表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

掌編

It is apart.

 



 ミニチュア携帯の携帯ストラップ。きみの携帯のミニチュアの。


 少しでもきみを思い出したいなんて。

 何て。

 何て女々しい。




「空、青いわぁ」

「東京ですがね」

「いやいや。東京だからこそっしょ。本当はこんな淡くないのよ?」

 知らないでしょ、と、きみは笑った。

 突き刺すように濃い色を誇示してるのだ、ときみが語った。




 薬品の鼻に纏わり付く臭いがウザくて。

 きみの匂いが掻き消されることに苛立った。

「そろそろ…」

「要りません」

「しかし、」

「必要無いです」

 リノリウムの床が面白い訳じゃないけど。

 きみを待つ間に暇潰しはしたくない。きみとの時間は待つ間でさえ大切で大事だから。

 きみと医者の会話をBGMに。睨み付ける。悪いのは汚れ白んだリノリウムの床じゃない。


 誰も、何も悪くない。




 今、きみとの会話は何一つ成立しない。きみは、残像と紙の存在になってしまったから。

 今だ外せないミニチュア携帯の携帯ストラップ。

 きみを忘れられない。変わらず日常をきみを空白のままに続けているくせに。不意に、そのテンポが崩れて逝く時が在る。

 大概夜で、涙が溢れ眠れなくて。止めどなく流れ去る涙に目が痛む。腫れた目を放置して寝ようとするけど叶わなくて目は開けっ放し。


 こんな泣き虫じゃなかったのに、なんて。


 きみの声がする。


 この手が届かなくても。


 きみの存在を感じてしまうからか。


 だから、泣いてしまうんだよ、と。

 抗議は未だ、聞いてもらえない。







   【Fin.】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ