ワールド・トリップ
『世界を救ったのは見事だった。魔法は返して貰うぞ』
女神の声が、何もない空間に響く。
「で、僕は帰っていいの?」
最初は敬語で話していた気がするが、もう忘れてしまった。
チィは、僕が背負っているリュックの上で、僕の頭の上に手を乗せている。
そして、僕と女神の会話を聞いているようだ。
『別に構わんが、その場合はその子を置いていってもらうぞ?』
「その場合? 他に何があるの?」
女神は、よく聞いてくれた、なんて表情で語り出す。
「世界旅行。これをすればいい。これは一種のゲームだ。その世界でのノルマを達成するごとに、次の世界へ移っていく。大抵、次元の乱れを補正するようなものが、ノルマだがな。それができるか試したわけだ」
「つまり、あれは偽りの物語?」
『そういうことだ』
試練を乗り越えたものだけが行ける、ゲームか。
「うん、分かった」
それだけ言ったが、女神は言葉の意味を理解したようだった。
僕がこのゲームを行うわけは、単純に現実に戻っても楽しくないから。
家族もいなければ、友達もいない。作る時間がなかったわけだけど。
それに、チィとも離れたくない。
『なら、早速行ってもらうことにしよう。始めは、魔法の世界だ。子供に偽りを見せ、兵器として活用する世界にな。その他のことは、現地で知れ』
それだけだった。例によって、僕は眩い光に照らされる。
まず、目に写ったのは、都市だった。
自動車の排気ガスの臭いが漂い、高層ビルが乱立する。
忙しなく歩き回る人達や、賑わい始めた飲食店。どう見ても、現実の世界だ。
背後には、オレンジ色の海が広がる。
「ますたー、これからどうするの?」
リュックから頭に這い上がってきたチィに、目を塞がれる。
「うーん。とりあえず、リュックを消せる? それで、いつでも出せるようにできる?」
都市のど真ん中でリュックだと、結構目立つ。変人扱いとまではいかないと思うけど。
「よゆうだよ!」
背中からリュックの重みが消える。通行人が数人驚いて僕に目が止まる。
「ありがとね。じゃあ、行こうか」
「どういたしまして、だよ」
僕らは街の中へと、新たな一歩を踏み出す。
終了致しました。微妙な終わり方ですね、すみません。




