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第17話 小悪魔、恋を知る。

何とか1日で2話更新しました。


あやめの心の変化に注目です。

さやたちとじっくり話したあやめは、誤解を解くことに成功した。


でも、さやたちは妙にポジティブであった。


「まあ、立花君のことが好きじゃなくても、いいじゃない?

話をしたことがなかったんでしょ?

ちょっと話をしてみたら?」


「確かに話をしたことないけど・・・」


そこであやめは気がついた。


(そうか、この実行委員の仕事で一緒に活動することになるんだ。

あいつをメロメロにしてやろう。まずあいつを私の虜にしてやろう。

当初の目的を考えれば、あの程度の男を籠絡できないようじゃ、しょうもない。)


「そうね、好みの男の子ではないけど、話はしてみる。いろんな男の子と話をしないとね。」


「そうそう、その調子。」

(やっと素直になったよ、この子。多分、立花君に惚れてると思うから、陰ながらフォローしていこ。

こんな美少女の恋を応援できるなんて、私、幸せ。)


さやは、美少女であるあやめの恋を応援することにもうのめり込んでいた。

つまり、あやめがなんと言おうと誤解は解けていなかったのだ。

ただし、本人が違うといっているのを無視もできず、表面上はあやめの主張を受け入れるふりをした。



そして・・・

次の週に文化祭実行委員会の初顔合わせの開催通知があった。


当日、

(きっと、今日、立花の奴は私を誘いに来るはず。)

そう、思っていたら、

なんと、声をかけてきたのはいいのだが、


「今日実行委員会な。俺、委員会の前に用事あるから、先に行ってて。」


と、つれないことを言ってきた。


(ええーっ!ふつうは私と一緒に行きたがるでしょ?

どういうこと?

もしかして、照れているの?)


と、あやめはちょっと腹が立ったものの、きっと恥ずかしくて一緒に歩く勇気がないにちがいない。

照れているだけだと前向きに考えることにした。


(まあ、いいわ。

委員会の時は隣に座るはずだから、こっちから話かけてみるか。)


ところが、


委員会の時、あやめが何かと声をかけても

「うん」「そう?」とか気のない返事ばかりだった。


生徒会や他のクラス、年上の3年生とは仲良く喋るのに、あやめに対してまったく興味なさそうだった。


委員会では、文化祭に向けてのおおまかなスケジュールが決められ、役割分担等については、次回決めることになった。


(もうすぐ、委員会終わりだ。

どういうこと?

このままろくに話さないと悔しいから、特別大サービスで、私の方から誘おうかしら、

一緒に帰ろうって言おうかな・・・)

あやめが、ちょっと考えていると、委員会について、司会者から終わりを告げる声があった。

その瞬間、

俊樹は

「双葉、ご苦労様。俺は部活があるから、じゃあな!」

と言って、さっと席を立って走り去ってしまった。



「ええっ、何よっ。私と話すチャンスでしょ。

部活って何!」


そこで、あやめは俊樹がバンドをやっていることを思い出す。

(そっか、あいつ軽音楽部か?ちょっと覗いてやれ。

どんなバンドやっているか観察してやる。)


もやもやした気持ちのあやめは、

校舎の中を、苦労して探し回り、何とか軽音楽部の部室にたどり着く。

そこには数人の部員がいたが、俊樹はいなかった。


「あのー、立花君はいますか?」


いかにもバンドやってますといった感じの髪の毛を赤くそめた女の子が答えてくれた。


「俊樹なら練習中だから、B棟の3階の空き教室で練習してるよ。

もしかしたら、ヴォーカル希望?

俊樹たちヴォーカル募集してるのに、希望者がいなくて困ってたけど。」


「えっ?

うーん、そ、そんなところです。

ありがとうございます。」


あやめはペコッと頭を下げて、空き教室に走って向かっていった。

話を合わせてしまったことに後悔しながら。


「もう、手間を取らせるなあっ。私をこんなに動かして、許さないんだから。」


そして、目当ての教室にたどり着く。ドラムとベースとギター、キーボードの爆音で、

どこの教室かすぐにわかった。

教室の入り口の小窓から中を覗き込むと、4人のメンバーがいた。

ドラムとベースは男子、キーボドは女子だった。

そしてギターは俊樹だった。


その演奏は、はっきり言ってうまかった。


特にギターを華麗に弾きまくる俊樹のプレイは、バンドについて素人のあやめの目からみても

「す、すごいっ。かっこいいっ!」

とつぶやくしかないものであった。

あやめの心臓の鼓動が急に早くなっていった。

なんで、あいつがかっこいんだ?と思いながらも、目は吸い寄せられていった。


そして、熱演ともいえる彼らの演奏が終わる。

その時に、あやめはキーボード担当の女子と目が合った。

やはり、いかにもバンドやってますといった感じのワイルドな感じのショートヘアーをした女の子である。


(あっ、やばいっ!)


その子は、小走りに入り口まで走ってきて、引き戸をガラッと開けた。


「もしかして、ヴォーカル希望?

募集来なくて、困ってたんだよね。

経験ある?」


その時、他のメンバーもあやめに注目する。

顔を知っている俊樹が口を開いた。

「なんだ、双葉じゃないか?おまえ、バンドやりたいの?

歌、歌えるのかよ?」


あやめは、頭の中で瞬間的に判断した。

(この流れだと、立花を観察に来ただけなんて、とても言えない。

もうバンドに興味あったって言うしかない。

歌は音楽の授業で褒められたことあるから、音痴じゃないし。)


「バンド経験ないけど、歌はうたえるよっ。

音程はしっかりしてるって言われたことある。」


俊樹が

「うーん、素人かあっ。困ったな。」


キーボード担当の女子がそこで、提案する。

「俊樹のクラスの編入生の双葉あやめさんでしょ。うちのクラスで噂になってる。

私、木下梢きのしたこずえ、こずえって呼んでね。

音程が取れるなら、あとは練習次第だよ。

やる気があるなら大歓迎。

ねえ、俊樹、良太、蓮、ちょっと練習に参加してもらおうよ。」


ドラム担当の良太がすばやく反応する。

「ヴォーカルはビジュアルが命だ。

あやめちゃん、美人だし、いいんじゃない。

絵になるぞ。」


ベースの蓮も応じた。

「そうだな、歌は訓練すればうまくなる。

やる気とビジュアルで俺は賛成だ。」


俊樹が

「じゃあ、そうだな。

よし、双葉、とりあえず練習に参加しろよ。」


「う、うん。やってみる。」

あやめは胸がドキンとしてしまった。



そして、2時間後、


「あやめちゃん、がんばったね。初めての練習で、初めての曲で、なんとか歌えるようになったんだから

すごいよ。」

梢がほめてくれた。


しかし、

俊樹は厳しい顔をしていた。

「パワーが足りない。もっと腹から声をださないとな。

バンドの音と張り合えるような声をだしてもらいたいんだ。

いっぱいメシ食ったほうがいいかもな。」


あやめは、俊樹の言っていることがわかっていた。

生バンドの強烈な音に対して、自分の声が迫力不足だということを。


(でも、初めてバンドに参加したばかりじゃない?

そんな言い方ある?

立花ってデリカシーないなあ。

あったま、きたー!

やめちゃおうかな。)

と腹が立ってきた。


言い返そうとした、その時、

俊樹がまた口を開いた。

「でも、ガッツあるよな。

初めて聞いた曲をすぐ覚えて歌えるとは思わなかった。

絶対、センスあるよ。

双葉が参加してくれると本当に助かる。

ちょっと、最初は苦労するかもしれないけど、俺たちのバンドに入ってくれ。」


その声を聞いて、良太と蓮もうなずく。

「おおっ、頼むよ。」

「俺たち、ヴォーカルいなくて困ってたんだ。助けてくれ。」


その瞬間、あやめの機嫌はいきなり反転し、幸せいっぱいの感覚になった。


「あ、あっ、私でよければ、バンドに入れてください。

が、頑張ります。」


「よし、バンド新体制スタートだ!」と笑顔で、サムズアップする俊樹。

「おうっ!」と声を合わせる他のメンバー。


あやめは、驚くと同時に、俊樹の顔をみて、胸がキュンキュンするのを感じた。


(何、これっ?

む、胸が苦しいっ。

何なの?・・・ドキドキするっ!顔が赤くなってる。

ど、どうしようっ。)


そのとき、梢が、声をかけてきた。

「じゃあ、バンドの新しい体制を祝って、国道沿いのファミレスに行こうよ!

あやめも行くよね?」


「う、うんっ!」


「よしっ、俺、ジャンボパフェ食おうかなっ。」

「俺もっ。」

「俺はみつ豆かな?」

「私は、アップルパイのケーキセット!」


あやめは、今まで感じたことのない感覚に急速につつまれた。


(これが青春?これが友達?

私がすごく逃げていたものかな?

男なんて、私の奴隷みたいに思っていたし、女の子も私を引き立たせるための道具だと思っていた。

だから、恋もしなかったし、本当の友達も作ろうとしなかった。

でも、でも、

この人たちといるとなんか楽しいっ。

そして、立花のやつ、いや、俊樹クン・・・が気になる。どうしようっ?)


戸惑いつつも、あやめは心地よい気分だった。



恋や友情に否定的だった女の子が変わっていく瞬間、

それを描きたかったのです。


次回は2月7日の日曜日にアップする予定です。

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