第二話 ゲームなんかじゃない
わたしはこの世界の情報を少しでも欲しくて、マップを見ながら沢山の人が表示されている場所へ歩いていると、マップに赤色が接近してきていた。
「ゲームだと赤は魔物、黄は犯罪者、青は人間で表示されるから魔物かな?」
わたしは冷静だった、ゲームしてるように戦闘に対する恐怖や躊躇といったものは存在していない、ステータスはカンスト、装備は神話級、いきなり死亡すると思ってないから。
姿を現したのは体長1m程の狼の群れ、表示された魔物ネームはフォレストウルフ、レベル50で冒険者ランクBのパーティなら対処できる魔物だが、わたしのレベルは99、単独でも乱獲できる。
「「「グルルルゥ」」」
わたしを食べようと威嚇しながら近寄ってくる。が、わたしは思い描くは(無数の風刃、敵を切り刻め)、魔法が発動すれば無数の風刃が狼の群れに襲いかかる。が、切り刻めば、首が跳ね跳んだり…お腹から内臓がでたり…と狼の血肉が散乱した。
「……ひぅ…うっ…うぅぅっ…」
目の前に広がる惨たらしい光景に力が抜けてその場にへたりこむ。わたしは全身に鳥肌がたって、喉の奥からすっぱいものがせり上がってきて口元を押さえている。
わたしは思い違いしていた、ゲームだと身体的な損害を受けた断面が光るだけだった。
「ゲームなんかじゃない、生きている…現実なんだ」
わたしはこの世界で生きていくために魔物の剥ぎ取りをしている。革を剥ぎ取る感触、触れれば肉の感触、血肉の匂い、心臓部分には魔石があった。
「……ひぐぅ…うぇっ…むぐぅ…あっ魔石」
剥ぎ取り終えて素材と肉をストレージに収納し、内臓を焼却しようとしているとマップで赤表示が…
「もう!落ちつかせてよね!!」
姿を現したのは体長1m未満の猪、表示された魔物ネームはフォレストボアー、レベル30でフォレストウルフより格下だ。
遭遇するなり猪がわたし向かって猛烈な突進して目の前に迫る。わたしはストレージから両手刀を取り出し、迫る猪に向かって跳びはね擦れ違いさまで首を斬り飛ばせば、音もなく猪の頭と体が斬り離される。
「……うぐぅ…早く慣れないとだよね…あっボアーも心臓に魔石がある」
魔物の剥ぎ取りと素材回収がすんだわたしは、臓器を一纏めにして燃やしてからマップを見ながら歩きだす。
道中魔物に襲われつつも撃退して剥ぎ取りにも慣れてきたころ、街らしい外壁が見えてきた。
外門に近づけば列ができており、冒険者や商人と思われる者達の後ろに並び自分の順番になるのを待っていた。
「嬢ちゃん一人だけか?親御さんはどうした?」
わたしの順番になると、簡素な革鎧と腰に剣を下げた、若い衛兵に不審そうな顔をされながら声を掛けられる。
「一人ですよ、両親はすでに亡くなっています。」
わたしは頷きながら返答した。実際に一人だし、前世でも幼いうちに両親を亡くしているから嘘はついていないよ。
「…よけいなことを聞いて悪かった。身分証はあるか?」
後悔した表情で身分証の提示を求められたわたしは、見た目がドッグタグの虹色に輝く魔板を見せるが…
「魔板ってことは冒険者か? でもこんな色は見たことないぞ? 偽物ではないと思うが念のため入街税として銀貨3枚払うように」
冒険者は入街税を取られないが、わたしの魔板を認められなかった、一般扱いとして徴収された事に不服だったけど、申し立てても街へ入れないだけだし銀貨3枚渡す…
「すみません、冒険者ギルドはどこにありますか?」
魔板の再発行してもらうためだ。お金の心配はしてないが入街税を毎回払う気にはなれない。
「ああ、門から続く道にあるからすぐわかるぞ」
場所を教えてもらったわたしは衛兵にお礼をいい、冒険者ギルドへ向かう。
街にはいると、広い道路には荷馬車が行き交っていて、沢山の人が往来している。わたしは見慣れない街並を、きょろきょろしながら歩いていた。
1分も歩いていないあいだに冒険者ギルドの看板を見つけて建物の中に入る。
リアルな仮想世界ゆえにゲーム感覚が抜けてなかった様子