表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

第19話

お待たせしました。

翌日の学園で私はレイラ様とティア様に昨日の話をした。


「婚約者…ですか?」

「えぇ。今まで婚約者なんて意識したことなかったのですけれど 私達は今年デビューの年でしょう?それに婚約者ではないにしても、どなたかにエスコートをお願いしなければと思うと何だか焦ってしまって…。お2人はどうしてらっしゃるかと思いましたの」

「まだ私には婚約者はおりませんが、叔母から縁談がきているとは聞いておりますわ。父は気に入らないのか叔母の持ち込む縁談には全く見向きもしておりません。それに、婚約者どころかエスコートもまだ検討中ですの。エスコートに関してのみの話ですが、父としては団員の方の中から選びたいようですの…」

「私も婚約者もエスコートをお願いした方もおりません。縁談も姉の目に叶う方がいらっしゃいませんので今のところ全てお断りしてますわ。エスコートも然りですわね」


マジか…。聞いたことがないけど縁談なんて、私には来ているのだろうか…?昔あった宰相の戯れ言は抜きとして。

それに、なんというか婚約者を意識してないというよりかは完全に忘れていたわけでして。昔からそんなに結婚願望は強くなかったし、逃げ切ることばかり考えていたから後回しといいますか…。誰にも何も言われなかったしね。


「カレン様、デビューまではまだ時間がありますからそう焦らなくても大丈夫ですわ」


どんな顔してるのか自分ではわからないが、落ち込んで見えたのだろう。宥めるようにティア様がそっと私の手に自分の手を重ねた。


「そうですわカレン様。既に婚約者がいらっしゃる方ばかりではありませんわ。皆これから探すのですよ。デビューのエスコートをお願いする方が必ずしも婚約者である必要はありませんし、仲の良い友人や、身内や親戚の方に頼む方もたくさんいらっしゃいますしね」


確かにそうなんだけど…。

デビューまでに婚約者がいる場合は、お披露目の意味合いを兼ねて揃いの装飾品をつけて登場する。そして分かりやすい場所に同じ色の花を挿すことが多い。

そしてまだ婚約者のいない場合は特に決まりはないのだが、いつの頃からか女子ならば頭に、男子ならば胸に白い生花を

挿すようになった。

白い生花を挿していれば、エスコートしている、されている場合であっても婚約者はいませんよ。ということになる。

婚約者がおらず、誰かにエスコートを頼んだ場合、デビューが既に済んでいるのであれば花は挿さない。

まぁ、すでに婚約者がいる生徒もいるし、これからバリバリ婚活する生徒もいるのだから目印、というわけではないのだろうけど見分けやすい方がいいですよね、という話なわけで…。

そしてもうひとつ重要。私達のデビューは私達だけのものではないのだ。言葉が悪いかもしれないが、仕事や家同士の繋がりを求めて親が『うちの娘(息子)こんな感じですがどうですか?』的なお披露目と品定めを兼ねている。そしてここから良縁を求めて家族ぐるみの婚活が始まるのだ。


もちろん卒業しても結婚せずに世に出て活躍する女性も多い。魔術師団のお姉さま方の中にもいるし、医務局で教えてくれた方の中にも独身の方はいた。彼女らは仕事に誇りを持っており、現実的であるが故に結婚に夢を見ないと聞いたことがあったが…。理由は恐ろしくて聞けない。聞いてはいけない気がする。


とりあえず婚約者のことについては焦らずじっくり考えよう。急いては事を仕損じるというし…。


最近ふと私は間違っていないだろうかと思うことがある。

もちろん舞台から降りることは諦めていない。だが舞台から降りたとわかるのはいつのことなのだろうか…。

─わからないのだ。

デビューというターニングポイントにあたり、婚約という言葉をやたらと意識してしまう。

あと3年。物語の開幕に向けて時は流れて行く。

自分が考える最良の道は果たして正解なのか否か。


誰とも婚約しなければストーリーは始まらない。攻略対象者とは恋愛感情を持って絡まない。それを前提として私は行動してきた。だけど…。

だめだ…何だか考えれば考えるほどネガティブになっていく。焦るな自分、明るく考えねば全部が無駄になってしまう。


─大丈夫、まだ時間はある。例え皆と同じように結婚できなくたって命さえあれば、チャンスは巡ってくる!相手だって私自身が尊敬できる人がいい。焦る必要はない。舞台から降りて、目立たなくたってどこかに私を選んでくれる人がいるかもしれないし。


そう自身に言い聞かす。

ちょっと気持ちが浮いてきた。


そうよね、この国にいなくたって世界は広いんだもの。全てが終わったら婚活兼ねて隣国にでもいこうかな。

よし!私は私の為にもこのまま突き進もう!おーっ!



「相変わらず1人で百面相してるんだな」

「カレンデュラ嬢らしいですけどね」


うるさいですよ、そこの愚弟子コンビ。聞こえてますからね!

そんなんだからいつまでも師匠であるレイラ様に女心についてダメ出しされるんだからね!

ほら!後ろでレイラ様とティア様が微笑んでましてよ。ちょっとオーラが黒いけど自業自得ですから助けませんよ。

今日もまたしっかりと女心を勉強してらっしゃいな。






あれから時は過ぎ季節は秋へと移っていった。

ドレスから装飾品から着々と社交デビューへの準備は整っていく。─いくのだが…。

私には未だに婚約者がいない。

…いやね、別にもういいんだけどさ。デビューのエスコートはウィルお兄様にお願いしてあるし。


と、いうか驚いたのはレイラ様のエスコートをシリウスが務めることか。なんでもシリウスから申し出たらしい。詳細は教えてもらえなかったがね。



今日は久しぶりに訓練所に来ることができた。

最近はデビューに向けての準備が忙しく、まとまった時間がとれなかったからだ。きっと、今後はここを訪れる回数も減ってしまうだろうな。

ここぞとばかりに私はお姉さま方にアドバイスをもらい、ひたすらに新しい魔術構築について訓練していた。

実は授業でやっている魔道具作りが思いの外おもしろい。相変わらず前世のゲームでのイメージ頼りだが、魔術を付加して手持ちの装飾品に効果を与える作業は楽しい。それに、最初から魔術を練り込み物質を構築するのも中々やりごたえがある。

なので今回はそれに活かせるような魔術の訓練だった。


気づけば日も暮れ、そろそろ帰らねばならない時間だった。どうも集中しすぎていたようで体が固くなっていた。

思い切り伸びをして、帰り支度を始める。

そこへちょうど団長からの書類を携えたジン様がやって来た。

彼は副団長のキース様に書類を渡し、私に気づくと声をかけてくれた。どうやらアルお兄様が家まで送ってくれるらしく、そのまま途中まで送ってくれることになった。


「そういやカレン嬢はそろそろデビューだな。俺も懐かしいよ。今じゃ試験づくしの毎日だし、それが終われば学園生活も終わりだな」

「ジン様は今年で卒業でしたものね…」

「まぁな。一応このまま特務に正式に入団するからここに来れば大体はいるけどな」


ははっ、と楽しげに笑う顔には疲れが見える。


「あまり無理はなさらないでくださいね」


心配です。と伝えれば彼は表情を緩める。彼の手を取り、少しだけ魔力を流す。疲れがとれますように、ゆっくり休めますように。と気持ちを込めてみる。


「ありがとな。楽になった気がするよ。ま、アルベルト先輩もそうだけど皆がやってきたことだし、俺も頑張るよ」


そう明るく話すジン様に頑張ってくださいとしか言えず、そっと手を離し小さく微笑むくらいしかできなかった。


「そういやエスコートは誰かに頼んだのか?それとも婚約が決まったりした?」


私に婚約者がいないのは知っているであろうに…。

突然話題を変えたジン様についつい不貞腐れ気味に答えてしまう。


「エスコートしてくれるような方はおりませんもの。デビューのエスコートは兄にお願いするつもりですわ」


いないものはいないのだ。見栄を張ったところで結局はバレるのだし、別にうちのお兄様ならおかしくも何ともない。だいたい下手に誰かに頼むよりよっぽど安心できる。

夜会にも慣れているし。

それを聞いたジン様はふと足を止めて何か考えている。

ん?どうしたというのだろうか。首を傾げて見つめていると意を決したように私の手を引いて回廊から庭へ足を踏み出した。

少し歩くとそこには噴水があり、いくつもの灯りが照らし出す雰囲気はどこかロマンチックだ。

くるりとこちらを振り向き突然─。



ジン様は私の足元に膝をつく。


「カレンデュラ嬢、私をパートナーとして選んでいただけませんか?」


彼は私の手を取りそう優しく微笑んだ。

遅くなり申し訳ないです。

少し気になる部分もありますので後で修正するかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ