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Blood Tale  作者: 黒兎pon!!
第1幕 紅の勇者と美しい世界編
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少女の目覚め

私が目を覚ますとそこは見覚えのない所でした。

白く汚れのない天井と、大きな窓、そしていつもと感触の違うベッド…

いったいここがどこで、どうしてここにいるのかわからない。

直前の記憶すら曖昧で、全く思い出せない。

私がしばらくそのまま周囲を見渡していると誰かが私のいる個室に入ってきた。

「あぁ…目覚めたようだね。」

そう白衣の男の人が私に微笑みかけました。

「……」

私は何も言わずにその人を見ました。

「あれ…まだ半分寝てる?」

男の人は両手に抱えた沢山の書類を机にドサッと置くと白衣のポケットから何かを取り出し、私に差し出しました。

「君も食べるかい?」

それは不思議な色の飴でした。

「……」

私は何も言わずにプイッと顔を背けました

「そっか…それは残念だ、美味しいのに」

男の人は少し残念そうにそう言うと、自分の口の中にその飴を放り込みました。

「いやぁ〜やっぱり梅干し飴はおいしいよ」

男の人はそう言って笑顔で私を見ていました

私は梅干しというものが何かはわかりませんが、とりあえずろくでもない物だと言うことはなんとなく感じました。

「ところで…君の名前はアリス・アミーキティアで間違いない?」

男の人は書類の一枚を手に取ると私にそう尋ねました。

「……っ!」

私は驚いて彼をまじまじと見つめました。

どうして私の名前を知っているのか、私にはわかりませんでした。

何故なら、私は彼のことを知らないはずだからです。

「うんうん…なんで知ってるのっていう感じの顔だねぇ〜。」

男の人は私の心を読んでいるかのようにそう言うと笑顔で私を見ました。

そして突然こう言いました

「ようこそ! ここはアルスフィリア帝国の帝都にある帝国科学班、僕はここ班長のロゼルト・ラインハイトよろしくねアリスちゃん!」

何がどうよろしくなのか全くわかりません。

まずアルスフィリア帝国科学班にどうして私がいるのかすらわかりません。

なにせ私はアルスフィリア帝国の帝都からはかなり離れた田舎町で暮らしていたのですから…私が眠っている間にいったい何があったのか全く記憶にありません。

「あぁ…突然のことで動揺するのはわかるけど、その辺は気にしたら負けってことで。」

ロゼルトと名乗った男の人はそう私に言いました。

私は軽くため息をつきました。

「…やっぱり気になるよね、じゃあ簡単に説明しよう。 君は拉致されてここで魔導器と人間を融合する実験の被験体となったって感じだよ。」

ロゼルトさんはそう言うと1つのファイルにまとめられた書類を手にとりました。

「要するに、君はすでに魔導器と融合しているって事になるんだけど…まぁどうでもいいよね?」

全然どうでもよくありません…

つまり私は実験材料としてここに連れてこられて魔導器を埋め込まれた…ということになります。

「……そうですか。」

私は静かに一言だけ口にして自分の身体をいろいろ触ってみました。

「あぁ…外見ではわからないよ、中に埋めてあるんだし。」

ロゼルトさんはそう言うと私に宝石のついたリボンを渡しました。

「これが君にだけ扱える特別な魔導器…霊魂式形質転換魔導装備、名付けてソウルガーメントだよ!」

ロゼルトさんはそう言ってファイルを私に差し出しました

「……」

私は勢いに押されて、とりあえずファイルの中の書類に目を通しました。

要するにこのソウルガーメントという装備は魔導器がその内部に宿す魔力によって姿や特性を変えるという《形質転換》を利用して作られた特殊装備で、霊魂や精霊などのいわゆる魂というものを中に宿すことで自身の身体能力や特性を変えることができる物のようです。

さらに要約すると変身リボンと言った所でしょう。

「……」

私は何も言わずにとりあえずそのソウルガーメントというものをブラウスの襟に結んでみました。

するとその瞬間に私の服が魔力の粒子に覆われてその姿を真っ赤なドレスのような戦闘服に変化しました。

この服を私は知っていました。


これは私のお母さんの戦闘服です。


「うんうんよく似合ってるよ。」

ロゼルトさんはそう言って微笑むと私に一本の剣を手渡しました。

「君にはこれからアルスフィリア帝国最強の部隊、帝国龍騎団の一員として戦ってもらうことになる。 いいかい? これだけは忘れないでいて欲しい…」


「アリス…君は人間だ。」


ロゼルトさんはそう言うと剣を置いて書類の山を抱えました

「突然のことだし、理解はできなくて当然だと思う…でもこうでもしないと君は今、確実に死んでしまっていたと思う。」

私にはよくわかりませんが、私はこの人が悪い人には見えませんでした。

「…まだよくわかりませんが、貴方が私を助けてくれたのですか?」

私は静かにそう尋ねました、すると、ロゼルトさんは笑って

「それはこれから君が決めればいいよ。 助けられたって思うならそれでいいし、そうでないなら憎んでくれたって構わないよ…お世辞にも助けたとは言えない選択だとは僕自身は思っているからね。」

と言いました。

私は彼の事がまだわかりません、ですが、少しだけ信じてみようと思いました。

彼の目は、悪い人の目ではなかったのです。

「それより…そろそろ迎えが来るから準備しておいてね。 あっ…そうそう、何かあったらすぐにここに戻ってきてもいいからね?」

ロゼルトさんはそう言うと先ほどの飴を再び私に差し出します。

「……」

しかし私も先ほど同様にプイッと顔を背けました。

「それにしても、静かな子だよ君は…表情もほとんど変えないし。」

ロゼルトさんは飴を再び口に入れると、私にそう言いました。

「………苦手なだけです。」

私はそうとだけ答えました。

私は話すのも、気持ちを顔に出すのも苦手なので…よくお人形さんみたいといわれていました。


これが、私のこの国での名前になるとはこの時はまだ思ってもいませんでした。

そして、私は長く苦しい旅をすることになるとは…まだ知る由もなかったのです。


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