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第三十一話 夕食会

 アルテミスの食事処を創めてから2週間が過ぎた。

 子供たちは、午前中はサキと一緒に農地で畑を管理して、午後は食事処で働いている。

 食事処の売り上げは順調で、マリアが嬉しい悲鳴を上げており、サキは農地開発や孤児院の敷地内に工房を建設して、回復薬の作製などをしながら過ごしていた。


 冒険者ギルドで回復薬が販売されるなり、初級、中級で回復量は少ないものの、飛ぶように売れているようで、定期的に追加発注がくるのでボロ儲けさせて頂いている。




 今夜はダングルフが孤児院の料理を食べにくる予定になっている。

 もっと早めに来たかったらしいが、回復薬絡みで忙しくなり食事をとる時間が取れなかったらしい。


 日が暮れた頃には、子供たちが帰宅して入浴しに行く。

 ちなみに、わたしは先に入浴している。カミア、マリ、リアから拗ねられるけど、ゲルト、レオンと一緒に入浴するのは恥ずかしいので許してほしい。そろそろ、子供たちにも恥じらいを覚えて欲しいと切に願う。


 入浴を終えれば、全員で調理を開始する。

 既に担当は決まっていて、マリアはパンで、マリとリアがサラダで、ゲルトとレオンが肉料理で、カミアがデザートで、わたしは皆のお手伝いをする。


 出来上がった料理をテーブルに並べている時にダングルフが到着したので食堂まで案内する。ダングルフは温室ハウスや工房が新たに出来ていたことに吃驚していたが、料理の匂いを嗅ぐなり気持ちを切り替える。


 テーブルには、白パン、スパイシータンドリーリキン、エビと生ハムのマリネサラダが並べられている。デザートは、チョコバニラアイスなので食後までは冷蔵庫で冷やしている。


 全員が席に着けば、食事の祈りをする。孤児院で食事するなら覚えておいてくださいと、事前にダングルフへ伝えておいた。


「「「「天上におられる神のいつくしみに、御心に感謝と祈りを捧げ、この食事を頂きます」」」」


 食事するダングルフは見ていて楽しかった。

 わたしも満足できる味なので、ダングルフは口にしていくに連れて、驚いたり、高揚したりと、表情をころころ変えていたからだ。


 わたしは、ダングルフへ声を掛ける。


「ダングルフさん。お酒は飲まれますか?」


 わたしが掛けると、ダングルフの手は止まる。


「飲むのじゃ。しかし、孤児院にお酒など用意しているのか?」


 確かに、普通の孤児院ならお酒など用意しているはずはないが、わたしのストレージには各種酒類が備蓄されている。普段は飲まないが、仲間内でのお祝い事があれば振舞っていたのだ。


「今日の肉料理に合う酒を出しましょうか?」

「是非に頼むのじゃ」


 ダングルフは、これまで見たことが無い良い笑顔だった。

 ストレージからキンキンに冷えたジョッキとビール瓶を取り出し、ビール瓶の栓を開けてジョッキに注いでからダングルフへ渡す。


「ほうほう。良く冷えているのじゃ」


 ダングルフは一口飲めば、ゴクゴクと喉を鳴らしながら一気に飲み干した。


「プハー。これまた絶品なのじゃ!! これは何と言う酒なのじゃ?」

「わたしの国ではビールを呼ばれていましたが、エールですよ」


 ダングルフは首を傾げながら口にする。


「これがエールじゃと? エールはこんなに美味しくないのじゃ」

「そうですね。職人たちは、味の品質を保つのも大事でしたが、より美味しい物を作るために日々研究していましたからね」

「ふむふむ。おまえさんの国に訪れてみたいものじゃ」

「移動手段さえあれば、ご招待しますよ」


 大和連邦国が存在するかは不明だが、乗り物を作製して調査してみるのも良いかもと、頭の片隅に入れておく。


 ダングルフは「楽しみじゃ」と言いながら、ビールを美味しそうに飲む。そんな姿を見ていた子供たちから自分たちも飲みたいと、おねだりされる。けれど、子供にアルコールは成長を阻害するので、代わりの物をストレージから取り出す。


「成人前にお酒飲むと、体の成長に悪影響が出るから違うものね」


 シャンパングラスに、キンキンに冷やしたノンアルコールのスパーリングワインを注いでは皆に配っていく。


「シュワシュワするー!」

「お口の中でパチパチするよ!?」

「リンゴの爽やかな甘さがしますわ」


 初めて炭酸を口にした子供たちやマリアは、驚きながらも美味しいと喜んでくれた。


 テーブルに出された、料理を食べ終えればデザートの登場だ。

 アイスやチョコレートを初めて口にした、ダングルフはひとくちひとくち堪能しながら食べていく。


「美味だったのじゃ。これ程の料理は、この大陸では食べたこと無かったのじゃ」

「喜んで頂いてなりよりです。日々、皆が頑張っているので、レシピは増えて味も良くなっているのですよ」

「今までの味付けは塩のみで味気なかったので、楽しみが増えたのじゃ」

「街全体で食文化が発展できればと考えていますよ」


 食文化が発展すれば、わたしの知らない料理が作り出されていくはず。

 なにしろ、香辛料を組み合わせたり、分量を施行錯誤したりするだけでも味付けは増えていくからだ。


「ふむ。わしも美味しい料理が普及するのは喜ばしいことじゃ。」


 ダングルフも頷き同意する。


「それはそうと、新しいダンジョンが見つかったのじゃ」

読んでいただきありがとうございます。

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