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初恋は実らせない

作者: みりぐらむ
掲載日:2017/01/26

二つ上の幼馴染が社交界デビューするって王都へ引っ越していった。

約束したことはキレイさっぱり忘れちゃったんだろうなぁ。

悲しいとか寂しいとかそんなものを通り越して呆れちゃった。

そりゃね、私は平々凡々な容姿だって自覚してるし、平民だっていうのもあるし。

王都で開かれる夜会に出るなんてさ、一生ないわけで………仕方ないんだなって思った。

っていうか、幼馴染が貴族だってことすら知らなかったんだけどね!




ここは、イルシュタッド王国の北西に位置する田舎町ルーイルト。

王都へは馬車で半日ってくらいの距離にあるのに、大きな森はあったり海があったり牧草地帯が広がっていたりと自然があふれてる。

田舎町で暮らしている私の名前は、ユルレイア・シュルール、14歳、薬屋の看板娘やってます。

採集、販売、時々調合をして、日々生活をしています。

採集と販売は小さな頃からやっているので、お父さんから太鼓判もらってます。

調合はまだまだ難しくって、父がいないと作らせてもらえません。


そんな私ですが、つい先日失恋しました。


いつも採集している森の近くに住んでいた幼馴染のレオンのことがずっと好きだったんだけど、16歳になった途端、社交界デビューすることになって王都へ引っ越していった。

もともと王都に住んでたんだけど、体が弱いからってこっちルーイルトに住んでるっていうのは聞いてた。

でも、お貴族様だっていうのは聞かされていなかった。

そう、聞いてなかったのよ!私、騙されていたのよ!!

出会ってすぐ…私が7歳くらいの時に、大きくなったらぼくのお嫁さんになってねって言ってたのよ。

私は平均的な顔立ちっていうやつらしくって、髪も目も茶色でこれといった特徴もない。

レオンはキラキラした金色の髪にすごく濃い紫色の瞳、色は白くって、初めて見た時は女の子だと思ってた。すっごくすっごく整ってて可愛い顔だった。

絶対不釣り合いだなって、最初のうちは断ってたんだけどね。

会うたびに言われるうちに、うんって頷いちゃったんだ。

だから、将来、レオンのお嫁さんになるって信じてたのにさ。

平民と貴族じゃ結婚なんてできないじゃない。貴族って基本的に政略結婚でしょう?

それくらい、平民の私だって知ってるよ!

言ってくれれば、もっと早くに諦めていたのに………たぶん、きっと。


ぽっかりと穴が開いたような泥水飲まされたみたいなぐちゃぐちゃな気分で毎日過ごしてた。

そんな気分でも、生活はしなくちゃいけないし、いつものように採集したり調合したり販売したり、早く忘れられるようにって思いながら頑張ってた。

1年たってようやく、レオンのことはちゃんと諦められたんだ。



-+*+-+*+-



「ユルレイア!明日休みだろ?一緒に海行かない?」


これは漁師の息子のマーク。4つ上で今年19歳。

小麦色に焼けた肌と赤茶色の髪が目印、少し天然かなぁ。


「いや、ユルレイアは俺と一緒にうさぎをとりに行こう?」


これは猟師の息子のカナック。3つ上で今年18歳。

黒髪に黒目で、弓を構えている時の真剣な表情はかっこいい。


「隣町で小さなバザーがあるから、一緒にどう?」


これは金貸し屋の息子のカイン。5つ上で今年20歳。

くすんだ金髪に灰色の目、クールな印象のわりに優しい。


レインがいなくなってから、なぜか急にモテ期入りました………。

同年代の女子は私以外にもいるんだけど、なぜか3人とも私と遊びたがる。

3人とも見た目は悪くない。たぶん、中身も悪くない。

問題は、3人とも跡取り息子なんだよねぇ。

薬屋ウチって一応、先祖代々薬屋やっててさ、私ってば一人娘なんだ。

このままだとお婿さんもらわなきゃなんだよねぇ。

そう考えると、3人ともナシなんだよね。だから、友達以上にはなれない。

そこんところ、わかってるはずなのに私と遊びたがる。


ただの遊びはいいけど、体はあげられないよ。


「明日はお店は休みなんだけど、お父さんの手伝いで王都へ行くんだ。ごめんね」


そう言って、断ると3人とも肩を落として帰っていった。

今までにも何度かお父さんと一緒に王都へは行ってる。

この辺でしか採れない珍しい薬草があって、時々それ持ってきてって依頼がくるんだ。

それの納品と新しい調合法が出てないかの確認で、医術会ってとこへ顔出しするんだ。

私は今年、15歳になった。成人したから、積極的に医術会へ行って技術を盗んでこなきゃ~なんだって。

どんな場所でも向上心は大事ってことらしい。



-+*+-+*+-



翌日早朝、一日2便の馬車に乗って、王都へ向かった。

途中の町で他のお客さんも拾って、お昼前くらいについた。

お父さんはまずは腹ごしらえだって、王都の屋台街で昼食を食べた。

クックの串焼きがおいしくって、家でも真似てみようかなぁなんて思った。

お昼終わりの鐘が鳴ったので、クラヴィス伯爵の屋敷へと向かった。


ちょっと、タイミング悪かったみたい。

今日はクラヴィス伯爵主催の夜会の日だったんだって!

いつもは表から入って玄関通って、応接室まで案内されるんだけど、今回は裏口で屋敷にも入れず待たされた。

応接室には、貴族の偉い人が到着の挨拶をひっきりなしにしてるみたいで、通せないんだって。


「せめて厨房でもいいから、屋敷の中へ入りたいなぁ」

「厨房は料理の準備で忙しい時間だから、邪魔になるから仕方ないよ」

「日を改めた方がいいんじゃない?」

「夜会は夜遅くまでやるから、明日の早朝行っても伯爵は寝ているよ」


どうにもならないなぁって思いながら、裏口近くの木の根元寄りかかって立っていた。

時間かかるだろうということで、お父さんは私を残して先に医術会へ挨拶しに行った。

どれくらい経ったかなぁ………3時間は経ったかなぁ………。忘れられてる気がする。

立ってるのもつらくなって、木の根元に座り込んでた。

ぼーっとしていたら、玄関のほうがすごく騒がしくなった。

ちょっと興味が湧いたから、回り込んでそーっと玄関のほうを見てみたら………。


そこには綺麗な女性をエスコートした幼馴染レオンがいたんだ。

あああ!見なきゃよかった!


遠目から見ても、レオンはキリッとした態度で馬車から降りる綺麗な女性の手を取っていた。

こちらからレオンの顔は見えないけれど、綺麗な女性が頬を染めて嬉しそうにしているのは見える。

胸がぎゅっと痛くなった。

黒い染みができるような感覚があった。

吹っ切れたはずなんだけどなぁ…本物見ちゃったら、思い出しちゃっても仕方ないよね。

7年近く好きだったんだもん。


そーっと裏口へ戻った。程なくしてお父さんも戻ってきて、レオンがいたよーはははーなんて言ったら、変な顔をされた。



すっかり忘れられてると思ってたけど、クラヴィス伯爵は裏口から応接室へ案内してくれて、薬草の取引をしっかりやってくれた。

ついでに、表から迎えられなくて、待たせてしまって、すまないって謝罪までしてくれた。

貴族だけど、すごくいい人でよかった。



-+*+-+*+-



取引が終わったのは日が暮れそうな時間だった。

もともとの予定通り、宿屋に一泊して明日の早朝便で帰る。

夕ご飯は宿屋で食べて、私はすぐに部屋に籠った。

お父さんは買い物があるからって出かけていった。


目を閉じると、さっきのレオンの姿を思い出してしまう。

1年ぶりに見たレオンは背も伸びたのかな、すごく大人に見えた。

はっきりと顔は見えてなかったのに、レオンだってわかっちゃったしなぁ。

吹っ切れたつもり………だったんだけどなぁ。

………お嫁さんにしてくれるんじゃなかったの。

平凡な私より、綺麗な女性のほうがいいよね。

平民の私より、貴族の女性のほうがいいよね。

両想いだと思ってたんだけどなぁ。


だんだん泣けてきた。



ドンドンドン


扉を叩く音でハッとした。

お父さんが帰ってきたんだと思って、確認もせずに開けたら、驚いた。

黒いローブを羽織ったレオンが立ってた。

レオンはすぐさま、中へ入り扉を閉めた。

私は口をぱくぱくさせたまま、レオンの顔から目が離せなかった。

なんでここにいるのとか、どうして場所がわかったのとか、いろいろ聞きたいはずなのに言葉が出てこない。


「さっきクラヴィス伯爵邸の応接室に案内されてるレイアが見えたんだ」


レオンは視線を合わせたまま、真剣な眼差しでそう言った。

言葉が出てこない私は頭をコクコクと上下に振った。


「レイアを見たら、もう我慢できなくなって、追いかけてきちゃった」


にへらぁとレオンが笑った。

うわ、何その顔!満面の笑みってやつですか!すごく心臓に悪いんだけど。


「………レオン、なんでここにきたの?」


やっと出てきた言葉がこれって情けないけど、いっぱいいっぱいすぎて出てこなかった。


「レイアに会いたかったからだよ。ずっと会いたかった」


レオンは一歩進んで、私の両手を掴んだ。


「私も会いたかったけどさ………」

「約束覚えてる?」


―大きくなったらぼくのお嫁さんになってね


「………どんな約束?」


いや、ダメでしょ。平民と貴族なんだから。私は騙されていたんだから。忘れなくちゃダメなんだ。


「思い出させてあげる」


レオンはそう言うと、掴んでいた両手を引っ張って強引で私のことを抱きしめた。

突然のことで驚いていると、私の頭にキスを次は額に、そして鼻の頭に………。

顔がどんどん赤くなっていくのがわかる。熱い!

恥ずかしくなって、目を閉じると耳元で囁かれた。


「ぼくのお嫁さんになって」


立っているのが限界だった。ずるずるとしゃがみそうになったのに、そのまま抱きかかえて、ベッドに座らされた。

目を開けると目の前には頬を染めたレオンがいて、ふいっと顔をそらせば、両手でがしっと抑えられた。

目を泳がせても、目が合うように動いてくる。

我慢できなくなって、目をぎゅっと閉じたら、唇に温かいものが軽く触れた。


「ダメだよ、目を閉じたら、ぼくだって我慢できないよ」


仕方なく目を開けるといたずらっ子みたいな笑みを浮かべたレオンが、目の前で………。


「返事は?」

「無理!!!」

「どうして?」

薬屋ウチにはお婿さんが必要だから!」


レオンはくすくす笑いながら、私の肩に頭を乗せた。


「それ、クリアできたらいいよね?」


レオンの唇が耳たぶに触れる。心臓壊れるんじゃないかってくらい、バクバクいってる。


「いいよね?」


もう、上下に頷くしかなかった。



-+*+-+*+-



そんな出来事があってから、さらに1年が経った。

あれってなんだったのかなぁ………どうしたらいいのかなぁ………。なんて考えていたら、あっという間だった。


カランカラン


薬屋の扉が開いた音がした。


「いらっしゃいませ~」


いつものように言って、入ってきた人を見るとそこにはレオンが立っていた。


「お待たせ!貴族辞めてきたから、ぼくをお婿さんにしてくれる?」

「ええええ!?」


貴族ってそんな簡単に辞められるものだったかなぁとか、お嫁さんじゃなくてお婿さんになってるなぁとか思ったけど、まぁいっか。


「そんな簡単にお婿さんにはできないよー。今は、マークとカナックとカインに声かけられてるしねー」

「………え?」


一応、こんな平凡な私にも声を掛けてくれる人くらいはいるんだよー?

ってことは、まったく考えてなかったんだろうなぁ。

レオンの顔色がどんどん悪くなっていってる。


「も、もう恋人がいるのか?ぼくのことはどうでもいいのか?」


だんだんと情けない顔になってってるけど、それはそれでいいかも。

ニヤニヤしながら、言ってやった。


「一度吹っ切れた後だし、もう一度口説くところからスタートねぇ」


初恋は終わって、二度目の恋になるのかな。同じ人でも。

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