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第1話

よろしくお願いします。


「お嬢様、お茶のご用意が出来ましたよ」


どうやら転た寝をしていたみたいだ。なんか夢を見ていたような…。だめだ。思い出そうとするとそこからポロポロと剥がれ落ちるかのようにわからなくなってくる。


「お疲れのようでしたし、起こさない方がよろしいかとは思ったのですが…」

「ううん。起こしてくれてありがとう」


ローザが申し訳なさそうに言う。けど起こしてもらえてよかった。

今日のために毎日頑張ってきたのにこのまま寝過ごすなんて。その方が悲しかったとローザに伝えれば


「それはようございました。でも無理はなさらないでくださいね」

「ええ。心配かけてごめんなさい、でも大丈夫よ。ありがとうローザ!」


元気いっぱいだよ!とアピールしたくてにっこりと笑う。


「お嬢様、ウィルバート様とアルベルト様ももう到着されていらっしゃいますよ」


寝起きの私の身支度を整えてくれるローザからの嬉しい知らせにうずうずと心が踊る。そわそわする私の様子に気づいたローザが苦笑しながら出来ましたよ、と声をかけてくれた。

2人がいる場所へ近づくにつれて、はやる気持ちが抑えられず思わず走り出してしまう。後ろでローザの嗜める声が聞こえた気がするが早くお兄様達に会いたかった。


「お帰りなさい!ウィルお兄様!アルお兄様!」


庭園へと続く扉をあけながら両手を広げて飛び込んだ。


「ただいまカレン。私達のお姫様」

「ただいま。元気そうでよかったよ」


かけ駆け出して飛び込んでくる私を受け止めてくれたお兄様達。苦笑しながらも、相変わらずだね。と優しく微笑んで抱き締めてくれた。


「お久しぶりです、お変わりありませんか?」

「久しぶりだね、カレン。カレンに会えるのを楽しみにしていたんだよ。今日もたくさん話を聞かせてね」

「俺も元気だよ、カレンも元気に…してそうだな」


おてんば娘、と頬をぷにっとつつくアルお兄様。ウィルお兄様はそのまま私を抱き上げてイスに座らせてくれた。




ウィルお兄様こと、ウィルバート・リーファン。お母様譲りの淡い金の髪と思慮深い蒼い瞳。今年19歳になるお兄様は王都にある学園を卒業され、私達の国、ローディトスと建国以来の友好国である隣国ブルネタリアに、殿下をはじめとする数人のご友人達と留学している。帰国後は共に王都でお仕事をされるとか。その他にも領地でお父様のお手伝いをするみたいで、よく一緒にお仕事の話をしている。


アルお兄様ことアルベルト・リーファン。烏の濡れ羽色のような艶やかな黒髪。黒い瞳も神秘的でお父様にそっくり。ウィルお兄様が甘い顔立ちならアルお兄様は精悍な顔立ち。王都の学園に通いながら騎士団にも所属している。これはあまりないことみたいで、現団長から直々に声をかけられたスカウトだった。毎日学業と訓練をこなしているみたいでとても忙しく学園と騎士団を往復生活。18歳になる今年、学園を卒業する。特例として学園へは騎士団の寮から通っていて、卒業後はそのまま騎士団に正式に組み込まれると聞いている。王都はさほど離れていないとはいえ今の往復生活では毎日のように帰ってくることはやはり厳しいみたいで、なかなか会えない。


お兄様達に会えないのは正直寂しい、でも無理はしてほしくない。けど甘やかしてほしい。構ってほしい…。私を忘れないでほしい…。

──私のわがままってわかっているけど。そんな私に呆れも嫌がりもしないで構ってくれるお兄様達。だから帰ってきてくれる時には心配をかけたくないし、笑顔でいたい。私の誇りであり自慢であるウィルお兄様とアルお兄様。


「ウィルお兄様、アルお兄様。大好きです!会えてとっても嬉しいです!」








ウィルお兄様のお土産のお菓子は、隣国でも評判のお菓子らしくとっても美味しい。そのお菓子をお茶請けにローザが入れてくれたお茶を楽しみながら、色んなお話をしてもらった。けど、そのなかには悲しいお知らせもあった。


「…では明日には戻られてしまわれるんですね」

「ごめんな、カレン。でも明日の魔力適性検査が終わればまた少し時間がとれるから。そうしたら前に約束してた遠乗りにでかけよう」


思わず沈んでしまった声にアルお兄様が申し訳なさそうに頭を撫でてくれる。


「また魔力があがったのかい?」

「そうみたい。あんまり実感ないんだけどね。けど、なんか最近やたら訓練用の武器壊しちゃってさ…。うちの団長が言うには無意識に剣にも魔力が流れてるみたいで、切れ味も鈍くなるやら刃こぼれやらで武器持ちが悪いんじゃないかって言ってた」


アルお兄様はテーブルの上の紅茶を見つめたままため息をこぼす。


「アルの魔力は母上譲りだし、まだ成長途中だからこのあともまだ強くなるかもしれないね。学園でも魔術は学科も実技もどちらも習うだろう?」

「一応魔術師団の友達に学園でやる以外での魔術の応用を教えてもらいながらやってるんだけどなんかこう…しっくりこないっていうか…。魔術師団長は俺の魔力に見合う武器が見つかれば剣士としての能力も上がるし魔法剣士としてもやってけそうだって。だからそのための明日の魔力適性検査なんだよね。検査結果次第では本格的に魔術の練習量増やさないと…」

「そうか。私は魔力がそこまで高くないからアドバイスにはならないかもしれないが…。母上も昔は大変だったと聞いたよ。だが自然と落ち着くようだから今は焦らず自分のために能力を磨くことがきっと、今後のアルのためになるんじゃないかな。広がった数ある選択肢から選ぶ時に、それまでに得た知識も経験も無駄になることはないだろう?」


ウィルお兄様はそう言ってカップを傾けながら微笑んだ。アルお兄様も考え込むように、はぁ。と遠くを見つめてしまった。きっと、お兄様にもわかっているんだと思う。

今年学園を卒業するための学科の試験、現団長のスカウトからの仮入団とはいえ、騎士団に正式に入団するための実技試験。加えて魔術の練習量が増えるともなれば遠い目をしても仕方無いのかもしれない。

──私にも何か出来ることはないかなぁ…。


「明日は私もご一緒させていただけたらいいのに…」


ぽろっとこぼれてしまった言葉。2人の視線を感じ、あわてて邪魔をするつもりはなかったこと、元気を出してほしくて応援に行きたかったことを伝えてみた。お兄様は相変わらず考えたまま黙っていて、その様子にだんだんと勢いをそがれ、最後の方は声が小さくなってしまったが…。


「あ、あの…その……」

「アル」

「……う〜ん…父上が許してくれたらかな」

「なら明日は私も2人に同行しようかな。そうすれば父上もそんなに強く反対しないんじゃないかな」

「お兄様!」

「…そっか。うん、そうだよな。ありがとう2人とも」


きっとそれぞれ私の気持ちを汲んでくれたんだと思う。


それからお兄様には少し照れた顔で改めてまたお礼を言われた。やっぱり広がる選択肢に喜びはしたものの不安もあったみたい。少し乱暴に頭を撫でながらありがとなって。ウィルお兄様も優しく微笑んでいるし何だかだんだんと恥ずかしくなってきて思わず真っ赤な顔のままうつむいてしまった。それを見てローザを含めみんなが温かい眼差しで私を見つめていたことには全く気づかなかった。

ウィルとアルの年齢を変更しました。ご迷惑をおかけしました。

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