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芽吹きの刻-猫が見た世界『束の間』

※この話は過去投稿の改訂・加筆版です。初見の方も安心してどうぞ!

『束の間』


飛び回る事、数十分。流石に疲れたなぁ…と思ってたら、魔剣に捕獲されてしまった。

捕獲と言うと聞こえが悪い…魔剣は思いのほか丁重に扱ってくれた。おでこの辺りを指先で、カキカキしてくれる。なかなかの気持ちが良い。


宰相のアストロは、執務があるからと白帝城に送られて、残念そうに戻っていった。

「とりあえず、九尾を休ませた方がいいな。白帝城に送らせれば良かったな…。」

魔剣がそう言うと

「魔法陣への葉力供給は止まったけど…まだ、影響があるかもだし…2人揃ってた方が対処しやすいから。暫くは此処に居た方が賢明…。」

雫が、ぐったり肩を落としている九尾を心配そうに視線を向けてから、空っぽの室内に唯一残されているサイドテーブルの上のベルを鳴らした。

別室に待機していた、メイドのマリンを呼ぶ合図だ。


程なくマリンが現れる。

「雫様、お呼びでしょうか。」

髪の色が独特で、左右が白乳色と濃緑の二色で分かれている、あー…うちのハオルチアのマリンと同じ配色だ。


マリンはね、とても丈夫な苗だった!

子苗が真っ白で、色素を持たない苗でね、親株の濃い緑と真っ白な子苗のコントラストが絶品だった。

やっぱり…この世界は私が育ててるハオルチアが、人として生きてる世界なのかなぁ…。


「九尾をボクのベッドに寝かせる…。準備をお願い。」

「客人用ベッドを運び入れますか?」

「大丈夫、ボクはカウチで休むから…。」

「かしこまりました。」

マリンは頭を下げると、雫の自室へ準備をしに出ていく。


「雫はこっちを頼む。」

魔剣の膝の上で、すっかり寛ぎモードになってた私をヒョイっと持ち上げ雫に渡す。

雫に縦抱っこされた私は、爪をたてぬように気をつけながら、背中越しに九尾を介抱している天使を見る。

九尾の顔色は変わらず白い…かなり辛そうだ。


「葉力は戻るの?」

雫の耳もとで小声で話しかけた。

「猫が喋る…違和感が凄いな。」

耳ざとく魔剣が聞きつけ、茶化すようにいう。話してる、私の方が余程違和感が凄いんだけど…。

「葉力は身体の中で作られているから…使わずに、大人しく休んでいれば、戻るよ。」

「九尾なら2〜3日寝てれば大丈夫だろ。一緒に雫も休むんだぞ。」

魔剣が雫の水色の髪をワシャワシャと撫でる。

「ん…」

雫は神妙に頷いた。


暫くするとマリンが戻ってきたので、

魔剣と天使で九尾に肩を貸し、支える。私は雫に抱っこされたまま、皆で雫の自室へと移動した。

「とりあえず、話しは白帝城が戻ってきてからだな…。」

…という事になった。

マリンがお茶を用意してくれたので、

天使はカウチに座り、カップを持ち上げ香りを楽しんでいた。天使の膝枕で雫がウトウトし始める。消耗してるのは、雫も同じだね…。


魔剣は、ベッドサイドにうず高く積まれたクッションの山を背にしてすわりこんで…雫の寝顔を見つめていて。九尾は、マリンが用意した『雫特製栄養剤』を苦い顔をして飲み干してから、横になっているが…

眠ってはいないみたいだ。


『雫特製栄養剤』は消費した葉力を

回復出来る、画期的な栄養剤らしい。しかも、考案、開発、製造まで、雫が1人でやったと言うから…驚きだ。記録があったから、それを元に考案し直したらしいが…天才児なんじゃない?と思った。


要するに、TVアニメや漫画である、マジックポイントを回復するマナポーションみたいな感じ…なのかな?

味は、九尾曰く、とても飲めたものじゃない…らしい。「今後の課題…」と呟いてた。


私は、九尾のベッドの上で香箱座りをして天使と雫を眺めている。

女神のような天使と、愛らしい少女…何という、癒し!何か、ご馳走様です!って感じになっていた。


ふと魔剣も、雫と天使を眺めているのに気がついた。のっそり起き上がり、魔剣の肩にバランスを取りながら乗ると耳元で、

「目の保養だねぇ?」と小声で話しかける。

「…そうだな…」

ぼんやりと魔剣が応えて…あれ?魔剣の視線は天使に釘付けになってない?

「もしかして…ずっと天使ばかり見てたりする?」

「ばっ!! な、何を言ってる!」

魔剣が、狼狽して大声を出した。


あー、なるほどぉ。わかりやすい人だなぁ。

「ほら、大声出すから。天使がこっち見てるよ?」

「お、お前がおかしな事を言うからだろっ!」

「…耳、真っ赤だよw」

「なっ!」

「どうかしましたか…?」

天使には私の声は聞こえてないみたい。魔剣が1人で騒いでるみたいに見えるらしい。天使が、小首を傾げて

「魔剣と猫さん…すっかり仲良しですね。」

とにっこり微笑んだ。

「仲良く、ないっ!」

魔剣が急に立ち上がるので、バランスを崩して落ちた。空中で体制を直し、ベッドの上に着地する。

魔剣は何も言わず、ドカドカと部屋を出て行ってしまった。


「猫さんや、魔剣を揶揄うとブチ切れるから、気をつけるんだぞ?」

九尾がニヤニヤ笑いながら、私のお尻の辺りをつつく。

なっ…セクハラだっ!

尻尾で、九尾をパシパシ叩く。

「わっかりやすいから、つい揶揄いたくなるよなぁ〜?」

布団から九尾が起き上がり、9枚のトリコームの尻尾でボブっとやり返された。

九尾の尻尾は、もっふもふだなっ。葉だよね…コレ。


九尾はね…葉が毛の様なトリコームに覆われていて、

見るからにモフモフなんだよねっ!

光にトリコームが反射して…そりゃもぅ、綺麗で神々しくてさ。

和風茶器に水抜き穴を必死に開けてね、植木鉢として

使ってたんだ…。

こっちの九尾も、モフモフなんだね〜。

ずっと、埋もれていたい…。


ドアノックの音がして、白帝城が返事を待たずに入って来た。

「今、魔剣とすれ違ったのだが…何かあったのか?凄い形相だったが…」

「え…猫さんと仲良くしてたみたいですけど…。」

天使が白帝城の問いに、不思議そうに答える。


魔剣を揶揄ってました!とも言えない…何も知りませんよ…とばかりに、九尾の尻尾にまとわりつき戯れて遊んでみる。

「そうか…。ま、魔剣がいきなり不機嫌になるのはいつもの事だな。

それより、九尾は起きて大丈夫なのか?顔色は…さっきより良さそうにみえるが。」

「雫の特製ドリンクを飲んだからな…味はアレだが、効果は抜群。」

九尾が白帝城に親指を立てて、ニヤっと笑う。

「なら、良かった。魔剣が戻ったら話を始めよう。」

白帝城がベッドに腰を下ろし、九尾の尻尾に埋もれた私を見下ろしながら、そう言った。


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