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眼がさめても異世界 3

訂正しました。ありがとうございます。そしてすいません。

 長い間、川にいた私の身体は当然ながら冷えた。くしゃみをして漸く、身体の芯まで冷えていたことに気づくのだから、どれだけ思考の海に意識を落としていたのかがよく解る。むしろ、そうなるまで考えていた自分に驚きだ。


 私はそこまで、考える人間だったのか・・・と。


「さむい、さむい、さむい・・・」

 川から上がり、適当に髪を絞って水分をとり、濡れた服を絞って水気をなくす。完全には無理だがそれでもまぁ、幾分か水の重みは消えた。タオルを使えばいいんだろうけど、残念なことにここにタオルなんて物はない。だって教会の人間が、私にタオルを渡す程優しいはずがない!! ・・・言ってて悲しくなってきたよ。

 ふるりと頭を振い、両手を合わせて眼を閉じる。

 断じて、合掌ではない。

 意識を集中させるのに、これが一番適していたからやっているだけで、合掌じゃないから。と誰にともなく叫んだのはきっと、一人が寂しいからだよなー。なんて、思考の隅で自嘲する。


「・・・・・・・・・・・・」

 この世界に魔法はない。代わりに神霊術(アルカナ)と言うその名の通り、万物に宿る神霊から力を借り、使うことが出来る力がある。

 主な神霊術は火・水・風・土・雷の五つの力で、火の神霊術は攻撃に特化し、水の神霊術は癒しに特化し、風の神霊術は補助に特化し、土の神霊術は守護に特化し、雷の神霊術は拘束に特化している。大抵の人間は1種類の神霊術しか使えないが、極稀に数種類・あるいは全種の神霊術を扱える者が存在する。

 ちなみに魔族は闇の力を借りる深淵魔術アビスを得意とし、神族は光の力を借りる神聖魔術イノセントを得意としている訳だが・・・うん、ありきたりだよねー。流石は、RPGの世界。ゲームに忠実だわ。


 両手に意識を集中させる。


「ふぅ・・・」


 私は何故か、神霊術を使ったことがない。


 彼女(ルキア)自身も神霊術を使ったと言う話は本編では無論、番外編、ドラマCDでもなかった。憶測だけど、彼女は神霊術を使えなかったのではないだろうか?

 神霊術は生まれながら、この世界の住人ならば息をするのと同じように使える。

 だと言うのに、彼女(ルキア)は使わなかった。一般人ですら、中途半端ではあるが神霊術が使えるのに、だ。・・・誰からも、神霊術のことを聞かなかったのが原因かもしれないけど、一番は疎まれていることだろう。

 もし、神霊術を彼女(ルキア)が使っていたら、扱いはさらに酷くなっていただろうし・・・。

 何も判らなくとも、彼女(ルキア)は本能的に神霊術を使うことをやめていたのだと考えて、背筋が寒くなった。

 だって、それってつまり・・・私もそうなる可能性があるってことで・・・。ああ、嫌だ、嫌だ。どうしてそう、彼女(ルキア)が嫌われなければならないんだろうか。別に何かした訳じゃないのに、どうして私は、彼女(ルキア)は、ここまで敵意を、悪意を、殺意を、憎悪を向けられなければいけなんだろう・・・?


 たかだか、髪が白銀と言うだけで・・・――。


 暗く沈む心を隠すように、両手の指を組んで力を込める。

 さらにいっそう、意識を集中させた。

 

「かごめ・・・」


 ふっと、私の回りが閉ざされた。

 ゆっくりと眼を開ければ、半透明が四方に広がっている。上手く出来たと、内心で安堵して、組んだ指を解いた。


 死亡フラグを折ると決めた私が、まっさきに考えたのはいかにして生き残るか。ということだった。

 上記の通り、下手に私が神霊術を覚えようとすれば扱いは酷くなり、下手をしたら暴力で殺される。かと言って、何も覚えないと言うのは5年後に迫る運命の日を変えることは出来ないだろうし。だからと言え、武術を覚えようとしても結果は同じ。私が殺されて終わる。・・・何この、死亡フラグのオンパレード。

 ルキア・クルーニクスって・・・・・・すっごく、生きずらいのね。あはははははははははははははは・・・はぁ。


 で、だ。

 私は考えた。

 それはもう、死にたくない一心で、必死に。ちょっと、知恵熱が出るかと思ったくらい、一生懸命に考えて、ない頭を絞り、知識をフル利用して思いついたのがコレ――つまり、結界術だった訳で。


 簡単に説明しよう。

 結界術とは――防御や守護に劣る術もあるが、これは神霊の力を中途半端にしか借りられない、未熟者が扱う術と言うことで好んで使う者はいない。と様々な本に載るほど、マイナーな術だ。


 これなら私が覚えても、「馬鹿な餓鬼だ」・「お似合いの術だ」と嘲笑されるだけだろう。精神的にはグサリと刺さるモノがあるけど、肉体的には被害がない。が、念のため、誰もいない場所で、一人、寂しく、こっそりと習得しよう。

 世の中、何があるか判らないし、何がきっかけで死亡フラグがたつかも解らないんだから。気をつけなければ!!


「・・・うーん。ぶっつけ本番で出来たのはいいけど」

 恐る恐る、半透明の壁に触れればグミのように揺らめいて苦笑した。

「強度が弱いなー・・・。今日は仕方ないとしても、やっぱり要練習だね!! 無事に五年後を生き延びて、天寿を全うして布団の中で老衰するためには頑張らないとっ」

 ぐっと拳をつくり、意気込んでみるけど・・・やっぱり十歳児が考える夢じゃない。いやいや、今はそんなことじゃなくて。


 作った拳を解き、息を吸う。

 頭の中に炎のイメージを浮かべれば、結界内が僅かに温かくなった。服や髪が少しずつだけど、乾いていくのを感じる。

 よし、成功だ!!


 結界術は中途半端にしか神霊の力を借りられない、と言われているがそれはつまり、全神霊の力を使えるということではないか? と気づいたのは物語で唯一、結界術を使うノア・オラクルと言う女性が威力は弱いが全ての神霊術を使用していたのを見た時だ。

 彼女は自分の感情に疎く、一緒に旅をしているシメロンに惚れているのは初対面のオルフェ達でも解る程露骨なのに、本人無意識・無自覚。気づいてないから嫉妬しても疑問を抱くだけで・・・と、話がそれた。


「威力はないけど、結界内で神霊術が使えるってことは・・・練習すれば、もっと別の方法にも使えるってことだよね」


 事実、ノア・オラクルはゲームで結界術を使い、結界内で神霊術を発動させていた。それは普通の神霊術とは異なり、威力が凄まじかったことを記憶している。

 だって、四方を結界で塞がれて、その上で火やら雷やらの攻撃的な神霊術を使われてみなよ。逃げばなし、拡散する場なし、被害は最小限・・・。最後は何か違うけど、つまりはだ。その結界に閉じ込められた敵は、間違いなく即死である。回復なら癒しの神霊術以上に効果があったな・・・。あれかな? 結界によって限られた空間しかないから、威力が普通の神霊術よりある、と? マイナーな術だから誰も解明してないし、研究もしてないからよく解らないけど、たぶん、そんなものだろう。ゲームの世界だし。


 まぁ、それでもメインキャラであるオルフェ達に比べれば、微々たる威力だけどね。

 彼らの神霊術は凄かった。・・・魔力もカンストまで鍛えたから、尚更に凄かったよ・・・。


「さて、と・・・」

 遠くに飛ばしていた意識を現実に戻して、私は指を鳴らした。

 途端、硝子が壊れるように崩れる結界。

 ふと、「形成された魔力を破壊するのは実に簡単だ」と、これから出るであろう悪夢の一人、暗闇の名を持つ者が言っていた台詞を唐突に思い出した。

 彼の言う通り、形成した魔力に新たな魔力をぶつけることで、簡単に壊すことが出来る。

 ・・・ついでに、魔力をぶつけられても壊れないような結界術を作ろう。うん、何があっても大丈夫なようにしないと。


 私はぐっと身体を伸ばして、これから起きるであろう出来事を思い出す。

 最近、起きる出来事としてはドラマCDにあった話だろうか? 確かにあれはオルフェが六歳の頃の物語で、登場人物はロイドとレーヴェの三人だけ。アーシェも彼女(ルキア)も出てはこない。・・・会話の中で以外は。


 これは年齢的に問題は・・・ないよね。うん、ないと断言しよう。


 次に起こるのは十歳の頃を物語としたゲーム番外編。六歳の頃に行った遺跡に再度訪れた三人とアーシェの前に、魔物の群れが現れて・・・と言った展開だったな。逃げ道を塞がれ、アーシェを庇いながら戦った記憶がある。うん。アーシェはこと、戦闘に関しては使えないから。本当、回復専門だから。三人のレベルも大人に比べたらあれだけど、低すぎて泣いた。ステータス一桁って・・・一桁ってっ!!! 制作者の鬼畜!!!!


 怒りに狂った記憶まで蘇っちゃったよ。忘れよ、忘れなきゃ。


「うーん・・・十五歳までは、こんなのだったよね。小説の方はゲームでは語られなかった物語だし。うん、私が気をつけるのはこの二つだね」

 どちらも彼女(ルキア)は関わっていないけれど、念のために気をつけておかないと。女子高校生(むかし)の私としての記憶を蘇らせた以上、細心の注意を払って行動しよう。

 死にたくないし。


「一番安全なのってきっと、オルフェ達と離れることなんだよね。でも、子供が、しかも白銀の髪をした私が別の場所にいっても扱いは変わらないし、もしかしたら即、死! がまっているかもしれないし・・・」

 そう思うと、この場所から離れられない。

「出来れば、人気のない場所で、静かに、のんびりと、心穏やかに過ごしたい。けど、五年後を無事に生き延びて、世界が救われるなら欲は言わない!」


 この、嫌な記憶がオンパレードな場所で、老後を送ろう。傍に誰かがいればいいんだけど、それは当然、無理だろうし。だって例え世界が救われても、私の髪が白銀なことに変わりはなく、根付いた不吉や禍の印象は薄れないだろう。だから、結婚は無理。・・・この歳でもう、独身宣言か。空しいな。ふふふふふふ・・・、あ、涙が出てきた。

 でも、うん。死亡フラグが折れるなら仕方ない。代償だと思って、喜んで差し上げよう!

 ああ、でも――。


「オルフェ達の結婚式は見たいなぁー・・・。アーシェ達嫁候補の花嫁衣装、綺麗だったし。あのスチルが現実に見られるなら、私、頑張る!!」


 それを見るまで、死ぬに死ねない!

 いや、見ても死なないけどね!!

 私は強く決意して、教会に戻った。早く部屋に行って、とっとと寝よう。夜更かしは肌に悪いしね。


・・・決意して早々、睡眠欲に負けた。

読んでいる人がいて、驚きながらも感激してます。スローペースになりがちですが、できるだけ早く投稿できるよう頑張ります!



実は、どっきり?と思ってます。

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