第二十七話 アルテミスの食事処 その2
遅めの昼食を食べ終えたわたし達は屋台を再開したが、先ほどより客数が少なく余裕が生まれたので、子供たちに全部の作業を行えるように作業内容を交替させながら営業していると、冒険者ギルドの制服を着た2人の女性がわたしの元へやって来た。
「はじめまして。従業員として働くパウラと申します。」
「はじめまして。同じく、デリアと申します。」
パウラは明るいオレンジ色の髪に茶眼で容貌はキレイなお姉さん。
デリアは薄め茶色の髪に黒眼で容貌は可愛らしいお姉さん。
2人とも胸は歩けば揺れるほど大きく、髪型はポニーテールだった。
「あれ。先ほど契約したばかりですけど?」
「見たところ客足が落ち着いている様子でしたから、仕事を教わりにきました」
「今日は教わる身ですので、賃金は頂きません」
そう言いながら2人は肉の方を見ている。
「とりあえず、販売する物を食べてみますか?」
「教わる身でそのような……」
「良いのですか!? 実はギルド内まで香りが漂ってくるから仕事に集中できなかったのですよー」
パウラは申し訳なさそうにするが、デリアは満面の笑みで飛び跳ねれば、目の前で、たわわな実は激しく上下に動く。
デリアが落ち着くまで待ってから、子供たちへパウラとデリアを紹介する。
わたしとダングルフとの話を聞いていた子供たちは、2人をすんなりと受け入れる。
互いの自己紹介がすんだところで、わたしは串に刺したステーキを渡す。
「大銅貨2枚するだけあって、美味しい肉ですわね」
「こんな味付けされた肉なんて初めてですー」
パウラとデリアは頬に手を当てながら、ひとくちひとくち、噛みしめながら食べている。
食べ終えた2人は串を名残惜しそうに眺めていた。
わたしは手をパンパンと軽く叩いて、研修をはじめる。
内容は調理に販売と混んだ際の行列整理だけである。
ギルド職員なので、販売をスキップして行列整理をマリとリアにお願いして、わたしは調理方法をゲルトとレオンと一緒になって教える。
行列整理を教わったパウラとデリアがわたしの元へ来たので、ゲルトとレオンが調理している様子を見せながらわたしは言葉で説明していく。
説明を終えたら調理実習を開始する。
ストレージから下ごしらえをしていない肉の塊を取り出すと2人して驚くも、わたしが冒険者ランクSと聞かされていたのか、すぐに落ち着くが。
「この包丁の切れ味はなんですか!?」
「すごいよ。この包丁!! 抵抗もなくスパスパ切れていくよー」
包丁を使うなり、パウラは目を見開いてわたしを見つめ、デリアは包丁を興味深く観察している。
「刃部分にアダマンチウムを使用した普通の包丁ですよ? あ。切れ味を増すために魔法付与もしていますけどね」
なぜか2人とも絶句して固まるが、わたしは手をパンパンと叩いて作業開始を促す。
「はいはい。手が止まっていますよ」
「希少金属を包丁に使うだけじゃなく。魔法付与までしているのですか!?」
「流石。冒険者ランクS様だねー。でもさ、この包丁でも切れないまな板のも凄くない?」
デリアの指摘でパウラはまな板を見つめながら、わたしへ質問してくる。
「サキさん。まな板も普通の物ではないですよね?」
「まな板ですか?表面にダリウムをコーティングして、滅菌する魔法付与をしているだけですけど?」
まな板には包丁に負けないように、より強靭な金属を使用してある。
ちなみに、ゲームでは普通に普及していた物である。
「調理器具なのに、そこらの武具よりも高性能すぎるよー」
「この包丁を武器にして、まな板を盾にしたら……」
わたしは、パウラが言った姿を想像してみては苦笑いをする。
「わたしの故郷では、普通に普及していましたよ」
パウラとデリアに驚かれるが、ゲームだと調理人は素材に合わせて複数の包丁を使いこなしていたし、わたしも複数所持している。
そして、屋台で使っている調理器具は満足できる物が出来上がるまでに大量作製した物である。
2人は「サキさんは、冒険者ランクSだもんね」で、納得するなり調理を進める。
家で自炊をしているらしく、2人とも手際よく調理していき販売しても問題ないレベルだった。
調理実習を終える頃には、街の外へ稼ぎに行っていた冒険者たちが帰ってきた。
「おう。良い匂いがするな!」
「嬢ちゃん。4本くれ」
「俺は2本だ」
屋台から漂う香りに導かれるように、周辺に冒険者が集まって来たので、パウラとデリアにも手伝ってもらい、行列整理する。
体を動かし、稼ぎも良い冒険者は1人で複数買っていくので、屋台を2台にしたのに追い付かない状況だ。気が付けば、酒のつまみにと再び行列に並んでいる者もいた。
……保温する魔道具も作製するか。
これ以上、屋台を増やしても人員は割けないから、落ち着いている時間帯に作り置きをしておこうと考えた。
日が暮れる頃、客足は途絶えてなかったけど閉店する。
子供たちを夜まで働かせる気はないからだ。
わたしは、冒険者たちの名残惜しい声を聞いて、明日中に保温具を作成しようと心に決める。
孤児院に着いてから入浴と夕食を済ませた子供たちは疲れもあってすぐに寝てしまった。
わたしは、マリアさんへ本日の売り上げが入れておいた、ジャリンジャリンと音がなる革袋を手渡す。
マリアは革袋の中身を確認するなり慌てだす。
「まあまあ。こんなに沢山稼げたのですか!?」
革袋の中には、5290個売れたので大銅貨が10580枚入っている。
日本円にしたら1千万越えだが、ニーズヘッグを討伐した時に4億円相当の報酬を貰ったわたしの金銭感覚はマヒしていた。
「初日でしたし。販売しているのが1品だけですから、しばらくすれば落ち着きますよ」
「それはそうとしても、このような大金を孤児院で保管しておくのは不安ですわ」
……確かに1千万相当をタンス貯金するのは怖いよね。
「そうですね。ひとまずはわたしが保管しておくので、明日にでもダングルフさんに預金管理ができる魔道具を貰えるか相談してみましょう」
マリアは、そのような魔道具の存在を知らなかったので、わたしがダングルフから貰った魔道具を見せながら説明した。
「明日はわたしも、冒険者ギルドまで一緒にいきますわ」
「では明日は一緒に行きましょう。あとですね――」
マリアが冒険者ギルドまで一緒に行くと言ったので、わたしは、ダングルフが言っていた事を伝える。
「わたしとしては、1人分増えるくらいなら問題ないですわ。それに、食材を提供して貰っているのでサキさんが良ければですが」
……ダングルフさん良かったね。すんなり許可貰えたよ。
「わたしとしても、ダングルフさんには良くして頂いているので反対はしませんよ」
その後、魔道具の相談もあることなので少し早めに出発すると決めてから、わたしは部屋へ戻り眠りに着く。
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