第9話 引っ越しの日
朝が明けると、智花の引っ越しの日がスタートした。
俊樹が起きた時には、智花はもう出かける服装になっていた。
ミニスカ大好きでガーリーな智花もさすがに引っ越し用の服装だった。
タイトなジーンズを履き、上はパーカーを着て、髪の毛はポニーテールという
活動しやすいかっこだった。
(これはこれで、なんか色っぽい。
うなじはそそるものがあるし、ヒップの形がでてたりして、女であることを
十分感じさせる。
たまらんっ。
抱きしめたいっ。
でも、親友宣言してるんだ。
我慢我慢。)
食事を終えると、すぐに、智花と俊樹は引っ越し先のアパートに徒歩で向かった。
引っ越しといえども、単身の引っ越しで、家具や家電の大物は
ほとんどはこちらで買うことになっていたので、
荷物は少ない。
引っ越しの手伝いは、俊樹に任された。
智花は俊樹の家族に
「引っ越し荷物で大きいのは、ドレッサーと洋服ダンス、ベッドくらいです。
あとテレビとパソコン、
そして、ダンボールが数箱です。
俊樹が来てくれれば十分です。」
と説明もしていた。
二人は8時30分には家を出た。9時頃業者がアパートに来る手はずになっており、早めに行って待っていることにした。
歩くと、数分で引っ越し先のアパートに着いた。
何と、女性専用のアパートで、住人は全て女性ということであった。
アパートの入り口には共通の鍵があり、外部の人間は自由に入れないようになっている。
また、共用の廊下は外から見えないようになっており、
入居者が帰ってきたときに、誰かが外から観察していたとしても
部屋に入るところを見せないようにしていた。
「どの部屋に住んでいるのかわからないようにしているの。すごいでしょ?
オートロックのマンションではないけど、防犯がきちんとしているの。」
「すげえなっ。」
智花の部屋は2階だった。
智花の両親が2階の方が安心ということで、2階建ての2階の部屋を選んだのだった。
部屋に入ると、若い女性が好みそうな可愛らしいセンスに溢れた作りになっていた。
「おおっ、
なんかオシャレだ。」
「うん、そうね。
俊樹、この部屋にガンガン遊びに来てね。
私、俊樹の家の鍵渡されたから、俊樹に私の部屋の合鍵渡しておく。気軽に来て。」
「えっ、それまずくないか?
女の子の一人暮らしの部屋に俺が入り浸るなんて。
(智花がウチに来て俺の部屋で二人きりになるのとは違う。
完全に二人だけになる。下手すると.......)」
「ええっ?
俊樹のお父さん、お母さんに話したら、
いいって言ってたよ。
もしかして、私のところに来るの、
嫌なの?」
智花は泣きそうな顔になった。
(これには弱いっ!参った。)
そう判断した俊樹は
「わかった。遊びに行くから、
安心しろよ。」と返答するしかない。
「やったーっ!」
智花は俊樹に抱きついた。
柔らかい感触といい香りが俊樹の前面を
支配する。
(初めての一人暮らしだし、親友の俺が支えないとな。うん、問題ないっ。)
俊樹は論理付けを行い。納得した。
そのあと、しばらく何もない部屋で待っていると、
ベランダから引っ越し業者のものと思われる小さなトラックが
やってくるのが見えた。
トラックから降りてきたのは何と二人とも若い女性だった。
運転していたのは正社員の女性だろうと思われた。20代後半くらいだろうか。
もう一人は、大学生くらいの20歳程度の若いアルバイト女性っぽかった。
二人でアパートの外に出て、引っ越し業者を出迎える。
「佐藤です。よろしくお願いします。」
「ときわ運輸の小林です。本日はよろしくお願いします。」
正社員と思われる女性は明るい挨拶を返した。
荷物は少なく、1時間もしないうちに荷物の運び込みが終わる。
ドレッサーとタンス、ベッドの運搬に苦労したくらいで、冷蔵庫や洗濯機がないので
楽な引っ越し作業であった(冷蔵庫と洗濯機はこちらで購入することになっていた。また、
勉強机は俊樹の母の知り合いの家からもらうことが決まっていた。)。
女子二人でも、全然問題のない荷物の量であった。
作業を終えたあと、部屋でちょっとしたお茶出し休憩タイムを設け、業者の二人を呼び込む。
正社員らしい女性が世間話風に話しかけてくる。
「初めて親元を離れて一人暮らしをする女性って、荷物少ないんですよ。
でも、次に引っ越しするまで、荷物増えるから注意してくださいねっ。」
「はいっ、気をつけます。」
「ところで、佐藤さん。こちらの方は、彼氏さん?」
正社員の女性が目を輝かせながら、突然質問してきた。
バイト女性も、すごく興味深そうな顔で見ている。
「えっ!」
俊樹と智花はそろって驚きの声をあげたが、何とか
俊樹が答える。
「違います。幼馴染なんです。
家が、近いので、ちょっと手伝いです。」
「へーっ、幼馴染なんだっ。素敵!」
バイト女性がうっとりする。
正社員の女性はニヤニヤしながら、
「幼馴染みなの?・・・青春ねっ。いいなっ!
これからも二人は仲良くしてくださいね。」とうれしそうに話しかけてきたあと、
俊樹の方だけを見て、
「こんなに可愛い女の子、滅多にいないよ。
逃げられないように、ちゃんと捕まえていないとダメだからね。」
と余計な一言を発した。
「いや、だから・・・」俊樹が彼女じゃないと言おうとしたところ、
今度はバイト女性が発言した。
「佐藤さんって美少女ですよね。なんか芸能人みたいっ!」
智花は真っ赤になった。
「そ、そんなことないですよ!私なんか、全然っ。」
正社員の女性は
「二人ともお幸せにねっ。
お似合いのカップルよ。」
と余計なことばを追加した。
(あーあ、めんどくさい。これ以上説明するのやめた。)
俊樹は弁解を諦めた。
業者の二人が帰ると、最低限の整理だけをして、二人は俊樹の家に向かう。
歩きながら、
智花は俊樹に嬉しそうな顔で
話しかける。
「美少女って言われちゃった!
すっごく嬉しい!」
「そ、そうだなっ。
一般の人はそう思うだろうなっ」
「えっ、俊樹は私のこと、美少女って思ってくれないの?」
ちょっと、口をとがらせて、智花が俊樹に言い寄る。
「お、俺たち親友だろっ。
そういうこと、なるべく、考えないようにしてるんだ。
だって、かわいいって思ったらやばいだろっ。」
「ふーん、そっか。
ま、いいやっ。私のこと親友と思ってくれてるなら。
でも、仲良くしようねっ」
そう言いながら、智花は腕を組んできた。
俊樹の腕に、智花の胸のふくらみの柔らかさが伝わる。
(やべっ、やばいよっ。
気持ちいい。
やっぱ、おっぱいの感触はいいっ!
ダメだ。このままではこいつに
性欲を感じてしまう!
腕を振りほどくべきか?
いや、振りほどいたら、もう腕を組んでくれないかもしれない。
それはもったいない。
これはこれで堪能しよう。
ただし興奮し過ぎないようにしなきゃ。
とりあえず難しいことを考えて
気持ちを落ち着かせよう!)
俊樹は学校の日本史の授業で覚えた歴史上の人物のことを
考えながら、
冷静さを保とうとした。
(ふふっ、俊樹動揺しているっ。
なんか、面白いっ。)
歩きながら、
わざと胸の膨らみを押しつけて
小悪魔的気分を楽しむあやせだった。
次回は1週間後を予定しています。




