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第17話

お待たせしました。

入学してから半年が過ぎた。


あの時の出来事はいまだに鮮明に記憶に焼き付いている。

シリウスの宣言通り翌日に謝罪に来た彼らの顔は腫れ、明らかに殴られたのだとわかった。しかし彼らは言い訳することもせずシリウスを庇い、カレンの助力を願った。そして共にいたレイラ様とティア様にも同じように謝罪した。

これにはカレンが狼狽えてしまった。まず腫れた顔に気をとられ、続く謝罪の中には一切の弁解がなかった。言い訳くらいすると思っていたからだ。そして最後には自分のことよりシリウスを優先させる言葉を述べるのだ。


シリウスが共に成長していきたいと願った彼ら。

シリウスと共に成長していきたいと願った彼ら。


類は友を呼ぶ。結局彼らは似ていたのだ。

彼らは自分達に甘く、シリウスの立場を利用して好き勝手してきたのだ。その結果があれだ。どうなろうと自業自得なのかもしれない。だが──。


お父様は双方共に愚か、挑発したお前も悪い。決闘という個人的な決着に収まったのだから、子供のケンカに親が出張る必要はない。お前達自身で最後までしっかりと話し合いなさい。


そう言ったお父様の表情は穏やかだった。懐旧の情に駈られているのか、表情だけでなくリラックスした穏やかな雰囲気も見てとれる。


私もいつかお父様のようにかつての自分から学べるよう経験を積もう。自分の感情に振り回されず生きるのは簡単なようで難しい。でもきっと出来ないわけではないだろう。人は成長できる生き物なわけだ。その分失敗もするが…。

私は聖人君子になりたいわけでも聖母になりたいわけでもない。なれるとも思わない。私は私だ。今世でやれることをやりたい。前世できなかったことをやりたい。わがままかもしれない。でも諦めたくなかった。私にチャンスが巡ったように、彼らにもチャンスが活かせるといいと切に思った。





相変わらず私は魔術の訓練を続けている。変わったことといえばそこに時々お兄様やジン様が加わったことだろうか。

そういえば、あの日クウガに騎士団での特別訓練のお願いを頼まれた。私に決定権はないから、とお兄様から団長へ伝えてもらうことを約束した。それを聞き付けたシリウスらからも自分も共に訓練したいと頼まれた。シリウスは自分で直接団長に頼めと伝えたら泣きそうな顔をされた。何があったのかしらないがそんなに気まずいのか…。

その結果まとめて面倒見てくれることになった。今でも随分としごかれているようだ。


学園生活でも騎士団での生活も、今までとはやはり違うのだ。紳士として、騎士として、学生として改めて叩きこまれる礼儀作法や教養はいくら自業自得とはいえ厳しいはずだ。けれど泣き言ひとつ言わない彼らにいつの間にか私もボンクラ呼びは止めていた。



それから、授業が始まることにより、新たな攻略対象者との接触があった。それもそのはず、相手は教師である。いつかはそうなるだろうとは思っていたが…。

でもなぁ…この先生と恋愛かぁ。いえね、歳の差とかそんなことは気にならないんです。政略結婚とか歳の差婚とか貴族としては当たり前なわけだ。そういった結婚もよほどのことがない限り常識的な範囲ではあるけるけれど。

それにどんな形であれ、恋愛なんて自由だし、共に愛を育めるなんて素晴らしいことだと思う。教師と生徒のシチュエーションにも萌えます。おいしいです。そういう本も読み漁りましたし大好物ですよ?

なら見た目が問題か?いえいえ。彼もしっかりイケメンです。でも自分がそうなるのを希望してないせいか、彼との恋愛をこれっぽっちも想像できない。

…しかも先生怖いし。


名前はディートリッヒ・ジーター。研究者気質の堅物設定。年はウィルお兄様と一緒。ロベルト殿下が留学中にスカウトしたと聞いた。詳しくは知らないが、確か魔術技師という職業についており、その分野において飛び抜けた才能を持っているとか…。担当する科目は得意分野である魔導技術。授業内容は魔力を利用した道具、いわゆる魔道具制作。魔力の物質化とは意外に繊細で、センスのいる作業とされている。

魔道具とはいっても用途は様々だ。種類にもよるが日常生活の補助として、灯りや調理器具がある。また、それ以外にも装飾品などにも用いられる。昔は魔術師が身に付け、魔力の増幅や戦闘に用いられることが大半だったらしいが、平和な今では随分と改良され扱いやすくなった。まだまだこれから伸びていく分野であるらしい。

彼は体が大きいせいか威圧感が半端ではない。鋭い眼光に色の濃い肌は、研究者というより歴戦の猛者を思わせる。しかし生徒の中には時々見せる甘い雰囲気に大人の色気を感じるとか…。前にちらりと上級生に囲まれているのを見かけたことがあるが、あれは甘い笑みなどではないだろう。どちらかというと…いや思い出すのはよそう。恋する乙女フィルターとはなんと恐ろしきものかな。


このルートは私は恋愛的な意味ではあまり関係はない。…ないのだが、ヒロインの出来のよさが気に食わないカレンは、自分の身分とそれに付随する資金を使い、彼女の邪魔をする。そして彼女を気にかけているディートリッヒに取り入ろうとするのだが失敗。私の嫌がらせにより2人の仲は深まり結ばれる。結局のところ当て馬ですよ。結ばれた2人は歴史に名の残る技術を開発し、カレンは嫌がらせの中で呪術によって生きる屍のようになってしまう。ヒロインによる助けるか助けないかの選択によりカレンの結末は変わるのだが、はっきり言って勘弁してくれ。

とりあえず真面目に授業は受けて目立たない生徒になろう。授業は楽しいし、今授業で作っている腕輪はアルお兄様にあげようと思っている。お兄様がケガしませんように。





「カレン嬢、学園生活はどうだ?」

「とても充実してますわ。やはり聞くと見るとでは大違いですわね」

「そうか。楽しんでいるならよかった」

「ですがまだまだやりたいことはたくさんありますの」

「やりたいこと?」

「えぇ」

「何をやりたいんだ?」

「それは……乙女の秘密ですわっ!」


最後の一言に風の魔力を乗せた刃を放つ。

あっさりジン様は刃を切り捨てる。が、その隙に私は足に魔力を集中し一気に間合いを詰め、魔力を叩き込む。


──はずだった。


「そこまで!」


全く何が起きたのかわからなかった。

気づけば私はジン様の腕の中にいた。

女子ならば誰もが憧れるであろう後ろから抱き締められるという体勢。このシチュエーション。私を抱き締めている腕には剣が握られその切っ先が私に向かっていなければだが…。



ここは魔術師団の訓練場である。

最近は毎日訪れることが難しく、時間があるときにのみ来るようになった。それでもなかなかの出席率だとは思うが。


ちょうど行き合った私達はいつものように手合わせをした。もうお気づきだろう。私と彼の会話は戦闘中のものである。

ちょくちょく気にかけてくれていて学内外問わず声をかけてくれる。


「また負けましたわ…」

「そりゃここで俺が負けるわけにはいかないだろ」

「悔しいです。今回はいけるかもと思ったんですが…結局何が起きたのかわからなかったですわ」

「あぁ〜…あれね。ちょっと驚いたけど、相殺する魔力を流してあとは体術かな」


随分と簡単に言ってるがそれがどれだけのことかわかっているんだろうか。相殺させるにはそれと同じ量、反発する性質を瞬時に判断する能力と技術が必要な訳で…。はぁ、まだまだ敵わないなぁ。

ジン様にお礼を言って帰る支度をする。そろそろウィルお兄様が迎えに来る頃だ。




少し離れたところでティア様とジン様が話しているのがみえる。なんていうか…まるでお話のお姫様と王子様のようで─


「…お似合いだな」


思わず呟いた独り言は誰にも聞こえなかったようだ。


何だか一瞬もやっとしたような気がしたけど私はそれを見ないふり。何もなかったと気づかなかったことにした。


もうしばらくこの調子が続くかと思いますがよろしくお願いいたします。

お遅くなってすみません( ノД`)…

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