第三話 いざ、冒険者ギルドへ
酒場のスペースに10人ほどの冒険者らしき者たちが干し肉を摘みに酒を飲みながらいるだけ。時間帯なのか窓口の方を見れば並んでいる人はいなかった。
「冒険者ギルドへようこそ。ご用件はなんでしょうか?」
窓口の方を見つめたとき声を掛けられる。声のした方を見れば、桃色の髪をツインテールにした可愛らしく笑みを浮かべる受付嬢だった。
「この魔板が衛兵さんに身分証と認識されなかったので再発行をお願いします。」
取り出した魔板を渡すと驚きの顔をしつつ席を立ち窓口奥の二階へ消えていくと、酒場の方から声が飛んでくる。
「お嬢ちゃんが冒険者だって?そんな小さな身体じゃ魔物の餌だろうが」
「まだまま幼いが見た目は良いな。ちょっとこっちでお酌しな」
「酒飲ませて拠点へ連れ込もうぜ!」
「お前ら余計な騒ぎを起こそうとするな!大きな依頼を完了したからって羽目を外しすぎだ」
(うへぇー、あの人たち大分酔っ払っているよ。漫画だとこんな展開もあったけど自分が遭遇するはめになるとはね…。ゲームだと容姿と実力は関係しなかったけど、この世界だと珍しいのかな?それにしても力作の容姿を褒めてくれるのは嬉しく感じるけど、連れ込むってなにする気よ!?)
と、考えながら呆れたような汚らしい者でも見る目つきで眺めていたら…
「なぁんだぁその目は!」
「ガキが痛い目に合わねぇとわからないみたいだな」
「クソが我慢できねぇーここでひんむいてやる」
「だーかーらー お前ら落ち着けよ!!」
今にも襲いかかってきそうな3人と、両手を広げ叫びながら止めようしている1人、そんな4人の様子を眺めていたら受付嬢が戻ってきた。
「ど…どうしたんですか?」
わたしへ男たちが襲いかかろうとしている様子に受付嬢が不安顔でわたしに尋ねるが…
「ただ、酔っ払いが騒いでいるだけだと思いますよ?」
わたしは我関せずという感じの態度をするが…
「このガキが我慢の限界だ!!」
「優しくしてりゃ付け上がりやがって!」
「へへへ…殺した後で楽しんでやるよ!」
沸点が低かったらしく、剣を抜いた3人が怒鳴りながら向かってくる。
えっ、なにを我慢してたの?優しくしてもらってないよ?あの男は倒してもいいよね?あっ確認しないとだね。
「襲われそうなのですが防衛すると処罰受けたりしますか?」
抜かれた剣は店売りレベルで身の危険は感じないけど、ギルド受付嬢へ確認する。ゲームの世界では国家間戦争だと対人戦は問題ないが、冒険者間では処罰対象だったからだ。神様が転生させてくれた世界で犯罪行為は冒したくないよ。
「冒険者間は処罰対象ですが、防衛する側は処罰されませんが…」
受付嬢が言い終える前に3人が同時にわたしに向かって剣を振るう。踏み込み速度も、剣を振り下ろしてくる速度も恐ろしく早いと思う。が、見えてしまえば回避は簡単だ。
わたしは優美で品位のある洗練された動きでクルクルと、ワンピースの裾をはためかせながら舞い踊るようにして回避しては、3人の首筋に手刀をあてていき気絶させた。が、1名は崩れ落ちる前に大事なところに魔法で空圧を放って壁まで吹き飛ばす。
少し乱れた髪に手櫛を通しながら整えていると後ろから声がしてきた。
「部屋に呼んでもこないから様子見に来たが、これは何じゃ?」
やりすぎた?と、顔をむければ受付嬢が狼狽えながらもやってきた男に経緯を説明している。
「ランクSへ喧嘩売るとは愚か者だろう…死ななかっただけでも感謝ものじゃ」
男は倒れている3人を蔑み果てたような眼つきで眺めていた。
「ああ君は魔板のことで話があるから、ギルド長室へ来てもらっても良いかな?」
わたしは承諾して男のあとをついて行った。
ギルド長室に入り着席を進められたわたしが座ると男が挨拶してくる。
「わしは、セラト街の冒険者ギルド長をしているダングルフじゃ。まずは、愚か者へ手加減したくれたことに感謝する」
ギルド長を名乗った渋い男は、見た目は初老くらいに見えるが、刺繍が施された高級なローブを着ているのに、強靭な筋肉を隠し切れていない。
わたしは3人のことは気にしてないことを告げた。
「それで魔板のことじゃが、どこで昇格されたのじゃ?」
「アレク王国の首都です。衛兵に見たことがない色と言われて入街税で銀貨3枚払いました。毎回払うのは嫌なので再発行してもらえませんか?」
わたしが持っていた魔板は使えなかったのだ。再登録が駄目なら新規発行でも良いと考えていたが。
「そうじゃろう…ランクSは知られているだけでも1名だけじゃ。この街の衛兵じゃ知らんだろう。衛兵にはわしから伝えておくので許しておくれ」
ギルド長は話しながら銀貨3枚渡してくる。
わたしは銀貨を受け取り気になったことを質問する。
「ランクSは少ないのですか?」
「少ないに決まっているじゃろう、国に1人じゃなく大国に1人いるかいないかわからないほどじゃ」
「……!?」
ストレージの中身は残ったままだし、転生したわたしはNPC扱いになっていると思ってた。だから、ランクSのユーザは大勢居ると思いこんでいた。
『Another world online』と変わらない世界。
アバターのステータスや所持品引き継いだまま…これって漫画で出てくるような転生特典なの!?
魔物を倒せば簡単にお金を得られる世界。農業しながら美味しい料理を食べる日々を過ごしながら平穏に一生過ごせる!?
(神様ありがとう!)
「いやふぅっ!神様ありがとう!!!」
「ど…どうしたんじゃ!?」
「すみません、神様に感謝したいことがありまして…はい…」
あっ…声に出してしまった。神様への感謝を抑えきれなかったのだからしょうがないよね。
「神様に感謝じゃと?まぁよいか、おまえさんにはこれも渡しておくのじゃ」
「この封筒はなんですか?」
「わしがおまいさんを冒険者ランクSと承認すると記したものじゃ、ランクSを知らない衛兵がいたら見せればよい」
「ありがとうございます!」
「なに、少しでも長くこの街に滞在して欲しい下心じゃよ」
歯を見せながらニカッと笑うダングルフに微笑み返しすわたし。
「考えておきますね。あと、街の地図を見せてもらうことはできます?」
「いいぞ、あと周辺地図も見せてやろう」
礼を言いながら渡された地図を確認すればマップに反映された。マップを確認しながら教会を探してみるが見当たらない。
神様へ感謝を伝えたいのに教会がないって何で? 教会は街には必ず存在する建物だったはずだけど?
「教会が見当たらないのですが…」
「教会?ああ、神父が亡くなってから代わりの者が付いておらず、今は孤児院じゃな」
「そうなのですか…」
ダングルフが指差した場所と同じ所をマップへ目印を付ける。
礼を告げて孤児院に向かうべく、立ち上がりドアへ進むが止められる
「ほれ、魔板を忘れておるのじゃ」
すっかり忘れていました魔板の存在…
テヘヘとごまかし笑顔で魔板を受け取り退出するわたしだった。
ギルドホールへ戻るなり声が掛かった。
「先ほどはわたしの仲間が迷惑をかけた。申し訳ない。」
「…あっ、気にしてないので良いですよ」
深く頭を下げながら詫びる男に告げる。気絶したままの3人のことなんてスッカリ忘れてしまっていた。
わたしは神様へ感謝を告げることで頭がいっぱいなのだ。
「これは詫びには足りないと思うが受け取ってくれないか?」
男から渡された革袋の中にはお金が入っていたが戻す。
「不要です。もし、気になれるのであれば、そのお金は孤児院へ寄付してください」
と、いうやいなや、わたしは孤児院めがけて掛け去っていく。
神様はどのようなお姿をしているのでしょう。
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現実だと自覚してたが、ユーザが存在しない『Another world online』と変わらない世界に特典を付きで転生したことを知る。
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