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EP 17

帝都郊外。切り立った崖と赤茶けた岩肌がどこまでも続く、荒涼とした岩場。

地球の感覚で言えば、日曜朝の特撮ヒーロー番組で幾度となく怪人が爆発四散してきた「お馴染みの採掘場」と完全に一致するロケーションである。

ドンガフから譲り受けた『竜撃砲』の威力を確かめるため、良樹たち一行はこの周囲に人けのない採掘場跡地へとやってきていた。

「良いわよ! ヨシキさん! 周囲に魔物の気配はなし!」

少し離れた高台から、ルナが周囲を警戒しながら声を張り上げる。

「行くでござるよ! 目標、正面の巨大岩! エネルギー充填チャージ開始!!」

良樹は、自身の背丈ほどもある鋼鉄の巨大バズーカ『竜撃砲』を肩に担ぎ、足を大きく開いてどっしりと構えた。

砲身に刻まれたドワーフのルーン文字が青白く発光し、周囲の空間から目に見えないマナ(魔力)をギュイィィィンと音を立てて吸い上げ始める。

ドンガフの言っていた通り、この兵器の最大の欠点は「発射までに3分間もかかる」ことだ。

しかし、良樹にとってその3分間は、決して無駄な待機時間ではなかった。中二病の魂を最高潮に高めるための、至福の「変形・合体・発射シークエンス」の再現タイムである。

良樹の脳内に、壮大な特撮BGMが鳴り響き始めた。

「姿勢制御固定……アンカーボルト、射出!!」

良樹は叫びながら、足元に向かってガシャンッ! と力強く右足を踏み込んだ。(※もちろん竜撃砲にそんな機能はついておらず、完全に無い筈のアンカーボルトを射出する『振り(エア)』である)

「良樹のヤツ、急に地面踏んづけて何やってんだ?」

見守るモウラが不思議そうに首を傾げる。

「マナの吸入率、安定! エネルギー、80……90……120%突破! 臨界点到達まで残り10秒!」

良樹は、砲身の横にある何もない空間を、まるで複雑な計器のキーボードを叩くかのような滑らかな手つきでブラインドタッチし始めた。(※これも当然エアである)

砲身に集まったマナが、いよいよ極限まで圧縮され、チカチカと危険な赤光を放ち始める。砲口の周りの空間が、熱と魔力で陽炎のように歪んでいた。

最終安全装置セーフティロック、解除!!」

良樹は、砲身の横にある出っ張りを、さも重々しいレバーであるかのように「ガコンッ」と大袈裟な身振りで引いた。(※ただの装飾の出っ張りである)

そして、チャージ開始からキッチリ3分。

良樹の右眼(眼帯)が、かつてないほどの鋭い光を放った。

「喰らえぇぇぇッ! これが拙者の、一撃必殺ロマン砲! 発射ああああァァァッ!!」

良樹が引きトリガーを引いた瞬間。

ドッゴォォォォォォォォォォンッ!!!!!

竜撃砲の砲口から、鼓膜を突き破るような爆音と共に、極限まで圧縮された純粋なマナの奔流が、極太の閃光となって撃ち出された。

凄まじい反動が良樹の全身を襲うが、兵器自体の重量と、事前のエア・アンカーボルト(ただの踏み込み)のおかげでギリギリ踏みとどまる。

放たれた光の激流は、数百メートル先にあった標的――小山ほどもある巨大な岩塊に直撃した。

ピカァァァァッ!! と目が眩むような閃光が岩場を包み込み、一拍遅れて、大地を揺るがす大爆発が巻き起こった。

凄まじい爆風と土煙が吹き荒れ、見守っていたルナたちの髪や服を激しく煽る。

やがて、濛々たる煙が晴れた後。

そこには、小山ほどの巨大岩が跡形もなく消え去り、代わりに直径百メートルにも及ぶ、ガラス化して熱を帯びた巨大な『クレーター』が形成されていた。

「フハハハ……! やったでござる!!」

良樹は、砲口からシューシューと白煙を上げる竜撃砲を担ぎながら、満面のドヤ顔で勝利のポーズを決めた。

「す、凄い……! ほんまに山ぁ吹き飛ばしよったで……!」

ロードが、巨大なクレーターを見下ろしながら、ポカンと口を開けて震えた。

「けど……ヨシキはん、発射までにぎょうさん、余計な動き(エア操作)が無かったか……?」

「うん! 凄いわ! 威力は本当に規格外ね!」

高台から駆け寄ってきたルナも、興奮した様子で竜撃砲を褒め称える。

「そうね! 威力の割に、発射する前のあの『見えない何かを操作する動き』とか、足を踏み鳴らす無駄な動きが全く意味不明だったけど!」

「そうだな! 凄まじい火力だ! 帝都の城門すら一撃で吹き飛ばせるぜ!」

モウラも豪快に笑いながら、良樹の背中をバンバンと叩く。

「だけど、あの変な動きが無ければ、もっと体力を温存できたんじゃないか? アタイら、お前が何と戦ってるのか分からなくてハラハラしたぜ」

三人の異世界人(ファンタジー住人)からの、超現実的マジレスな評価。

特撮の『お約束シークエンス』という美学など、合理主義の彼女たちには全く通じていなかったのだ。

「もぉぉぉっ!! 違うでござる! あれは無駄な動きじゃないんでござるよ!」

良樹は、理解されないオタクの悲哀を滲ませながら、涙目で地団駄を踏んだ。

「雰囲気は大事でござるよぉぉ!! 3分間も棒立ちでチャージするだけなんて、読者(誰)が退屈してしまうでござる! ロマン砲には、ロマン溢れる発射シークエンスが不可欠なのでござるぅぅ!!」

異世界において、圧倒的な破壊力(物理)を手に入れた良樹。

しかし、彼の中二病という名の『ロマン』が仲間たちに理解される日は、まだまだ遠そうであった。

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