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第三十二話 お断りします!

「新しいダンジョンですか?」

「魔物の氾濫したルマン大森林で原因調査している時に発見されたのじゃ」


 ルマン大森林は、サキが覚醒した時にいた場所で、魔物のレベルは、50から60と中級レベルが生息している。


 ゲームでは、ダンジョンで生息する魔物は、地上よりレベルの高い魔物が生息する。

 そして、各種金属のゴレームが存在した。サキも素材確保しに通っていたので、ストレージには、潤沢な金属素材がある。


「冒険者たちは、喜びそうですね」

「そうでもないのじゃ」


 わたしは首を傾げてしまう。魔物が強くなればなるほど、素材の価値は上がり、魔石の品質も上位になるから、稼げるであろう。それなのにダングルフは否定したからだ。つまり別の問題が存在するのだろう。


「何か良くないことでもあるのですか?」

「死霊系の魔物が生息しているようじゃ」

「あー。死霊系が生息しているってことは、臭いが辛いですよね」


 死霊系が存在するダンジョンの空気は、肌にまとわりつくように湿り、腐敗臭が体に染み付くのだ。それなのに、採取可能な素材は魔石が殆どで、実の入りが乏しい。つまり、クエストなどで訪れる必要が無ければ立ち寄らない過疎地だった。


「そうじゃないのじゃよ。確定はしていないが、リッチが生息している可能性があるのじゃ」

「リッチと言えば、ランクAの魔物ですよね」


 ゲームでは、生前は強力な魔法使いと設定されていた。容姿はローブを纏った骨なのに霊体扱いのため、聖属性の魔法を付与しなければダメージを与えることができない。それに、HP半減する呪いを常時振り撒いているので、レベルが低いユーザは呪いを抵抗できずに帰り打ちにあっていた。


「そうなのじゃ。ところが、この街の冒険者でリッチ討伐出来る者は1人しかおらんのじゃ」

「へー。リッチ討伐出来る冒険者は居るのですね」


 わたしは感心しつつも、疑問を感じた。魔物の氾濫時に、そのような冒険者を見かけなかったから。


「おまえさんじゃよ」

「えっ。指名依頼されてもお断りしますよ」


 わたしは即座に拒否する。死霊系が生息するダンジョンは最悪の環境だからだ。そして、わたし自身がお化け系が苦手なのだ。つまり、精神衛生上よろしくない。


「な……。なんじゃと!?」


 依頼前に断られると思っていなかったのだろうか、ダングルフは愕然として顔色を変えた。


「じゃが、リッチでも討伐出来る冒険者はおまえさんだけなのじゃ!?」

「死霊系はお断りです! わたし以外の冒険者で討伐出来る者がいないのなら、貴族へ依頼するか、教会へ依頼してくださいよ!!」


 わたしは頭を横にいやいやと振りながら、要求を全力で撥ねつけた。


「2人ともどうしたの?」


 夕食の片づけ終えたカミアが声を掛けてきた。

 カミアの目には、ダングルフが顔を青ざめて項垂れており、サキが必死に頭を横に振っている姿がうつる。


 わたしはカミアに抱きつき説明する。


「ダングルフさんが、わたしが嫌がる指名依頼を出そうとしているの!!」


 カミアはサキの頭をぽふぽふとあやしながら言った。


「サキお姉ちゃんを苛めたらめっ、なの!」

「苛めてないのじゃ! 魔物の討伐依頼を頼もうとしているだけじゃ……」


 わたしは、カミアの胸に顔埋めながら「うぅー。死霊系は嫌なの」と呟きながら頭をぐりぐりと動かす。


「嫌がっているの!!」

「じゃが……。この街にいる冒険者で討伐出来る者は他に居ないのじゃ……」


 ダングルフが必死に頼みこもうとしているうちに、子供たちやマリアも戻って来た。

 現状を確認してきたので、カミアが説明する。


「ダングルフさんが、サキお姉ちゃんが嫌がる指名依頼するの」


 説明を聞いた子供たちは、サキを守るような配置についてダングルフを睨む。

 そんな様子を見たマリアさんが口を開く。


「このように嫌がっていますから、違う方へ指名依頼するようにお願いしますわ」

「……わかったのじゃ。諦めるのじゃ」


 孤児院の全員がわたしの側に着いたことで、ダングルフは諦めてくれた。わたしが顔を上げて振り向けば、ダングルフはがっくりと項垂れていた。

読んでいただきありがとうございます。

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