優しい朝〜Break Time〜
穏やかで暖かくて安心できる朝
私は死神さんにしがみついたまま眠っていたようです。
その死神さんはまだ眠っていました。
私は自分の手を見て少し怖くなりました。
いったいこの手で何人の人を殺してきたのでしょうか?
私はこの罪悪感と後悔からは永遠に逃げることはできないでしょう。
すると手をそっと死神さんが握ってくれました
「起きていたのですか?」
私は驚いて死神さんを見た
「今起きたの…手の傷はもう大丈夫なはずだけれど、まだ痛む?」
死神さんは私にそう心配そうに尋ねました。
「大丈夫です…でもこの手には消せない傷もありますから。」
私は死神さんにそう答えると死神さんは少しだけ笑いました。
「真面目な子なのねアリス。」
私はプクーっと頬を膨らまして少しだけ怒ったように見せました。
「あら…怒らせるつもりはなかったのだけれど…ごめんなさいね。」
死神さんはすぐに謝ると私の様子を見ていました。
「…たいして怒ってはいませんよ。」
私に死神さんにそう言ってあげました。
「よかったぁ…そうそうアリス、もしあなたに罪悪感や後悔があるなら、それを忘れないでね。」
死神さんは安心したように肩をなでおろすと、私にそう言いました。
「…そうですね、私は人殺しでした。」
私はその冷たい物を思い出しました。
「そうね…でもその罪悪感と後悔を背負って生きていくの、今まで奪ってきた命を忘れないためにも…そしてこれからはその命のためにたくさんの人を助けてあげてね、それがきっとアリスのためにもなると思うの。」
死神さんは私にそう教えてくれました。
「死神さんは人を殺めたことがあるのですか?」
私は妙に説得力のある言葉から生まれた1つの疑問を投げかけてみた。
「ふふ…私の仕事は何でしょうか?」
死神さんは私に疑問で返しました。
「……死神。」
私はそのまま答えました。
「そう正解です。 正式には白死神なんだけれど…同じようなものね。」
死神さんは私にそう言うと続けて
「白死神の仕事なんて一瞬のミスがそのまま即死になっちゃうから…私も仕事をして間もない頃は何度も失敗した、だから私もアリスと同じくらいにたくさんの人を殺しているわ。」
と話してくれた。
「そうでしたか…辛いことを思い出させてしまいましたね。」
私がそう死神さんに言うと死神さんは少しだけ考えて
「うーん…確かに辛いかもしれないけれど、そんな失敗とか後悔とかがあるから次は同じ失敗を繰り返さないようにしようって思えるようになったのよ。」
死神さんはとても強い人でした。
私は今でも罪悪感に飲まれておかしくなりそうでした。
「私にはできないかもしれません。」
手足が震え、体が急に重たくなり、呼吸がうまく出来なくなり、落ち着こうとしても落ち着くことはできず、視界がグニャンと歪んで見えました。
「誰だって一人では立ち上がれないわ。」
死神さんはそう言って私の体を支えてくれました。
「だから、私たち人間はお互いに支えあうの。」
死神さんは私の手を握りしめて強くそう訴えかけました。
「私にも…できますか?」
不安から生まれた言葉は勝手に口を紡いで出てきてしまいました。
「大丈夫よ、アリスならできるから。」
そう諭すように私に言うと死神さんは微笑んでくれた。
「……死神さんは私のそばにいてくれますか?」
私は死神さんの温かい手を握り返すとそうお願いしました。
「ええ、アリスが望むのならば地の果てへも着いて行くわ。」
死神さんは静かに会釈をすると、そう言って私のお願いを聞いてくれました。
「私はアリオン、よろしくねアリス。」
死神さんは私にそう名乗りました。
「アリス・アミーキティアです。」
私は一応、自分の名前を名乗っておいた。
よく考えればどうして私の名前を初めから知っていたのでしょうか…
私はその疑問を問いかけることはありませんでした。
「アリオンさん…死神さん……白さん。」
私は死神さんを白さんと呼ぶことにしました。
「白さん、ふふ可愛らしい名前をありがとう。」
白さんも喜んでくれました。
「お礼にこれをあげるね。」
しろさんはコートのポケットからオレンジを出しました。
「……オレンジですか。」
私はそれを受け取って口に入れました。
「っ!?」
それは今まで食べたどんなオレンジよりも甘くて美味しかったです。
「ふふ…それはみかんって言うのよ。」
白さんは私の反応を見て嬉しそうにしていました。
「……もっと下さい。」
私は白さんのコートの袖をクイッと引っ張ってそうおねだりしました。
「気に入ったのね…はいどうぞ。」
白さんはもう1つポケットからみかんを出しました。
私はその一粒を白さんに差し出します。
「くれるの? じゃあいただきます。」
白さんは私の差し出したみかんの一欠片をとても美味しそうに食べました。
「ところでアリスはこれからどうするつもりなの?」
白さんは突然、私に問いかけました。
「……魔物を一通り倒していくつもりです。」
私は白さんに答えました。
「もう戦わなくてもいいのに?」
白さんは私に再び問いかけます。
しかし私の答えは変わりません。
「はい…今まで命を奪ってきた分、今度はたくさんの人を助けてあげてと白さんが教えてくれました。 魔物の異常発生は人為的なものらしいので、このまま放置するわけにはいきません。」
そう白さんに伝えると白さんは喜んだ様子で私の答えに
「わかったわ…私も手伝うね。」
と一緒に戦ってくれると言ってくれました。
こうして私たちは魔物退治の旅に出ることが正式に決まりました。
これからどんなことが待っているのか、どんな世界を見ることになるのか…
今の私にはまだその全てがわかりません
でも少しづつでも前に進んでいこうと私は強く思いました。