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Blood Tale  作者: 黒兎pon!!
第1幕 紅の勇者と美しい世界編
3/41

戦地へ…

青い空を貫くように漆黒の飛竜が飛んでいた。

その飛竜に股がる鎧の男はアルスフィリア帝国最強の竜騎士の名を持つ帝国竜騎団隊長フランゼルド・ヴァン・ファヴォル…帝国の軍事全てを任されている男である。

普段は戦場の最前線に立ち、敵を刈り取る彼が今、戦地を離れているのには訳があった。

それは待ちに待った最新魔導兵器が完成したと帝国科学班のリーダーである気狂い科学者のロゼルトから連絡があったため科学班の研究所に向かっていたからだ。



空の果てを望むアリスにロゼルトが尋ねた。

「君はこの世界は綺麗だと思うかい?」

アリスはその問いに答えることはなかったが、その目は不思議そうにロゼルトを見つめていた。

「そうかい…わからないよね…」

ロゼルトはそう言うとアリスの頭を撫でた、そして

「僕はね…本当はこの世界は綺麗なんだと思うんだ。」

とアリスに語りかけた。

アリスは静かにその言葉を聞いていた。

「でもね、今はこの世界は汚れてしまったんだよ…人の手で少しづつね。」

ロゼルトはアリスにそう語った。

『……人間は汚い?』

アリスは話すことはないが、その目にはそれ以上の意思が宿っていた。

「そうだね…醜くて汚いかもね。」

ロゼルトはそう言って少しだけ笑った

「でも、僕は信じたいんだよ…本当は人間は綺麗なんだって。」

ロゼルトのそんな言葉をアリスは静かに聞いていた。

どうしてこんな話になったのかはよくわからないけれど、彼女はとりあえず静かに聞いていた。

二人が話を終えた時だった。

地響きと共に大きな何かが中庭に降り立った。

それは巨大な飛竜とそれに股がる男だった。

「来たようだね…あれが今日から君が加わることになる帝国竜騎団の隊長だよ。」

ロゼルトはそう言って外へと向かっていった。

アリスは急ぎ足の彼に着いて行くようにゆっくりと外に出た。



「やぁやぁ、フランゼルド君。」

ロゼルトは顔までもを鎧で包んだ竜騎士の男に挨拶をする。

「ロゼルト、用件は手短に終わらせろ。」

フランゼルドはロゼルトに冷たく刺すような声でそう言った。

「お急ぎのようだねぇ〜、さすがは帝国竜騎団の隊長さん、お時間が惜しいようだね。」

ロゼルトはそんなフランゼルドにも特に態度を変えることなく、いつも通りの口調でそう返す。

「もったいぶらずにさっさと出せ、貴様の研究成果とやらは何処だ?」

フランゼルドは少し苛立っていた。

「そんなに怒ってると出てきてくれないよ?」

ロゼルトは笑ってそう答える。

そして柱の裏から様子を伺っていたアリスに手招きをした。

アリスはゆっくりと姿を表すと、ロゼルトの方へと歩み寄った。

「これが僕の最高傑作とも言える魔導器融合少女のアリスだよ。」

ロゼルトはフランゼルドに自信満々にそう告げた。

「こんな小娘が最強の兵器だと? 笑わせるな、何の冗談だ?」

フランゼルドはどうやらアリスが魔導兵器であると信じてはいないようだ。

それもそうだろう、何せ帝国最強の兵器がまさかこんな幼い女の子とは思わないだろう。

「うーん…やっぱり信じてはくれないようだね。」

ロゼルトはアリスについての書類を一通りフランゼルドに渡した。

フランゼルドはその書類に目を通すと

「なるほどな…この小娘がこんな便利な品物だったか、理解した。」

とロゼルトに告げると竜から降りてアリスの方へと歩み寄った。

「貴様には早速だが、戦地に来てもらう…なに簡単だ、貴様はそこで仇なす敵国の奴らを殺すだけだ。」

フランゼルドはアリスにそう告げると、再び竜に股がり

「後ろに乗れ、戦地まで送ってやる。」

とアリスに言う。

アリスは無言でフランゼルドの後ろにもう1つ用意された鞍に股がった。

「では、確かに受け取った。」

フランゼルドはアリスが鞍に股がるのを確認するとロゼルトにそう告げた。

「はいはい、確かに渡したよ〜。」

ロゼルトもそれに返事をする。

その返事を聞くとフランゼルドは竜の手綱を引いた。

それと同時に竜が一気に空へと飛び立った。

「…行っちゃったね。」

ロゼルトはフランゼルド達が飛び立ったのを確認すると中庭の大木の上にいた一人の女性に声をかけた。

「アリオンちゃん…何を頼むかはわかるね?」

ロゼルトにアリオンと呼ばれた女性は静かに返事をした。

「はぁ〜い、アリスを監視するのね。」

アリオンは帝国科学班でロゼルトの助手をしていて、とても穏やかで優しい性格の女性だった。

そんな彼女だが、実は白死神と呼ばれる存在で、死ぬべきでない者を在るべき未来へと導く役目を持った特別な存在だった。

「じゃあ…行ってきま〜す。」

アリオンはそうロゼルトに言うと虚空の彼方へと消えていった。

「さてと…僕たちも動くとするかな。」

ロゼルトはたった一人、そうつぶやくと研究所へと入っていった。



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