It is apart.
ミニチュア携帯の携帯ストラップ。きみの携帯のミニチュアの。
少しでもきみを思い出したいなんて。
何て。
何て女々しい。
「空、青いわぁ」
「東京ですがね」
「いやいや。東京だからこそっしょ。本当はこんな淡くないのよ?」
知らないでしょ、と、きみは笑った。
突き刺すように濃い色を誇示してるのだ、ときみが語った。
薬品の鼻に纏わり付く臭いがウザくて。
きみの匂いが掻き消されることに苛立った。
「そろそろ…」
「要りません」
「しかし、」
「必要無いです」
リノリウムの床が面白い訳じゃないけど。
きみを待つ間に暇潰しはしたくない。きみとの時間は待つ間でさえ大切で大事だから。
きみと医者の会話をBGMに。睨み付ける。悪いのは汚れ白んだリノリウムの床じゃない。
誰も、何も悪くない。
今、きみとの会話は何一つ成立しない。きみは、残像と紙の存在になってしまったから。
今だ外せないミニチュア携帯の携帯ストラップ。
きみを忘れられない。変わらず日常をきみを空白のままに続けているくせに。不意に、そのテンポが崩れて逝く時が在る。
大概夜で、涙が溢れ眠れなくて。止めどなく流れ去る涙に目が痛む。腫れた目を放置して寝ようとするけど叶わなくて目は開けっ放し。
こんな泣き虫じゃなかったのに、なんて。
きみの声がする。
この手が届かなくても。
きみの存在を感じてしまうからか。
だから、泣いてしまうんだよ、と。
抗議は未だ、聞いてもらえない。
【Fin.】