すことを禁止します。2つ目、わたしの農地管理を一年間、週2回は手伝うこと。3つ目、今後、わたしに魔法付与を頼まないこと。以上、3つの約束を守れるなら魔法付与しますよ」

「「「約束します。お願いします!!」」」

「約束を破ったら……」


 わたしは具体的に言わなかった。なので、男たちに怯えられたけど、約束を破る可能性は下がっただろう。


 その後、男たちに魔物の解体をお願いして、解体した物をストレージに保管していく。

 全て解体し終えたら、魔法付与をするためにわたしの工房へ向かう。この場で施すことは可能だが、魔物が生息する所で無防備にさせられないからだ。




 工房に着けば、男たちは孤児院の外観の変わりようや温室ハウスを見て吃驚していたが、無視して工房へ案内する。


「じゃあ。各自の武器をこの机の上に置いて下さい」


 男たちは、言われるがまま机の上に武器を置いていく。置かれた武器を検分すれば、刃が掛けている所もあり、材質は鉄だった。


「刃が欠けているし、材質は何ですか?」

「ルマン大森林の魔物は固くて、どうしても刃は欠けてしまう。それと、鉄以外の材質を使った武器なんて売ってないぞ?」

「はぁ。そうなのですか」


 わたしが検分する限り、武器ランクEで見習いが作製したレベルだった。

 ゲームでは、始めたばかりの初心者が装備している程度だ。


 ……こんな低ランクに魔法付与したら不相応だよね。

読んでいただきありがとうございます。


【装備ランク】

 E量産級:見習いが作製したレベル

 D基本級:工房長が作製したレベル

 C名品級:名匠が作製したレベル

 B国宝級:名匠が作製した最高傑作レベル

 A伝説級:そのような性能に疑いを持たれるレベル

 S神話級:破格の性能を持つレベル

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