第二十一話 魔法覚醒
カミアが泣きやんだタイミングで子供たちが帰って来た。子供たちは、カミアが目覚めたことで喜んだあと、鼻をくんくんしながら部屋中に充満したバニラの匂いについて質問してきた。
「なんだ、この匂い?」
「「知らない匂い」」
「だが、この匂いは嫌いじゃないぞ」
「……?」
カミアは首を傾けている。無意識でかぶりついたために分からないようだ。
「バニラクレープの匂いだよ。カミアはかぶりついたけど覚えてないかな?」
「僕も食べたい!」
「俺も、俺も!」
「サキお姉さん、わたし達の分は?」
「わたし達も食べたい!」
「……」
子供たちの食べたい、食べたいと騒ぐ中、カミアは上目づかいでわたしの裾を軽く引っ張ってくる。
「じゃあ。夕飯のデザートで作ってあげるね」
わたしが、笑みを浮かべながら作ると言ったところで子供たちは落ちつくが、デザートって言葉を知らなくて質問された。
「んー。デザートと言うのはね。食事の後に食べられる果物や菓子のことだよ」
日常的な食事で不足すると考えられるビタミン類などの栄養の補助的な意味合いもあるが、甘く風味の良い菓子類で食後の満足感をより強めるものだ。子供たちに説明しても理解することは難しいと思い詳細まで言わなかった。
果物や菓子と聞くと子供たちはまた騒ぎ出す。
「俺、聞いたことあるぞ。菓子って、貴族様が食べるものだって!」
「僕たちも貴族様と同じものが食べられる!?」
「サキお姉さんは何者!?」「サキお姉さんは料理人?」
「サキお姉ちゃんは、サキお姉ちゃんだよ?」
リアが料理人と、口に出したところで魔物の群れを殲滅した時の話題に変わった。
「いや、魔物を瞬殺できる凄腕の冒険者だって」
「冒険者ギルド長が指名依頼したって聞いたぞ」
「あのときは、凄い魔法を使っていたよ」
「うんうん。雷を操っていたよ!」
「カミアを魔法で綺麗にしたと思えば怪我まで癒したよな」
「僕、回復魔法を使える人始めてみたぞ」
「サキお姉さんは湯船の湯を温めたり、髪も魔法で乾かしていたよ」
「サキお姉さんは、やはり魔法使い」
「サキお姉ちゃんは、サキお姉ちゃんだよ!?」
わたしはカミアの頭を撫でてから、手をパンパンと鳴らして「わたしは、普通の冒険者です。それよりも夕飯のお手伝いしに行きましょう」と、切り上げたが、カミア以外は、サキお姉さんみたいな冒険者は居ないと口を揃えて言われた。
着替え終わったら厨房へ皆集まる。子供たちで出店を切り盛りするので、料理練習を兼ねてマリアさんのお手伝いをする。子供たちは料理の手伝いを進んでやってくれる。
食材に関しては、畑の作物がまだ収穫できないので、わたしが提供したものである。品種改良の途中であるが、なかなか美味しい。
肉類は魔物の氾濫時に狩った魔物で、色は薄ピンク色つやもあり、サシは綺麗に入って甘みもあり、驚くほどジューシーだ。
ゲルトとレオンは、食事で肉を食べられることに大喜びし、マリとリアはサラダのドレッシングに興味を持ったらしく、2人して施行錯誤している。カミアは菓子作りが気になるのか、わたしの手伝いをしてくれていた。
わたしがノンホモ牛乳の上澄み液から生クリームを作っている間に、カミアは真剣な顔でクレープ生地を焼いてくれている。一度、お手本を見せただけなのに、生地を破かずに焼きあげていく姿を見ながら、料理の才能があるのかもしれないなと思う。
「アッツ」
突如、レオンは痛みが走った声を上げる。
そちらへ振り向けば、スキレットに腕をかすめ、軽い火傷ができていた。
……うーん。長めのトングを作製した方が良さそうね。
わたしは、魔法で治してあげる前に、今後の対策について考えていた。
「レオンお兄ちゃん!」
カミアは声を出しながらレオンの元へと駆け寄り、「痛いの痛いの飛んでけー」と、呟けば火傷の部分が淡く光り出し、たちまちに癒す。
子供たちは目を丸くしてカミアを見つめる。氷を持ってくるのに回復魔法を見てないマリアは火傷が治っていることに首を傾げていた。
「「「「ど。どういうこと!?」」」」
自身でも分からないカミアは、助けを求めるような眼差しでわたしを見つめるが、正直わたしにも分からないよ。
「……サキお姉ちゃん……」
「うん。わたしにも分からないよ。だけど、魔法を使えると便利だよね」
「「「「「……」」」」」
なぜか、子供たちから呆気にとられた眼差しを向けられて、しょんぼりと肩を落とした。
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