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      侵入者 その二

「あの様子だと、何も知らないようですね」

一真は言った。


「しかし、姫がここにいることを何故知ったのでしょうか。私たちは後をつけられていないと思っていましたが」

安次郎がいい、兵庫もうなずいた。


「駕籠かきは調べても1,2日はかかるくらい脚がつかないような奴を雇った。その線からも薄いはずだ」

岩木は腕を組み、考え込んだ。


「城で身代わりがばれたのではないでしょうか。誰かが情報を流したとしか思えません」


一番納得がいくのはやはり情報が漏れている線である。



おそらく下府中侯は姫と遭遇した後、正秀院に確認したはずだ。

しかし城内に姫はいた。


そうなれば江戸城にいるほうが本物で、城下にいるほうは偽者と思うだろう。

双子という事情を知らなければ瓜二つの姫を見て疑いを持つことはない。


けれど、もし敵に双子ということがばれてしまえば話は変わってくる。


城下にいるほうが天照姫ということは十分ありえる。

敵方はそう考えるだろう。


しかもそれが岩木屋敷にいることが分かれば間違いなく討ちに来る。

大奥で殺すよりも、表沙汰にできない場所で殺したほうが始末は楽だからだ。



岩木は眉間にしわを寄せ考えていた。

老中派の仲間を疑ってみているようだが、疑わしい人物が浮かび上がってこない様子だ。



その時、ふすまが開き天照姫が入ってきた。


「ご無理を承知で申します。今から城へ連れて行ってはもらえまいか」


「今からですと?確かに夜のほうが人に見られず動きやすいですが、それにしても急すぎて城内まで根回しがきくかどうか」

岩木が眉を寄せた。


一真はふっと気づいた。


「月詠姫が危ない。そうなんですね」


天照姫は涙を浮かべてうなずいた。


「そうか、天照姫を殺したとしても、身代わりがそのまま天照姫として生きていれば意味がない。殺すなら二人とも殺さないと」

安次郎がひざを叩いた。


岩木は立ち上がった。


「わしは今から老中と打ち合わせてくる。しかしそれをまっていては遅い。いや、今からでも遅いかも知れぬ。とにかく城内にどんな形でもいいから入って月詠姫を守れ。後の始末はわしがする」



一真達は姫を連れ、夜の道を走った。

半里の道は恐ろしく長く感じられたが、夜更けということもあり、誰からも見られることなく城の橋までたどり着いた。


門の前には老年の番人がいた。

曲がり角に潜み、様子を伺いながら安次郎が言った。

「事情を知っている昼間の門番とはとっくに交代しているだろうな」


「こんばんわっていっても入れてもらえないよなあ」

兵庫がため息をついた。


「恨みはないが、少しの間気絶してもらうか」

一真がいった。


「これを着ろよ。さっきの男達の黒装束を借りてきた。顔を見られないほうが岩木様も都合いいでしょ」

兵庫が黒装束を取り出した。


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