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第13話

「おはようございます。カレンデュラ様」

「おはようございます。レイラ様、ティア様。これからよろしくお願いいたしますね」

「こちらこそよろしくお願いいたしますわ」

「おはようございます、カレンデュラ様。私も皆さんと共に学園へ通えて嬉しいですわ」


私のはじめてのお友達であるレイラ様とティア様。レイラ様は魔術師団でお世話になったお姉様の妹で、ティア様はなんと、ソリダス団長の娘さんです。

レイラ様はさすがに姉妹と納得できるほどよく似ていて、長いストレートの黒髪に淡い緑の瞳。性格も姉御肌であり、面倒見がよくかといって押し付けがましくない。しっかりと教育大前されてるんだろうな、引き際は見極められるという羨ましい性格。かわってティア様は違いなく母親に似たんだろうな。刺繍や歌が得意で、ふんわりと柔らかい少しウェーブのある栗色の髪の毛と同じ瞳。実に女の子らしい女の子です。


レイラ様とは突然連れていかれたお姉様のお屋敷で初遭遇。

同い年ということもあり、同年代の友達作りなさい。と紹介されてんだよね。うちのお兄様もシスコンだがここの姉妹もなかなかなんだよな。そういや、レイラ様が自分のお姉さまを取られた!とケンカしたこともありましたっけね!原因はささいなことでも子供って意地っ張りになっちゃう時ってあるよね。そこから何もかも気にくわなくなるという…けどきっかけがあればそこから仲直りもできるわけでして…。昔の友情漫画よろしく、マジで拳で語り合ったわけですよ。拳ってか平手打ちでしたけどね……ふっ。

けれど今ではそれが笑い話になるくらい仲良くなれたけど。家の付き合いとかで知り合いになる女の子はたくさんいたけれど、どうにも狙いっていうのかなぁ。お兄様だったり公爵家のコネだったりとそういった親の思惑を子供ながらに感じとってしまうともうだめだった。必要な付き合いはしたがプライベートでは一線を引いていた。それに訓練も忙しかったし、楽しかったから。きっとお姉さま方は、そんな私の寂しいけど、私自身を見てくれないなら友達いらない。取り巻きなんていらん!ぼっち上等!な私の心情を見破ったんだと思う。レイラ様のように紹介されたり、お姉さま方本人のお茶会にも参加したりした。これにより私の交遊関係は広がり、私自身を見てくれる友達が増えたことが嬉しかった。



ティア様とは訓練のために訪れていた医務局で知り合った。

ちょうど1日の訓練が終わったタイミングで、アビス先生が訓練中にケガした騎士の元へ行ってしまった。復習を兼ねて私は1人で留守番だった。女の子が泣きながら部屋に入ってきた時は何事かと思ったが、どうやらカラスに負けた猫を拾ったらしい。まだ小さな子猫はぐったりとしていて小さな声で母猫を呼んでいる。

先生がいないことに絶望的な顔をされて、何だか申し訳なくなってしまった私。まだ勉強中だけれど、と前置きをした上で治癒術を使ってみる。すると傷はキレイになくなったがまだ元気がない。他にも問題がないか調べると特に異常なし。なので暖めたミルクを用意して、自分が使っていた大きめのストールでくるんでやる。予備で持ってきておいたストールを寝床にして少し離れたところに置いてみる。すると警戒はしたのかもしれないが、空腹に負けたのか顔をミルクまみれにして飲んでいるのを見たときは思わず顔を見合わせて微笑んでしまった。満腹になった子猫は再びストールに潜り込み夢の中へ…。気づけば少女も夢の中。寝てるのを起こすのもかわいそうだったので、備え付けの柔らかな毛布をかけ、ストールもそのままに私は帰宅した。

その時は名前も聞けずその後どうなったかわからなかったが、後日改めてソリダス団長と共に医務局に挨拶に来てくれた。子猫は結局母猫が見つからずティア様が飼うことにしたらしい。


それからはよく3人で一緒にいるようになった。女の子ってたくさんいても結局はその中でグループできるしね。どこかほんわかした雰囲気のあるティア様をレイラ様は気にかけていたし、時に突っ走りすぎそうなレイラ様をティア様が宥めたりと…。なかなかバランスのいいチームだと思うのですよ。

彼女達との学園生活。決して不愉快なものにしてなるものか。いい想い出たくさん作って笑顔で卒業してやるんだからね!




講堂での入学式を終えてクラスへと移動する。レイラ様とティア様と同じクラスになれたことが何より嬉しかった。


その途中。妙な人だかりがあり、その中心には第一級危険対象物。そして取り巻き数名。

横目でちらりと見てみる。

一目惚れねぇ……。あれに?ないわぁ。うん。大事なことなのでもう一度。ないわぁ。

確かにこう、幼さは残っているけど将来は美形になるであろうことはよくわかる。見事なプラチナブロンドに甘い飴色の瞳。キラキラしい見た目と陛下譲りの彫りの深いシャープなライン。しかし、イライラしているのか腕を組んで壁にもたれかけ、こちらを不機嫌そうに睨んでいる。これのどこにカレンは惚れたんだかね?


「ご覧になってくださいまし、カレンデュラ様。あそこにシリウス殿下がいらっしゃってますわ」

「あぁ〜…。ですが私には何の関係もございませんし…」

「お前がカレンデュラか。噂は聞いている」


突然話しかけられた。

だからこちとら用などないんですがね…。

本音を隠し、不機嫌な顔に笑顔の仮面を被る。お姉さま方の教育の賜物です。


「宰相から話はきいている。この俺がわざわざ迎えにきてやったんだ。感謝しろ」

「…………あの、お話が全くわからないのですが、ご説明願えますか?」

「はぁ?これだから頭の悪い女は嫌なんだ。お前は俺の婚約者なのだろう?」


何言ってんだコイツ…。


「失礼ですが、どなたかとお間違えでは?私は殿下の婚約者であるなど初耳ですし、そんな畏れ多いことでございます。随分と昔に宰相閣下が父にお声を掛けていただいたと聞いておりますが、はっきりと私などでは殿下を支えるには力不足であろうとお断りしておりますし、第一に陛下からは何も伺っておりません。それに他のご令嬢の方々にもお声を掛けていらっしゃるようですからきっと閣下がお間違えてお伝えになられたのではないかしら?」

「貴様はこの俺が、王族であるこの俺が間違っているとそう言うんだな」

「ですが、私は殿下の婚約者ではありませんもの。ここで違うのにそうですといったら、私は王族である殿下に嘘をつくことになってしまいますもの」

「あの父にしてこの娘ありだな。口ばかり達者でよほどの礼儀知らずと見える。お前のような小娘、俺が本気になればどうとでもなるんだぞ。わかったなら今すぐ跪いて許しを乞えば許してやらなくもないがな」


わざわざ王族であることを強調するあたり、器の小ささと薄っぺらな底の浅さがみえる。だいたい先程の学園長の話を聞いていなかったのだろうか。学園内でのむやみやたらに身分を振りかざす行為は認めないと言っていたのにね。

後ろにいる奴等とニヤニヤしている第2王子。あぁ、クズすぎる。こいつこんなに残念だったっけ?

確か王太子が立派すぎて比較され続けた故にひねくれたんだよなぁ…。ゲームでは確かに俺様だった。現実では絶対に勘弁していただきたいが、ゲームでのジャイアニズムは許せる…私はね。まぁ、乙女ゲームなら告白の返事は、はいかイエスで答えろってとこかな?拒否権ないんだよね、あれ。でも自分の好みにどストライクな人になら言われたならキュンとするだろう。どストライクならね!嫌いな奴の壁ドンとか恐怖だし嫌がらせだよね。コイツにはされたかないな。

けどなぁ。俺様設定っていってもまだ幼いとなると…ただのワガママ坊っちゃんってことなのか?これから成長するの?これ。増長するだけじゃね?


「あら?私父を尊敬しておりますもの。同じだなんて誉め言葉ですわ。ですが殿下、そのように学園の中では権力をひけらかすのはどうかと思いますわ。先程、説明がありました通り学園では…」

「うるさい!黙って殿下に着いてくればいいんだよ!」

「たかが公爵家のくせに殿下に逆らうのかっ!」


そういうお前は男爵家。私ら3人の誰より爵位が低いんだからな。やんややんやと取り巻きの援護に気をよくしたのか嫌な笑顔の第2王子。

──むかつく。いらっとする。

そのうちそのヤジの矛先は友人へと向かう。全く意に介さない涼しげな顔をしていて、ダメージはないのだろう。だが…できれば穏便にと思ったけどもういいかな?

私は明らかな嘲笑をもってして黙らせる。


「揃いも揃っておしゃべりが過ぎる駄犬だこと!この程度の躾もできないようでは飼い主の程度がしれますわね。

だいたい、女性への態度も横暴で、気に入らなければ大勢の前で貶めようとするなど…ほとほと呆れるばかりですわね。

私、以前に王太子殿下にお会いした時はとても紳士で素晴らしい方だと思いましたの。陛下の助けとなるべく真摯に取り組む様は未熟な私にも深い感動を与えてくださいましたわ。ですがあなた様は?与えられた身分を振りかざすだけではありませんか。恥ずかしくはないのですか?あんな素晴らしいお兄様を見て自分も奮起しようとは思われないのですか?自分に甘い言葉しか吐かない、程度の同じような取り巻きと一緒にいて満足ですか。

それに私、自分が結婚する殿方には、私自身が尊敬できて、私を守ってくださるような、より強い方に憧れておりますの。これには家族をはじめとして、王太子殿下にもいい人がみつかるよう、応援のお声を掛けていただいてますので、私がシリウス殿下の婚約者ということはありえません」


こんなやつボンクラで充分だ。

存外に、お前なんざ眼中にねぇよ、と。

私の心の声が聞こえたのかどうかは定かではないが、顔を真っ赤にして拳を握りしめぶるぶると震えている。後ろの駄犬達もしかり。ついにボンクラは護衛を兼ねた駄犬その1からどこぞに隠し持っていたナイフをとりだす。

いかなる場合も武器の携帯は禁止されてるのにね…。

辺りを悲鳴が包む。


「貴様!!王族であるこの俺に対して…っ!今すぐ後悔させてやる!覚悟しろ!」

「あら?それは無理な話ですわ」

「何だと!?」

「だって皆様、私より弱いでしょう?」


艶やかに嘲笑う。売られたケンカを高値で買ってあげましょう。この授業料は高くつくと思え。

斬りかかってきたボンクラ。だがしかしその手を止めたのは思いもよらない人物で…。


「全くもってその通りだな、シリウス」


テノールの心地よい声音がシンと静まった廊下に響いた。

ボンクラと駄犬どもは青ざめた顔で固まっている。


「ロベルト、君の弟君はもう一度しっかりと勉強した方がいいんじゃないかい?」

「済まないウィル。私もここまでとは思わなかった。しばらく会わないうちに随分と甘やかされたようだな」



そこには真っ黒な不機嫌オーラを隠しもせず怒りを感じさせる笑顔を浮かべる我がお兄様と、そこで真っ青になっているボンクラの兄であるロベルト王太子殿下が呆れをにじませて立っていた。

ありがとうございました。

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